大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

TKC会員・職員の皆様方へ 土地活用情報サイト

TKCコラム

知っておきたい土地活用の基礎知識⑥
地価公示

地価公示は、国土交通省が毎年1月1日時点における全国の土地価格を3月に公示するもので、適正な地価の形成に寄与することを目的に始められ、社会・経済活動の制度インフラとして重要な数値になっています。公開された土地価格は不動産取引の指標となるだけなく、土地の相続や固定資産税についての基準となります。

26,000カ所を2,400人が分析・調査

地価公示は、地価公示法に基づいて国土交通省の土地鑑定委員会が都市計画区域などの標準地を選び、毎年1月1日時点の1㎡当たりの正常価格を判定し公示するものです。土地鑑定委員会の分科会が全国に167か所あり、この分科会に所属する約2,400人の鑑定評価員(不動産鑑定士)が全国26,000の地点を選定・確認。分科会で議論し、公示価格を判定しています。土地鑑定委員会は1969年の地価公示法制定時に設置されており、会議の内容や議事録は非公開になっています。

昨年は地価公示法の制定50周年の節目を迎えた年でした。2,400人の不動産鑑定士が26,000地点の土地を調べたのちに議論を重ね、分析・検討したうえで鑑定評価書を作成するという大変な労力と時間を費やしています。鑑定委員1人が1年に平均10.8件の土地を調査して評価書を作成します。

地価公示の狙いは、以下の5つです。

  1. ① 一般の土地の取引に対して指標を与えること
  2. ② 不動産鑑定の規準となること
  3. ③ 公共事業用地の取得価格算定の規準となること
  4. ④ 土地の相続評価および固定資産税評価についての基準となること
  5. ⑤ 国土利用計画法による土地の価格審査の規準となること

土地の価格については、このほか毎年7月1日時点における都道府県の地価調査である「基準地価」や、市街地の道路に面した宅地の評価額を国税庁が公示する「路線価」などがあります。わが国の土地の価格は、「実勢価格」「公示価格」「路線価」「固定資産税評価額」と4つあり、「一物四価」といわれています。ちなみに固定資産税評価額は、地価公示価格の70%に相当します。
昨年の地価公示から、インターネットによる鑑定評価書の公開が始まっており、国交省のサイト「土地総合情報システム」で閲覧することができるようになりました。

三大都市圏は7年連続で住宅地が上昇

2020年(令和2年)の地価公示では、地方圏の中核都市四市(札幌、仙台、広島、福岡)を除いた地域で全用途の平均・商業地が平成4年以来28年ぶりに上昇に転じるなど、全国的に地価の回復傾向が広がっています。

住宅地は全国で見ると3年連続、三大都市圏では7年連続、地方圏では2年連続して上昇しています・商業地では全国で5年連続、三大都市圏で7年連続、地方圏で3年連続して上昇しています。中核都市4市は上昇基調をさらに強めてり、地方4市を除いた地域でも、全用途平均・商業地は1992年以来28年ぶりに上昇に転じ、住宅地は平成1996年から続いた下落から横ばいになるなど、地価の復調ぶりが表れています。
その背景として、国交省は交通の利便性に優れた地域を中心に住宅需要が堅調で、オフィス市場も活況、観光客増加による店舗・ホテル需要の高まりや再開発の進展を背景に需要が堅調であることを挙げています。

国土交通省「2020年地価公示」より作成

しかし、好調な公示地価も、新型コロナウィルスの感染拡大で来年は厳しい数値が出てくるのではないかと思われます。とくに、商業地において三大都市圏では在宅勤務が増加してリモートワークの導入が進み、都心部におけるオフィス需要の低下が早くも今年から出ています。

反面、通勤の頻度が下がり、在宅勤務の長期化に備えて居住地をより郊外に求める動きが拡大しており、地方における住宅地ニーズが高まるとの予測が強くなっています。このため地方圏の住宅地の地価は上昇するのではないでしょうか。

上昇率トップは倶知安町、最高価格は銀座4丁目

地価の上昇率が最も大きかったのは、住宅地、商業地とも北海道の倶知安町。スキーリゾートとして有名な「ニセコ」地区がある町。インバウンドの観光客の中で高い人気を誇る町で、同町のスーパー売り場などでは免税品の品数を増やしている店も多く、訪日客は重要な顧客として小売業の既存店売上高にも影響を及ぼしているほどです。

地価が最も高かったのは、住宅地が「東京都港区赤坂1-14-11」(1㎡当たり472万円)で3年連続のトップでした。商業地は14年連続で東京都中央区銀座4丁目の山野楽器銀座本店(同5770万円)ですが、伸び率は0.9%と前年の3.1%から低下しています。

国土交通省「地価公示」をもとに作成

調査のあった2019年は台風による被害が各地で発生しました。浸水被害で連日報道された長野県などでは地価の下落が起きています。しかしタワーマンションの浸水で話題になった神奈川県・武蔵小杉駅周辺の地価は下落することなく上昇しています。