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TKCコラム

中小企業におけるCRE戦略

中小企業こそCRE戦略が必要

日本における企業の大半は、中小・小規模企業ですが、その数は年々減少しています。2020年度「中小企業白書」によれば、2018年は約4万6千者、2019年は約4万3千者もの休廃業・解散の件数となっています。加えて、2020年度は、新型コロナウイルスの影響によって、さらに大きな数になると言われており、中小企業・小規模事業者の減少には歯止めがかからない状況です。一方、大企業は合併や統合などによって、若干数ですが増加しています。
この要因の第一は、中小・小規模企業の経営者の高齢化と少子化による事業を引き継ぐ人の減少です。これは、廃業・解散する事業者のうち、6割もの事業者は黒字であるということもそれを裏付けています。 技術もあり、市場も存在しているのに継承できない、ということなのでしょう。
しかし、よく言われるように、日本の経済を支えているのは中小企業であり、中小企業減少の状態は、日本全体の課題のひとつと言えるかもしれません。

こうした中小企業の資産のひとつが不動産であり、古くから存続する中小・小規模企業には、不動産を所有している企業は少なくありません。特に製造業を営む企業においては、工場や倉庫として活用されているケースが多く、この不動産の活用の仕方も今後の事業を考えるうえで重要なポイントとなっています。
不動産を所有する中小企業は、古くから(先代、先々代から)保有しているケースが多く、不動産の活用について深く検討することなく今日に至っている中小企業も少なくありません。
つまり、サプライチェーンや事業構造自体の変化によって、「その場所に工場が必要なのか」という問題の検討や、仮にその不動産を他の用途に活用した場合。現在の不動産の保有コストとその不動産が生み出すであろう、潜在的な価値との比較は、多くの企業で答えが見いだせておらず、中小企業におけるCRE戦略の問題は、潜在的な課題として存在しています。

事業承継時にCREが問題となる

中小・小規模企業において、CREが問題となるのは、多くの場合、経営者(オーナー)の交代、つまり事業承継・資産承継の際に起こります。
事業承継は、従業員、取引先、営業先などの事業経営に関する財産の承継を指し、資産承継は、不動産などの財産の承継を指しますが、CRE戦略では、不動産などの財産をいかに継承するかを考えます。
中小企業・小規模事業者にとってCRE戦略に関する問題の第一は、前述したように、「現在の不動産の活用方法が正しいのか」という問題です。
不動産を所有する企業の大半は、工場、オフィス、倉庫、社員寮、福利厚生施設、駐車場など、様々な活用方法を採っていますが、事業の内容と成長性を考えた場合、その活用方法でいいのかどうか、再度検証し、スムーズな事業継承を行う必要があります。

また、企業が事業用として使っている不動産などの資産が、オーナーが所有していたり、あるいは企業の所有とオーナーの所有が混在していたりするケースが少なくありません。中小企業、特に小規模企業では、多くの場合、いわゆる資本と経営とが同一となっており、経営資源の相当部分を、創業者個人から提供としているケースが少なくありません。
このような場合は、企業が使用しているオーナー個人の資産は、オーナーから会社へ移し、企業所有の資産として、管理・運営していく方向にすべきでしょう。CRE戦略の一環として組織の再編や見直しを行い、新たな法人を設立し、その法人が資産管理を行っていくという手法も考えられます。
オーナー個人所有の不動産を企業所有に移管することで、企業側とすれば、不動産活用の幅が広がりますし、オーナー個人には金融資産が残り、相続税の納税資金としても利用できます。
こうした問題は、事業継承の際に、整理しておく必要があります。

新たな観点が必要な、現在のBCP対策

2020年、コロナ禍において、自然災害に加えて、感染症という新たなBCP対策問題が出てきました。
従業員の安全、事業の継続といった観点からも、適切なCRE戦略の立案は不可欠ですが、これまでは、社屋の安全性やエネルギーの確保、避難経路、災害時の安否確認などが主要な課題でした。ところが感染症の場合は、感染症対策としての安全性確保の観点から、十分なオフィススペースや、人の接触を極力排除した、サプライチェーンの設計、リモートワークやテレワークのための働くスペースの確保など、これまでとはまったく異なる安全性の確保の施策が必要となりました。
まだまだ、各社とも試行錯誤の段階ではありますが、「New Normal」としてのCRE戦略が注目を集めそうです。

後継者の問題などで、事業継承がスムーズにいかない場合は、M&Aによる事業継続という方法を採る場合もあるでしょう。
現在、中小企業の事業承継に関連した、M&Aも増加しています。日本には歴史の古い企業が数多く存在していますが、多くの老舗企業が、後継者問題を抱えているのが実情です。経営者としては当然、企業の存続が第一になりますので、M&Aによる方法を採らざるを得なくなります。
そうならないためにも、早い段階から、CREの有効活用によって企業価値を向上させておくことが、事業継承の観点からも有効な戦略になるといえるでしょう。