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コラム No.53-17

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戦略的な地域活性化の取り組み(17)廃校活用事例3 官民連携による廃校活用で地域活性化

公開日:2019/09/30

廃校の活用事例の中には、地元企業を誘致することで、地域活性化につなげている取り組みも多くあります。そのような事例を、文部科学省が編集した「廃校施設活用事例集~未来につなごう~ みんなの廃校プロジェクト」から、いくつかご紹介します。

廃校を醸造酢の加工工場として改装し、地域資源の活用で地域活性化

兵庫県の北部、但馬地域に位置する養父市(やぶし)は、過疎化する中山間地域に企業を誘致することで地域を活性化する取り組みを推進しています。2006(平成18)年度からは、小中学校の統廃合により遊休施設となった空き校舎に、積極的に企業を誘致する「がんばる養父市企業誘致プロジェクト」を開始し、その一環として、廃校となった旧大屋町立西谷小学校のへの企業誘致を進めました。そこに手を挙げたのが、地域密着型で醸造酢・清涼飲料等食品の製造・販売を営む日の出ホールディングス株式会社(旧日の出通商株式会社/但馬醸造株式会社)でした。市は、電源過疎地域等企業立地促進事業費補(経済産業省)等の補助金を活用して校舎を改装し、2007年(平成19年)から有償貸与により供用を開始し、現在は「日の出ホールディングス株式会社食品カンパニー但馬醸造所」として操業しています。
同社は、体育館を醸造工場、理科室を実験室、教室は事務所と商品展示室、運動場をトラックヤードとして、学校施設を有効活用しています。また、周辺には休耕地も多くあり、原材料である米、柚子、山椒の自家栽培に活用することが可能で、地域密着型の経営を旨とする同社にとっては、最適な環境といえます。販路開拓面でも、地域活性化につながる廃校活用の好事例として評価されることで、メリットがありそうです。
地域にとっても、雇用が創出され、地域経済への波及効果も大きく、地域のシンボルであった廃校に灯がともり地域貢献することの意義は大きいと、高い評価を得ているようです。
養父市の廃校活用の取り組みは、地域資源を官民で有効活用し、地域活性化につなげている優良事例であるといえます。

世界自然遺産という地域資源が、官民連携の地域活性化に繋がる

青森県西目屋村(にしめやむら)は、青森県津軽地方の西部南端に位置し、三方を1,000m級の山々に囲まれた山間の村です。村の南西部には白神山地が広がり、人の手が入っていないブナの原生林と、そこに生息する多種多様な生態系が国際的に高く評価され、1993年(平成5年)に日本で初めて世界自然遺産に登録されました。
旧西目屋村は、少子化と人口の流出により、児童・生徒数が著しく減少したため、教育活動の継続が困難となりつつあったことから、2015(平成27)年4月より中学校の教育事務を隣接する弘前市に委託しました。その結果、西目屋中学校が廃校となり、比較的新しかった中学校校舎へ小学校を移転しました。そして旧西目屋小学校が空き校舎となったことから、西目屋村は、この空き校舎へ企業を誘致することができないかと、村内雇用の創出と地域経済の活性化の実現を模索していました。
一方、弘前市に本社を置く「ブナコ株式会社」は、ブナを素材とした食器やランプシェードなどの調度品等の漆器を製造し、首都圏の有名ホテルやセレクトショップ等で採用されたほか、海外への販路拡大も模索しており、広い作業スペースの確保が課題となっていました。
この両者のニーズがマッチし、旧西目屋小学校への同社の誘致が実現することとなりました。広大なブナの原生林に代表される世界自然遺産白神山地を有する村で、ブナコ製品を製作することで、商品の高付加価値化が図れるのではないかとのブナコ(株)側の期待と、当村の狙いが合致したことが、誘致実現の大きな要因として挙げられています。

廃校が新たな観光拠点として再生

誘致決定後、西目屋村は2.2億円をかけて校舎を改装のうえ、ブナコ株式会社へ無償貸与、旧西目屋小学校は2017年度よりブナコ西目屋工場として営業しています。
ブナコ西目屋工場は、旧小学校の面影を色濃く残しつつ、各教室は製作工程の各作業室、ダイニングホールは来場者が自分だけのオリジナルブナコが製作できる製作体験スペースとミニショップとして利用、廊下から見学者が作業室の製作風景等を見ることができる大きな窓が設置されています。また、工場内の旧給食調理室を改修した「ブナコカフェ」では、実際の照明器具や器などのブナコ製品を見ながらくつろげる、喫茶スペースがあります。
ブナコ西目屋工場は、雪深い同村において、天候を問わない通年利用可能な新たな観光拠点となっています。また、一般の観光客はもちろん、廃校活用事例として多くの行政視察、各種団体の研修等で同村に訪れることで、近隣施設への集客増加という波及効果もあり、ブナコ西目屋工場を中心に新たな地域活性化の波が広がっています。
また、西目屋工場の従業者の半分は村内での雇用となっており、旧小学校の出身者も多いとのことで、雇用の創出や住民の郷土意識の醸成にもつながっています。
地方部においては、少子高齢化や人口減少による過疎化に伴う廃校事例が多く、維持管理の負担等から公的な活用に限界がある地域もあります。今回のように、地域密着型企業との官民連携の取り組みは、廃校という事態が、むしろ地域活性化を進展させる契機になることを示唆しています。

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