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TKCコラム

知っておきたい土地活用の基礎知識⑤
不動産証券化―仕組みと参加者―

不動産の証券化では信託銀行や証券会社などの金融機関をはじめ、多くの関係者が専門知識を駆使して業務を実行します。その仕組みとプレーヤーについて考えます。

証券化の代表選手はABS

不動産証券化の代表的な商品は資産担保証券(Asset Backed Security =ABS)です。小口化できない土地やビルを証書にして投資家が購入できるよう市場に流通させる有価証券で、不動産資産を担保にして発行する証券の総称です。

ABSを発行するには、資産を保有する企業から切り離す「器」を作る必要があります。ひとつは特別目的会社(Special Purpose Company=SPC)を設立すること。もうひとつは匿名組合を作ることです。SPC設立の狙いは投資家保護。保有している資産を証券化して資金を調達したい企業を「オリジネーター」または「原債権者」といいますが、このオリジネーターが倒産すると、ABSは担保価値が低減し投資家に損失リスクが生まれます。それを回避するために、経営実態のないペーパーカンパニーですが、資産を切り離して分別管理する狙いがあります。匿名組合は法人ではないので事業税が発生しないメリットがあり、事業に出資し利益を配当として受け取るための契約形態を指します。SPC同様、経営実態のない単なる「器」として理解してください。

現在発行されているABSの多くは、信託銀行がSPCとなってオリジネーターの資産を管理しているので、SPCイコール信託銀行と考えて差し支えありません。オリジネーターはSPCに資産を譲渡し、SPCは譲り受けた資産を信託銀行と信託契約を結びます。信託銀行はその資産をもとに「信託受益権」をSPCに発行します。信託受益権はSPCから証券会社などを通じて投資家に販売されますが、この信託受益権がABSになるので、信託受益権はABSそのものです。

不動産証券化の仕組み

証券化の司令塔 アレンジャー

ABSに代表される証券化商品の発行には証券発行のプロである証券会社が全体を統括しています。こうした立場にある者をアレンジャーと呼んでいます。証券化の現場には不動産会社や銀行・信託銀行、不動産専門のコンサルタント会社がプレーヤーとして参加します。不動産はもちろん、金融、法務、税務などの専門的な知識が不可欠で、必要に応じて弁護士や会計士、不動産鑑定士など、より専門的な領域の知見を持つ関係者と交渉します。こうした専門家を束ねて証券化に必要なSPCを組成することがアレンジャーの最も重要な仕事です。

証券化商品ができた後は、投資家に対して募集・販売を展開します。証券の世界でアンダーライティング(引受業務)と呼ばれるもので、証券会社が得意とする分野です。販売手数料を稼ぐ証券ビジネスですが、売れ残れば証券会社が自ら購入しなければなりません。
不動産証券化における利害調整役として司令塔の役割があり、各メンバー間でトラブルなどが生じた場合は、アレンジャーが矢面に立って業務の進行にあたる必要があります。

AMとPM

アセットマネージャー(Asset Manager=AM)は、証券化される不動産を探して買い付け、一定期間の運用後は売却し投資家に配当を支払うまでの業務に携わります。投資家に対してどの物件にどれだけ投資すればいいか。またどのタイミングで売却すれば最も良い収益が出るのかを検討して実行します。

運用対象となる不動産物件を探し、売り主との交渉や資産査定、銀行借り入れの交渉などにあたります。証券化が完成すると、物件の価値が向上するような施策を展開します。賃貸ビルならばテナントが常に満室状態になるよう稼働率の向上や賃料の改善にも取り組みます。投資家への配当金の分配や決算情報開示など投資家に対する運用報告もAMの重要な仕事です。最終的には物件売却があります。

一般的には、顧客の資産を預かって運用しているので資産運用会社ともいわれています。証券会社や信託銀行系列の「〇〇アセットマネジメント」「△△投信(投資顧問)」「□□投資信託委託」といった社名が多く見られます。

不動産証券化に欠かせないAMとPM

AMの大切な仕事の一つにプロパティマネージャー(Property  Manager=PM)への業務指示があります。プロパティとは財産あるいは資産、物件の意味で、不動産の管理に関わる人や会社のことです。その仕事は①リーシング➁テナント管理③請求出納④建物管理――の4つの業務があります。

リーシング業務は賃貸収入を支援すること。賃貸ビルの稼働率を上げるために賃料の相場を調査したりテナント募集の企画立案をしたりして入居希望者と賃貸契約を結びます。テナント管理はビルの所有者に代わって顧客との窓口役になり、転居の際の解約や契約更新などに対処します。テナントの動向をいち早くつかんで退去・転居の回避や増床の提案、家賃の減額などにも対応します。請求出納業務はテナントに対しては賃料請求事務と入金の確認、ビル所有者に対しては月次管理資料の作成やテナント運営における予算管理を行います。

建物管理業務は、ビルの日常的な点検から法定点検、清掃などビルの維持管理を担います。賃貸オフィスなどの不動産物件は美観や下水道・電気・ガス、ボイラー・空調などビルインフラの劣化に対して絶えず厳しい目で管理しなければなりません。劣化を食い止たり改善しておくことは、資産価値の維持にもつながるだけに大事な仕事です。

これら4つの業務に関して、その多くは証券化における司令塔であるAMが外部の会社に委託して代行してもらう方式がとられています。リーシング業務は不動産仲介会社、ビル管理はビルメンテナンスの専門の会社などが担っています。