TKCコラム

注目を集める、ZEH仕様の賃貸住宅とは?
安定した賃貸住宅経営をするには、お客様に付加価値を提供することが必要ですが、今注目されているのが、「ZEH仕様の賃貸住宅」です。大和ハウス工業をはじめとして、ZEH仕様の賃貸住宅建築に対応している会社も増えています。ZEH仕様の賃貸住宅の特徴、メリット、デメリットなどをご紹介します。
ZEHとは?
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、経済産業省資源エネルギー庁によれば、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅のこと」とあります。
具体的には、ZEHは下図のように、高断熱でエネルギーを極力必要としない工法や材料を使うことで、屋根や壁、窓などの断熱性能を高め、高効率の設備によって使用エネルギーを削減し、建築物のエネルギー消費性能基準から一次エネルギー消費量を20%削減します。さらに、太陽光発電などの創エネ設備によってエネルギーを創り、一次エネルギー消費量を削減した住宅ということになります。
ZEHの3つの定義

出典:経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー課/環境省 地球環境局「ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和4年度の関連予算案」(令和4年3月)より
集合住宅のZEH、『ZEH-M』とは?
戸建住宅と同様に、賃貸住宅やマンションにおいても、ZEHが設定されており、『ZEH-M(ゼッチ・マンション)』と呼ばれています。
ただし、賃貸住宅やマンションは、戸建住宅に比べて1戸あたりの太陽光発電の設置面積が少なく、高層の建物ほどエネルギー消費量の削減が難しくなるため、階層によって条件や名称が異なります。
『ZEH-M』では、1棟全体(住棟)での評価と1戸(住戸)での評価があり、それぞれZEH基準に性能を適合させることで、階数ごとに、『ZEH-M』『Nearly ZEH-M』『ZEH-M Ready』『ZEH-M Oriented』と名称がついています。それぞれの基準は、以下の図のとおりです。
「ZEH-M」の定義

出典:経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー課/環境省 地球環境局「ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和4年度の関連予算案」(令和4年3月)より
オーナーにとって『ZEH-M』のメリット
賃貸住宅オーナー様にとって、『ZEH-M』仕様の賃貸住宅やマンションは、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
競合となる賃貸住宅(マンション)との差異化
同じような条件の賃貸住宅があった場合、『ZEH-M』対応の賃貸住宅やマンションは、ご入居者にとって快適性や光熱費などにおいてメリットがあります。また、省エネルギーへの意識が高いご入居者へのアピールにもつながることから、競合物件に対して差異化を図ることが可能です。
高い収益性を見込める可能性が高くなる
『ZEH-M』仕様にすることで建築費は上がりますが、ご入居者は高断熱化により光熱費が削減できることもあり、その分、家賃を高めに設定することが可能です。そうなれば、賃料収入が多くなり、高い収益性を見込める可能性が高くなります。さらに、建物の資産価値が下がりにくい可能性もあり、将来的に売却を検討する場合、『ZEH-M』仕様ということで、他の一般建物に比べて高く売却できる可能性があります。
金融機関からの評価が高くなる可能性がある
賃貸住宅を建築する場合、ほとんどのオーナー様は融資を利用されますが、金融機関からも、『ZEH-M』仕様の賃貸住宅やマンションは資産価値が高いとされる可能性があります。
一方デメリットとして、この融資の問題にも関係してきますが、建築する際に高断熱化や太陽光発電等の設備の導入などによって、一般的に初期費用が高くなります。そこで国はZEHの普及を促進するため、補助金制度を設けています。
令和4年度のZEH関連の補助事業について
令和4年度もZEH関連の補助事業について、経済産業省、国土交通省、環境省の3省が連携して取り組んでいます。さまざまな補助金や制度が用意されていますので、ZEHビルダーやZEHプランナーに相談しながら進めると良いでしょう。
区分 | ZEH-M (ゼッチマンション) 先進的な建築設計によるエネルギー負荷の抑制や パッシブ技術の採用による自然エネルギーの積極的な活用、 高効率な設備システムの導入などにより、 室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー化を実現した上で、 再生可能エネルギーを導入することにより、エネルギー自立度を極力高め、 年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとなることを目指した集合住宅 |
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補助事業名称 | 超高層 ZEH-M実証事業 経済産業省 |
集合住宅の省CO2化促進事業 環境省 | ||
(高層ZEH-M支援事業) | (中層ZEH-M支援事業) | (低層ZEH-M支援事業) | ||
対象となる住宅 | 住宅用途部分が 21層以上におけるZEH-M |
住宅用途部分が 6~20層におけるZEH-M |
住宅用途部分が 4~5層におけるZEH-M |
住宅用途部分が 1~3層におけるZEH-M |
外皮性能 | 全住戸において強化外皮基準 | |||
太陽光発電などを除く 一次エネルギー消費量 |
共用部を含む住棟全体について、省エネ基準から ▲20%以上 | |||
太陽光発電などを含む 一次エネルギー消費量 |
省エネ基準から ▲100%以上 | |||
Nearly ZEH-Mは、省エネ基準から ▲75%以上 ZEH-M Readyは、省エネ基準から ▲50%以上 ZEH-M Orientedは、再生可能エネルギーを加味しない |
ZEH-M Ready (住宅用途部分4、5層)は、 省エネ基準から ▲50%以上 |
Nearly ZEH-M (住宅用途部分1~3層)は、 省エネ基準から ▲75%以上 |
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その他 | ZEHデベロッパーが携わり、BELSを用いて広報活動などを行うこと 申請は原則として1棟ごとに受け付け |
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補助額 | 補助対象経費の1/2以内 (令和3年度以前は2/3以内を予定) |
補助対象経費の1/3以内※1 かつ 上限8億円/件(3億円/年) |
定額40万円※1×住棟に含まれる戸数かつ、 上限6億円/件(3億円/年) 蓄電システム2万円/kWh※1 (上限20万円/戸※2かつ補助対象経費の1/3以内) (住戸部分に限る) 低炭素化に資する素材を一定量以上使用、 または先進的な再エネ熱利用技術を活用する場合、定額加算 |
募集開始時期および採択時期などは別途公表予定
※1 補助額:令和元年度からの継続事業は、同年度の補助率・額から変更なし
※2 補助額 :一定の条件を満たす場合は上限24万円/戸
出典:経済産業省・国土交通省・環境省「令和4年度3省連携事業としてネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの推進に向けた取り組み」
ZEHを導入するにあたって活用できる補助金は多くありますが、注意すべき点もあります。 まず、ZEH関連の補助金と制度は併用できないものもありますので、詳細に関しては確認が必要です。次に、ZEHを申請する住宅や賃貸住宅は、ZEHビルダー、あるいはZEHプランナーが設計、建築または販売を行わなければなりません。ZEH仕様の建物の建築を経済産業省に申請、登録した工務店等のことをZEHビルダー、ZEHの設計を申請・登録した設計事務所等のことをZEHプランナーと呼びますが、補助金を活用する場合は、建築・設計の依頼はZEHビルダー、ZEHプランナーにする必要があります。 また、各種補助金の申請には予算と期限がありますので、情報を正確につかんでおく必要があります。また年度ごとに予算もスケジュールも異なりますので、賃貸住宅経営の収支シミュレーションと照らし合わせながら慎重に検討することも重要になりますので、最新情報や詳細は、信頼できるパートナー企業に相談してください。