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コラム No.53-32

PREコラム

戦略的な地域活性化の取り組み(32)デジタル・トランスフォーメーション(DX)を活用した地方創生の取り組み

公開日:2020/12/25

地域再生を目指す地方市町村も、この新型コロナウイルス感染拡大の影響を直接的に受けており、また新たな戦略を採り入れる例が出てきています。
特に、国も推奨しているように、ICTを活用した地域活性化、いわゆるデジタル・トランフォーメーション(DX)施策を効果的に活用し、成果を出そうと試みている地域があります。今回は、DX事例をいくつかご紹介します。

北海道鹿部町におけるDX事例 ~WEB来店サービス~

鹿部町は、函館市に隣接し、太平洋内浦湾を望む人口3,800人余りの街です。鹿部町の基幹産業は漁業で、タコ、カレイ、ホッケ、サクラマス、昆布、ナマコ漁が盛んで、特に冬場は主産業であるタラコの原料となるスケソウダラ漁と、ホタテの水揚げで賑わいます。
鹿部町には、北海道遺産に認定されている間歇泉(かんけつせん)が噴出しており、周辺は足湯などが楽しめる公園として整備されており、隣接して「道の駅しかべ間歇泉公園」が設置されています。
「道の駅しかべ間歇泉公園」は、地域デザインや商品開発、マーケティング、ICT活用等により、鹿部町の魅力を広く発信し地域産業の振興を推進する株式会社シカベンチャーによって運営されており、さまざまな取り組みを行っています。その中で、昨今のコロナ禍で減少した来客に対応した「WEB来店サービス」が注目を集めています。
WEBネットショップを開設・運営する事例は全国に見られますが、商品情報が限られており、地域産品の差別化には課題があるようです。「道の駅しかべ間歇泉公園」では、単なるWEBショップではなく、スマホやPC、タブレットのテレビ通話機能を活用した、対面での販売「WEB来店サービス」を導入しています。これは、まず顧客にLINEやFacebook、電話、メールで来店を予約していただき、WEB来店時に道の駅のスタッフが店内を回りながら商品の紹介、食べ方、調理方法などを丁寧に説明し、注文していただくというものです。商品の受け取りは、ドライブスルー方式による現地受け取りか配送を選択することが可能です。この取り組みにより、客単価が大きく増加し、売上の回復に貢献しているということです。
コロナ禍における接触を避けるためのテレワークや遠隔授業は、珍しくはありませんが、同じ手法が地域産品の販売にも有効であることを、教えてくれます。

DX推進の課題 ~ICTインフラの一極集中是正と省エネ化~

最近のICT活用の傾向として、特別な設備を必要としないクラウドサービスを利用することが主流になっています。前述の「WEB来店サービス」も、PCやスマホさえあればクラウド事業者の各種サービスを活用することで、比較的簡単に始めることができます。そのクラウド事業者の設備が設置されているのがデータセンターです。データセンターはインターネットの普及とともに急成長していますが、大都市圏に集中しているのが現実で、約7割が首都圏に集中しているといわれています。その理由は、大規模な通信回線が東京と大阪に集約されて、海外と接続されている海底ケーブルも首都圏と関西圏に陸揚げされていることから、クラウド事業者の生命線である通信環境条件を満たすことができるのは2大都市であるため、事業者が設備を設置するデータセンターも一極集中することになります。一方で、大都市と地方のICT基盤の格差是正、首都直下型地震など災害時の事業継続性の観点から、ICTインフラの地域分散化が必要とされています。
国も、地域データセンター事業に対する助成を行うなど分散化を推進しています。また、データセンターは、ICT機器や機器類の発熱を冷却する空調などで多くの電力を必要とし、日本の全電力の1~2%を消費しているといわれており、省エネルギーを推進する観点からも改善が必要です。

北海道ニュートピアデータセンター研究会~北海道を新たなICT拠点に~

2020年7月14日、「北海道ニュートピアデータセンター研究会」の設立が発表されました。この研究会は、これまで日本でインターネットの発展を牽引してきた有識者や事業者で構成され、ポストコロナ、Society5.0時代における国内データセンター配置のあるべき姿を検証し、北海道にデータセンターを集積させることの効果と重要性を議論することを目的としています。北海道は寒冷地であることから、冷却の効率化が図れることに加え、広大な土地での太陽光あるいは風力等を活用した再生可能エネルギー発電の適地であることから、データセンターの立地に好条件を備えています。ただしこれまでは、首都圏から遠隔にあるため、通信回線インフラが乏しいという問題がありました。これに対して研究会では、北海道と首都圏を海底ケーブル等で繋ぎ、首都圏と同条件の通信環境を実現することを提案しています。
また現在、欧州から日本まで北極海を経由して海底ケーブルを敷設する計画が進められていることから、その陸揚げポイントを北海道に誘致することで、世界とダイレクトに繋ぐことも提唱しています。もしこれが実現すれば、北海道が欧州あるいは東京経由で米国やアジアとのインターネットにおける日本の玄関口となります。そうすることで、環境配慮型、分散型データセンターの誘致が活性化され、結果的にデータセンター東京一極集中を改善することが可能となるでしょう。さらに、データセンターの集積が進めば、北海道がグローバルなICT産業、あるいは金融産業の一大拠点となるかもしれません。

高度情報化社会に向けて、5G、AIなど技術開発スピードは加速しており、国内のICTインフラの整備は、地方創生においても重要な課題です。「北海道ニュートピアデータセンター研究会」は始まったばかりですが、ニューノーマル社会における、北海道を舞台としたDXインフラ創設による地方創生の取り組みに、今後とも注目しましょう。

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