大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

TKC会員・職員の皆様方へ 土地活用情報サイト

TKCコラム

空き家問題の実態を探る

増加する空き家

今、日本では空き家が増え続けています。ニュースなどでも耳にすることも多く、実際に空き家を目にする機会も増えてきました。今後、2025年問題といわれる団塊世代が後期高齢者となる超高齢化社会となれば、さらに空き家は増加していくとの見方もあります。
不動産は国土の狭い日本にとっては貴重な資源であり、空き家問題は、環境問題や治安などの社会問題にも発展しかねない問題です。大切な実家や将来相続する予定の不動産が空き家になる可能性のある人も少なくありません。まず、現在の空き家の状況について見てみます。

「空家等対策の推進に関する特別措置法」第2条第1項では、「空家等」の定義として、「おおむね年間を通して居住その他利用がされていない建築物(住宅に限らない)」としています。
総務省が実施している「住宅・土地統計調査」では、次の4種類に空き家を分類していますが、このうち、「売却用の住宅」、「賃貸用の住宅」については、売却や賃貸のために管理されており、入居者を待つ状態のものと考えられ、「二次的住宅」の空き家については、常時住んではいないものの、別荘などとして使用されていたりする住宅と思われますので、特に問題があるとはいえません。
しかし、「その他の住宅」に分類される空き家は、現在誰も住んでおらず、長期にわたって不在となっている住宅ですから、まさに「空き家」であるといえます。今取り上げられている「空き家問題」は、この「その他の住宅」の増加ということになります。

住宅・土地統計調査における空き家の分類

  1. ① 売却用の住宅…新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅
  2. ② 賃貸用の住宅…新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
  3. ③ 二次的住宅…別荘などの普段は人が住んでいない住宅
  4. ④ その他の住宅…1~3以外の人が住んでいない住宅で、転勤・入院などで長期不在の住宅や取り壊し予定の住宅など

ここからは、国土交通省住宅局から公表された「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」(令和4年10月)から、現在の空き家の状況について紹介します。

住宅・土地統計調査(総務省)によれば、空き家の総数は、この20年で約1.5倍(576万戸→849万戸)に増加しています。その中でも「二次的利用、賃貸用または売却用の住宅」を除いた、長期にわたって不在の住宅「その他空き家」(349万戸)がこの20年で約1.9倍に増加しています。住宅の供給物件の増加が大きな要因かと思われますが、空き家率においても、20年間で2.1%の増加となっており、約7戸に1戸の割合で空き家になっていると言えます。

空き家数の推移

【空き家の種類】
二次的住宅:別荘及びその他(たまに寝泊まりする人がいる住宅)
賃貸用又は売却用の住宅:新築・中古を問わず、賃貸又は売却のために空き家になっている住宅
その他空き家:上記の他に人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など

出典:住宅・土地統計調査(総務省)

「その他空き家」(349万戸)の内訳は、一戸建てが72.2%となっており、そのうち大半は木造住宅(240万戸)となっています。そのため、地域の安全性や環境への悪影響を及ぼす危険性もあり、早急な対応が求められています。
また、従来は賃貸住宅として利用されてきたと思われる「共同住宅」「長屋建住宅」も100万戸に近い戸数であり、賃貸や売却用ではない、つまり放置状態となっている「共同住宅」「長屋建住宅」も地域の環境悪化の一因となっているといえるでしょう。

その他空き家の建て方・構造別戸数・割合

出典:住宅・土地統計調査(総務省)

またこうした空き家の77.5%(不明を含めれば8割超)は、1980年(昭和55年)以前(新耐震基準以前)に建設されたものであり、地震を含む大きな自然災害が起こった際には、大きな被害をもたらすことが想定されます。

空き家の建設時期

利用状況が売却用、賃貸用および別荘・セカンドハウスとなっているものを除いたもの

出典:令和元年空き家所有者実態調査(国土交通省)

「その他空き家」数の将来推計

国土交通省の推計、「2003年から2018年までの直近4時点の数値を線形近似し推計」によれば、「その他空き家」の戸数は、2025年(令和7年)で420万戸、2030年(令和12年)では470万戸程度と推計しています。
これに対して、2021年(令和3年3月)に策定した「住生活基本計画」では、「簡単な手入れにより活用可能な空き家の利用」「管理不全の空き家の除却等」を通じて、400万戸程度に抑える(2000年)ことを目標としています。

※住宅・土地統計調査(総務省)におけるその他空き家数について、2003年(平成15年)から2018年(平成30年)までの直近4時点の数値を線形近似し推計

出典:令和元年空き家所有者実態調査(国土交通省)

空き家となっている理由

国土交通省が行った実態調査によれば、空き家となっている理由として、「物置として必要」(60.3%)がもっとも多く、「解体費用をかけたくない」(46.9%)、「更地にしても使い道がない」(36.7%)と続きます。
費用面の課題をあげる人も多く、上記「解体費用をかけたくない」に続いて、「リフォーム費用をかけたくない」(23.8%)、「取り壊すと固定資産税が高くなる」(25.6%)となっています。 「将来、自分や親族が使うかもしれない」(33.1%)、「資産として保有し続けたい」(10.2%)と継続保有を考える人も少なくなく、このあたりも空き家が増加する一因となっています。 売りたい、もしくは貸したいができていない人は、「住宅の質の低さ」(33.2%)や「買い手・借り手の少なさ」(13.4%)が原因だとする人も多く、結果的に、満足する価格で売却、あるいは賃貸ができなくなっているようです。

空き家にしておく理由

出典:令和元年空き家所有者実態調査(国土交通省)

空き家問題は、都心よりもむしろ人口減少の激しい地方のほうが深刻で、8割以上の市区町村が、空き家等の利活用に関して何らかの取り組みを実施しているようです。具体的には、「移住・定住」や「二地域居住・多地域居住」「中心市街地活性化」「農山漁村の振興」「観光の振興」などを目的に、多くの自治体が、空き家等の利活用の取り組みを実施しているようです。
空き家の取得経緯として、相続が55%という数値もあります。今後実家の相続などを控えている人は、自治体や専門の団体とも相談しながら、早めの対応を行う必要がありそうです。