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TKCコラム

知っておきたい土地活用の基礎知識⑦
賃貸経営に関する不動産データ

賃貸住宅・マンションなどの賃貸経営は不動産の有効活用策のひとつ。近年、積極的な不動産投資をけん引していますが、競争も激しく安定した収益を上げていくには市場の分析が欠かせません。今回は公益財団法人・不動産流通推進センターの「2020 不動産業統計集」から賃貸経営に関するデータを集めてみました。

生活様式が多様化すると賃貸住宅のニーズが高まる?

第1回の「人口・世帯動態」でもご紹介した通り、わが国の人口(2019年1月1日現在)は、外国人住民(267万人)を含めて1億2744万人。10年連続して減少しています。不動産流通推進センターの「人口・世帯・住宅」におけるグラフ「世帯増加数および婚姻件数と貸家着工数」は、婚姻による世帯数と貸家の相関を表しています。

世帯増加数および婚姻件数と貸家着工数

人口減少にもかかわらず世帯数が増加するのは、ライフスタイル(生活様式)の変化に大きな要因があるといわれています。結婚を機に子が親から独立し実家を離れるのが日本の伝統的な世帯の変化でした。しかしそうした傾向は希薄になり、独身者やいわゆるシングルマザーなど、世帯のありようが変わってきています。

生活様式が多様化すると、賃貸住宅の需要は高まります。親元を離れれば必然的に住む場所が必要になり、部屋を借りることになるからです。婚姻件数は2001年頃をピークに毎年減少していますが、世帯数は2005年頃にいったん前年から急上昇。貸家着工数も増加しました。

2005年前後を境に世帯数、貸家着工数ともに落ち込みましたが、2011年から増勢に転じ、その後は一進一退を続けています。貸家の増加は東日本大震災による被災者向けの復興住宅など、近年の大規模災害による借家需要の高まりも背景にあると思われます。ひと昔前までは自然災害による貸家ニーズは表面化していなかっただけに、不動産賃貸の世界も、地球環境の変化に無縁でなくなってきたといえるのではないでしょうか。

地域別の貸家着工数では、ここ数年は全国的に減少傾向にあります。「貸家の地域別着工数の推移」では、2009年から3年間落ち込みが続いています。これは前年に起きたリーマン・ショックによる経済活動の停滞が大きく影響していると思われます。自動車などの基幹産業で減産が続いて人の移動が少なくなり、その結果貸家のニーズが低下したと思われます。大手自動車メーカーの本拠地である中部圏では2009年には対前年比40%マイナスと過去最高の落ち込みを記録しています。

貸家の地域別着工数の推移(2005-2019年度)

借家の一人あたり床面積は米国の半分

今では言われなくなりましたが、海外からは日本の住居を指して「ウサギ小屋」と言われていたことがありました。それほど、狭いスペースに何人もの人が暮らしていたと思われていたのです。それを証明しているのがこの棒グラフです。

一戸あたり床面積の国際比較

日米英独仏5カ国を比較したものですが、持家は米国の157m²の76%と、さほどの狭さは感じません。ドイツ・フランスと互角でイギリスを約13m²上回っています。しかし借家になると格差が露わになります。米国の55%、持家では優っていたイギリスとの比較でも、貸家になると25m²も狭くなっています。

これは、国土の広さと人口の関係が背景にあります。5カ国の国土面積は、米国が983.2万m²で世界第3位(1位はロシア連邦で1709.8万m²)、フランス54.9万m²、日本37.8万m²、ドイツ35.8万m²、イギリス24.4万m²と5カ国中3番目。しかし人口密度は349人/km²とトップで、以下イギリス264人/km²、ドイツ231人/km²、フランス120人/km²、米国に至っては33人/km²。わが国の10分の1です。居住可能面積にもよるでしょうが、単純計算だと日本人が10人住んでいるところに米国人は1人で生活している計算になります。

持家から借家の住み替えが増えている

マイホームは一生の買い物で、人々の暮らしの中で最も大きな夢の一つ。このことは今も昔も変わりがありません。しかしこの「マイホーム神話」は最近、にわかに変化しています。「今後の居住形態について」は2003年から5年ごとに借家と持家の人それぞれに聞いた調査です。これによると、現在借家の人が今後住み替える場合に「借家」と答える人の比率が増加。持家に住んでいる人でも、将来は「借家」に住み替えると考える人が2013年に16%に達し、さらに5年後の2018年にも13%と10年前と比較して大きく伸びているのが目に付きます。

今後の居住形態について(現在持ち家の世帯)

非正規雇用が増加している半面、正規雇用数が減少しており、所得の大幅な落ち込みが顕著になってきています。また前述したように婚姻件数が減少して独身者が増加。シェアリングのブームに乗り、自動車や住居を「所有」する意欲のない世代が増えていることも、借家ニーズの高まりに影響していると思われます。