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TKCコラム

知っておきたい土地活用の基礎知識④
不動産証券化を活用する

不動産の証券化は、企業の財務改善に力を発揮する不動産の有効活用策のひとつですが、比較的歴史の浅い分野だけに馴染みがないかもしれません。関与先様にとって重要な経営資源である不動産の証券化をご紹介します。

米国の住宅ローン債権が原型

証券化とは、土地やビルなどの切り売りできない資産を小口の有価証券として発行し、資金を調達することです。不動産が持つ価値を背景に資金を集めるので、銀行融資と比べて調達コストを低減できるメリットがあります。
証券化は1970年代の米国で住宅ローン(債権)の転売によって始まった、と言われています。金融当局は銀行が長期の貸付債権を保有するのは経営上リスクが高いと判断しました。国策としてマイホームを推進するには、銀行が健全経営を維持する必要があると考えたからです。そこで政府系の金融機関である住宅金融抵当公庫が銀行から住宅ローン債権を多数購入してファンド化しました。国の信用で銀行の住宅融資を支えたのです。

我が国では不良債権処理時代に一役

国内では1980年代後半、バブル景気で地価が高騰して土地神話が生まれました。銀行は土地を担保に次々と融資を実行。企業は保有不動産を担保に巨額の貸付金を得て、ホテルやゴルフ場などを次々と建設していきました。しかしバブルが崩壊し景気が低迷すると、企業は巨額融資の返済に窮して経営危機に陥り、銀行は担保の土地を売って融資の焦げ付きを埋め合わせようとしますが、土地神話の崩壊で地価は暴落し、売るに売れず困り果てました。

日米の不動産証券化事情

そこで国は、不良債権処理のために銀行が保有している土地担保付きの貸付債権を買い取る組織「共同債権買取機構」を1993年に設立。機構が不良債権を買い取るのですが、実際は不良債権を機構に持ち込んだ銀行が購入資金を出す仕組みなので、バランスシートから不良債権を取り外すにすぎない会計処理、という批判が出ました。

買取機構の本当の目的は、集まった不良債権の売却。そこで出てきたのが不動産の証券化です。銀行は機構に不良債権を売却して返済困難になった貸付債権をバランスシートから切り離しました。国は売れない不動産の売買を活性化させる狙いから2001年に不動産の流動化策を実施、新たな市場を作りました。これが不動産投資信託、いわゆるJリートです。Jリートの創設は銀行の不良債権処理が引き金になり、不動産証券化は、銀行の不良債権処理に一役買ったのです。

「持たざる経営」 会計変更、ROE重視も

バブル崩壊以降、不動産は必ずしも保有価値のある資産ではなくなり、時には企業価値を減らすリスク資産になってしまいました。不動産を保有して企業活動を展開する「持てる経営」から、「持たざる経営」に転換する企業が増えるなど、土地に対する考え方が大きく変わりました。
減損会計の導入も、不動産保有の考え方に変化を与えました。2005年4月から固定資産の取得価格からの下落分(減損)を損失計上するよう義務付ける減損会計が始まりました。目減りした分の固定資産は税務上損金扱いにならないので、売却して損金計上し土地保有のリスクを減らしたいと考える企業が増加します。
また、少ない資本(資産)でより多くの収益を上げることが企業価値向上に繋がる時代になり、固定資産を極力持たない企業マインドが醸成されるようになりました。ROA(総資産利益率)やROE(株主資本利益率)が注目されていきました。経営環境の変化が土地保有に対する考え方を徐々に変えさせ、企業が資産を手放す時代に入ってきたのです。

バブル崩壊後に不動産に対する考え方が変化

土地や建物などの固定資産を売却すれば、バランスシート上の資産はその分除かれます。利益は横ばいでも資産が減れば効率的な経営をしていることになり、より少ない資本でより多い利益を上げていることになるからです。いわゆるオフバランスの手法が各社で盛んに用いられていきました。しかし土地や建物はそう簡単に売れるものではありません。そこで単純売却ではなく不動産を小口化して証券として多くの投資家に買ってもらう、証券化の手法が出てきます。

証券化には資金の調達、運用の両面がある

不動産証券化には、資金を調達することと運用することの2つの側面があり、調達面では、より低コストで資金調達できるメリットがあります。銀行の法人融資は、不動産担保や信用力(返済能力)を担保に融資を受けますが、証券化の場合は土地や建物などの物件自体が持つ収益力が担保になり、資金を調達します。そのため業績が思わしくない時でも、保有する不動産の価値が高ければ、より多く資金を調達できるメリットがあります。

運用面は、投資家から見た不動産証券化を指します。不動産の小口化は投資家にとって最大のメリットです。個人投資家が不動産という値の張る対象に投資するのは限界がありました。規模の大きいオフィステナントや商業施設への投資は、一般の個人投資家には実質不可能でしたが、証券化によって可能になり、情報開示なども進んで投資リスクも従来に比べて低下しています。