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TKCコラム

知っておきたい土地活用の基礎知識①
人口・世帯数動態

不動産の有効活用について関与先様へ助言するには、土地や建物に関する基礎的な知識が欠かせません。不動産の利活用実態やそこで暮らす人々の推移、住宅着工戸数などについて、統計資料などを基に考えていきます。

日本の人口は1憶2744万人、10年連続減少

日常生活の中では、国内の人口やその増減の推移などに関して、あまりに漠然としていて気にかけることはありません。しかし統計の数値に接すると、私たちの国土や人々の存在を改めて意識するのではないでしょうか。

総務省は毎年、住民基本台帳法に基づいて住民票に記載されている者の数および世帯数を集計し、「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(以下、「人口・世帯動態」)として公表しています。2019年1月1日現在、わが国の人口は外国人住民を含めて1億2744万人(前年比26万3696人減)。1968年の調査開始以来最大の減少数を記録し、2010年から10年続けて減少しています。ただし、外国人の住民は約267万人で前年に比べて約6.8%増加しています。男女別の人口は、男性6217万人で48.8%、女性6526万人で51%と、女性が309万人多くなっています。

人口の動態を2つの要素から算出した数値が「自然増減」と「社会増減」です。聞きなれない言葉かもしれませんが、人の増減や移動は住宅の需要と供給と大きく関わり、土地活用を考える際には判断材料のひとつにもなります。

自然増減とは、生まれた者の総数から亡くなった者の総数を引いた数値です。出生者が死亡者を上回れば自然増加になり、その逆になれば自然減少になります。マスコミなどで取り上げられる出生率は、人口1000人当たりの年間出生数のことで、死亡率も同様です。

過去50年の出生者数及び死亡者数(単位:人)

総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」より作成

2018年の自然増減数は12年連続して自然減少の約44万人。出生者数は1973年をピークに下降線をたどっており、死亡者数は1971年頃を境に一進一退を繰り返し、2007年には死亡者数が出生者数を上回る自然減少が続いています。1970年代は公害問題が深刻化、石油ショックなど世界経済が冷え込んだ時期でした。2007年は米国で低所得者向けの住宅融資「サブプライムローン」に端を発した世界経済危機が起き、翌年のリーマン・ショックに繋がりました。わが国の人口増減との関連はないと思いますが、統計数値の変化をその時代の出来事とともに眺めると興味深いものがあります。

政府統計「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」(2018年、以下「政府統計人口・世帯動態調査」)によると、都道府県別の自然増加率でプラスになっているのは沖縄県(0.25%)の1県だけで、同県を除けば少子化が進み(出生率低下)、平均寿命が上昇(死亡率上昇)しているわが国の特徴が明確に表れています。沖縄県は40年前に調査を開始して以来、連続して自然増加率トップを維持しています。自然減少率が最も大きいのは秋田県(△1.03%)で、次いで高知県と青森県(△0.78%)、岩手県(△0.77%)の順で続いています。青森県は厚生労働省の調査(2005年)で平均寿命が47都道県中、男女とも最下位、秋田県は男性46位・女性44位となっています。

少子化と人口減で「自然減少」が進むと、当然ながら住宅ニーズは先細ることになり、新規の住宅着工戸数も減少することが予想されます。そこで注目されるのが中古住宅市場です。国は新築住宅信仰が強いわが国の住宅事情を改善するため、中古住宅の流通促進を狙いに優良中古住宅の普及を目指す「安心R住宅」などの対策を取っています。

社会増減は住宅需要と密接に関連

社会増減は、2つの地域の間の出と入りを示す数値です。ある地域から別の地域に転入した者の数と、転出した者の数を差し引きします。転入者数が転出者を上回れば社会増加、その逆が社会減少です。自然増減と同じく、人口1000人当たりの年間転入者及び転出者数を社会増減率といいます。
2010年から転入者数が多い「社会増加」が続いており、そのトップは当然ながら東京都。2018年は8万5000人。神奈川、千葉、埼玉と首都圏が上位を占め、福岡、大阪、愛知が続いています。社会増加率が最も大きいのも東京都(0.83%)で、千葉県(0.44%)、埼玉県(0.40%)の順で続いています。東京都は社会増加数が22年連続、社会増加率も20年連続でトップとなっています。

社会減少数が最も多いのは福島県(△6,381人)。次いで新潟県(△6,373人)、長崎県(△6,072人)の順です。また、社会減少率が最も大きいのは青森県(△0.45%)で、次いで長崎県と秋田県(△0.44%)、和歌山県(△0.35%)の順で続いています。
わが国では、1970年代の高度経済成長期から一貫して社会増加が定着しています。大都市への人口流入が加速し、地方の過疎化も進んだことが数値にも表れており、首都・東京に流入する人々がいかに多いか。社会増減を見れば明らかです。
人の移動を表わす社会増減は、賃貸住宅市場と密接に関係します。移動の主な理由は進学や就職、転勤、結婚などで、移動後の住居は早期に確保する必要があるからです。
(数値は「政府統計人口・世帯動態調査」に基づく)

人口減少でも世帯数は増加で賃貸住宅ニーズが上昇

「世帯」とは、住居と生計をともにしている人またはその集団を指します。「夫婦のみの世帯」や「夫婦と子供からなる世帯」、単身で生活する「単独世帯」などの種類分けがあります。

総務省の統計によれば、過去50年の世帯数は毎年増加している反面、1世帯当たりの平均構成人員は1969年の3.64人から2019年の2.19人と1.45人減少。率にして約40%減っている計算です。

2019年の世帯数と対1999年比増加率

総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」より作成

政府統計の人口動態調査で、2019年と1999年の都道府県別の世帯数を比較したのが上の表です。2019年の世帯数は東京都がトップで、東京を含む3大都市圏が全体の半数以上を占めています。この傾向は調査開始以来変わりませんが、20年前の世帯数と比べてみると、この間に世帯数が増加した県が全国に散らばっているのが分かります。

「20年比較」で最も高い比率を示しているのが沖縄県(45.2%)で、滋賀県(37.8%)、東京都(35.0%)、埼玉県(34.8%)、愛知県(34.5%)と続いています。3大都市圏の一つである大阪府(24.7%)が上位に入っていません。隣県の京都府や兵庫県も伸びていませんが、滋賀県が増加率で「全国2位」となっており、社会情勢を表しています。
滋賀県は1990年代中盤からJR東海道線に新駅が次々と開設され、並行して関西の有力私大・立命館大学が新キャンパスを開設したり、大手メーカーの工場が進出するなどベッドタウン化が加速したことが世帯数の増加につながっているといわれています。

人口が減少しているにもかかわらず、1人当たりの世帯構成人員は減少しているのに世帯数が増加している要因は、ライフスタイルが変化しているからだとの指摘があります。未婚率が上昇して単独世帯が増え、子どもを持たない夫婦や、いわゆるシングルマザーなどの「ひとり親と子」の世帯など、世帯が多様化しているのです。

生活様式が多様になると、賃貸住宅の需要が高まると見られていいます。世帯が増えれば住居はその分だけ必要になるからです。単身世帯を構成する人の多くは比較的若い世代であり、彼らは持ち家志向が低く、住居は賃貸で構わないと考える人が増えています。また高齢者の中でも単身世帯が増加することを考えると、将来は単独世帯の比率がより高まると思われます。