大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

土地活用ラボ for Biz

土地活用ラボ for Biz

コラム No.53-43

PREコラム

戦略的な地域活性化の取り組み(43)公民連携による国土強靭化の取り組み【5】東京一極集中の是正

公開日:2022/01/11

「国土強靱化年次計画2021」(内閣府)では、2020年に引き続き、(1)激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策、(2)予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策、(3)国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進を緊急対策としていますが、人口の東京一極集中を是正することも、重要な課題となっています。

国土交通省の「東京一極集中の是正方策について」

国土交通省は、2020年11月に「東京一極集中の是正方策について」を公表し、東京圏では広範囲で地震によるリスクが想定されるほか、水害による広域での浸水被害などの可能性があり、諸機能・施設が東京に集中することに対する是正の必要性を提唱しています。
しかし実態としては、居住地を選択する際に半数が地震災害のリスクを考慮しておらず、地震災害リスクへの認識が十分でない可能性があること、逆に、東京圏からの圏外への転出者は、居住地選択において地震災害リスクを考慮している割合が高いことを指摘しています。
また、ほぼ完全にテレワークでの勤務が可能となった場合でも、子どもと同居している世帯では、「子育て・教育上の都合」という理由で「引っ越しを検討したい」とする割合は低くなっています。(国土交通省「東京一極集中の是正方策について」より)

東京一極集中の状況

最新の東京都の公表資料によると、2020年から2021年前半にかけて、特に区部において人口流出による人口減少が見られますが、一方でその減少率は縮小傾向にあり、東京都の人口減少が中長期的に継続するとは、考えにくい状況です。
内閣府「国土強靱化年次計画2021」の資料によると、東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)では、転入超過数は減少しているものの、依然として流入超過となっています。東京圏においては、2011年の東日本大震災時にも転入超過数が一時的に大幅減少し、その後増加に転じており、大規模なインシデントが発生した際の、東京を中心とした大都市圏における人口動態の特徴ともみてとれます。
とはいえ、東京一極集中の是正は、大規模災害に対応するBCPの観点からも必要なことに変わりはありません。国も、2018年2月に東京23区の大学の定員増加を2028年3月末までの10年間抑制する法案を閣議決定するなど、東京一極集中要因への対応を進めていますが、高度に都市機能が発達した大都市の人口を分散させることは、簡単ではなさそうです。

テレワークが人口の偏在を解消するものではない

2020年、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って緊急事態宣言が発出され、各企業に対して在宅勤務が要請されたことから、テレワークという働き方が浸透しました。一部の企業は、東京都内にある事務所を閉鎖、縮小したり、本社機能を地方に移転したりするなどの動きがあったことから、このような動向が続くことで、東京一極集中が是正されていくのではないかとの見方がありました。確かに、企業における日常業務の中には、テレワークで十分機能する場合があり、働き方改革に有効な手段ではあります。一方で、経営企画や新規事業開発、顧客開拓など、やはり対面によるコミュニケーションが不可欠であることを認識した方々も多かったのではないでしょうか。また、教育現場におけるリモート学習が学生に与えた影響などを考えても、人同士が集会することの重要性を再認識させられたと思います。結局のところ、テレワークは、コロナ禍のような非常時に人と人との接触を抑制する手段としては大変有効であり、多くの国民がその有用性を経験したことの意義は大きいと思いますが、あくまでコミュニケーションの補助機能であり、それ自体がNew Normal(新しい生活様式)を誘発し、東京一極集中を是正するものではなかったようです。
やはり、企業や公的機関、学校にとって、交通、物流、情報基盤が集中し、高度に発達した東京という都市機能が本当に必要なのか、社員や職員、学生を生活コストが高い東京に流入させることが、それぞれ組織の生産性向上につながっているのかを考えることが重要なことではないでしょうか。 前出の、国土交通省「東京一極集中の是正方策について」でも、「東京一極集中是正に係る既存の取り組み例」として、以下の例を紹介しています。

  • (1)地方創生推進交付金(移住・起業・就業タイプ):東京から地方に移住して起業・就業する方々へ支援金を支給する取り組みを行う地方公共団体を支援。
  • (2)地方拠点強化税制:企業が本社機能の地方移転又は地方拠点の強化を行う場合の税制優遇措置として、オフィス減税(建物等の取得価額に対する特別償却又は税額控除)及び雇用促進税制(常時雇用従業員の増加数に応じた税額控除)を適用。
  • (3)地方大学・産業創生法:産官学連携により、地域の中核的産業の振興や専門人材育成などを行う優れた取り組みを「地方大学・地域産業創生交付金」において重点的に支援し、「キラリと光る地方大学づくり」を進め、地域における若者の修学・就業を促進。特定地域内(東京23区内)の大学の学部等の定員増を原則10年間抑制。(国土交通省「東京一極集中の是正方策について」より)

全国には、地域の中核となる福岡、広島、大阪、名古屋、仙台、札幌といった主要都市があります。これら都市インフラが整備された地方都市に、まずは国の行政機関や公的組織を機能移転あるいは移譲させ、さらに地域の中核都市を、「モノづくり都市」、「学園都市」、「情報都市」、「金融都市」、「田園都市」など、行政機能と関連づけて多極集中するといった、戦略的で機能的な国土開発を公民連携によりデザインしていくことも検討していく必要があるかもしれません。

関連コラム

  • 前の記事へ前の記事へ
  • 次の記事へ次の記事へ

メールマガジン会員に登録して、土地の活用に役立つ情報をゲットしよう!

土地活用ラボ for Owner メールマガジン会員 無料会員登録

土地活用に役立つコラムや動画の最新情報はメールマガジンで配信しております。他にもセミナーや現場見学会の案内など役立つ情報が満載です。


  • TOP

このページの先頭へ