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コラム No.53-30

PREコラム

戦略的な地域活性化の取り組み(30)地方による「New Normal」時代の働き方提案(3)

公開日:2020/10/23

コロナ禍で、社会活動は徐々に回復に向かっていますが、都心部ではオフィスの分散化が進みつつあります。その背景として、テレワークやリモート会議を活用することで、人と人との物理的な緊密環境から、ある程度の距離をとりつつ情報を密に交換できる分散環境が可能となったことがあります。また何より注目されるのは、このような環境でも、社会活動が十分に維持できるのではないか、ワークライフバランス面では新しい環境の方が快適ではないかと、人々が考え始めていることです。このような社会現象は、将来的に「New Normal」として定着する可能性が高そうです。

国による地方創生政策の方向性

2020年7月に公表された、内閣府の「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」によれば、「新型コロナウイルス感染症により、デジタル化の遅れなども顕在化」しているとし、「感染症克服と経済活性化の両立の視点を取り入れ、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進しつつ、東京圏への一極集中、人口減少・少子高齢化という大きな課題に対し、取組を強化する」としています。大きな方向性は以前から提言されていることですが、感染症克服と経済活性化を両立させる新しい社会活動様式に合わせたデジタル技術の変革を目指していることが注目されます。これまでは、5G(次世代高速通信)インフラやSociety5.0環境は、どちらかといえば産業振興面が強調されていましたが、コロナ禍をきっかけに、地方の活性化を推進する可能性がある「New Normal」社会への対応手法として、視点が向けられつつあることが分かります。
また、地方への移住・定着の推進方法として、「リモートワークやサテライトオフィスの在り方を検討する」ことで、「しごとの地方移転と社員等の地方移住を推進」するとしています。つまり、首都圏に立地する企業のサテライトオフィス等を地方に開設することを支援し、地方自治や地域企業、地方大学等と連携して、社員等のリモートワークを活用した地方での新しい働き方を促進することで、地方の活性化につなげていこうというものです。

岐阜県郡上市の取組「HUB GUJO」

総務省「ふるさとテレワーク推進事業」の取組事例の中から、「郡上クリエイティブテレワークセンター」創設プロジェクトをご紹介します。
郡上市は、岐阜県のほぼ中央に位置する山岳丘陵地帯で、江戸の風情を残す城下町である郡上八幡をはじめ、観光が主産業の人口約39,000人の街です。多くの地方都市同様に、郡上市においても若年層の流出が止まらず、これまでも企業誘致による雇用創出などに力を入れてきました。しかし、その効果は限定的であったため、2016年からICTを活用した新たな地域事業創出を推進しています。このプロジェクトにより、有料で利用できるサテライトオフィス3室、コワーキングスペース1室、Web会議設備を備える会議室1室から成る「郡上クリエイティブテレワークセンター(HUB GUJO)」を開設し、地元企業数社で設立されたNPO法人「HUB GUJO」によって運営されています。「HUB GUJO」は、郡上市のテレワーカーの拠点として、山里から都心部への情報発信・コミュニケーションの中心として機能するとともに、都心部からの移住を希望するテレワーカーの受け入れフロントとなることが期待されています。

都心部あるいは地方間のネットワーク化が期待されるコワーキング拠点

郡上市の事例以外にも、長野県諏訪郡富士見町の「森のオフィス」など、地方においてコワーキングスペースを設置する取組が増えています。都心部では、2000年頃からコワーキングスペース事業が増加し、地域の特色を生かしたコミュニティー拠点としての役割を果たすとともに、主にIT企業の起業・創業の拠点として定着しています。今後、この傾向が地方に広がれば、地方における若年層の流出回避・定着、移住希望者の受け入れ機会創出など、都市部以上に地域活性化効果が期待できるのではないでしょうか。

コロナ禍の「New Normal」においては、都市部の企業や従業員の地方分散化が進むのではないかと考えられます。しかし、地方にテレワークやリモートワークの環境が整っていなければ、特に中小企業にとっては移転のハードルが高くなってしまいます。一方、地方に開放されたコワーキング拠点があれば、地方への分散・移転を試行することが可能となり、組織再編リスクを軽減することができます。今後さらに、地方のコワーキング拠点間がネットワーク化されることで、企業にとっては持続的な事業活動の分散化が進めやすくなるはずです。地域資源を生かした地方の魅力や可能性を発信することも大切なことですが、まずは注目させる、体験してもらうプロモーションとしての事業を、ストレートに優先させることが、今は効果的ではないでしょうか。
地方の経済・文化・生活等が企業や人を介してフラットに結合されていくこと、これがデジタル・トランスフォーメーション(DX)の目標であり、Society5.0が目指す社会だと思います。地方におけるコワーキング拠点推進の取組は、今後も注目する必要がありそうです。

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