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TKCコラム

地方活性化の切り札となるか、「全国二地域居住等促進」

国は、注目を集める二拠点居住を推進するために、2021年3月、阿部守一長野県知事を会長とする「全国二地域居住等促進協議会」を発足させ、「二地域居住等関連施策」を公表しました。

高まる地方での暮らしへの関心

これまでの二地域居住は、平日は都心で仕事をして、休日は地方で地域活動を行うといったイメージでしたが、今回の施策は、テレワーク等の普及による「新しい二地域居住」という、多様なライフスタイルを実現する手段として提唱されています。
国が「二地域居住」を促進している理由として最も大きいのは、東京一極集中と少子高齢化の問題でしょう。日本全体でも、少子高齢化が進むなか、多くの若者が地方から東京圏に流入し、地方では、さらに高齢化が進んでいます。地方都市においては、街を活性化させ、人口減少問題を解決することは、喫緊の課題となっています。
2020年からの新型コロナウイルスの感染拡大は、この問題に対する注目を一気に高めました。そして、テレワークが浸透し、通勤する必要が減少したため、広くて生活のしやすい場所や家を求める人が増えました。
「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた『ワーケーション』という言葉も生まれ、リゾート地などの自然豊かな環境でゆったり仕事をするスタイルも少しずつ広がりを見せています。

働き方や住まいに対する価値観は、多様化しており、様々な居住スタイルを選択する人が増えていますが、新型コロナウイルスの感染拡大は、この価値観の多様化を一気に加速させることになりました。
実際に、内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(令和2年6月21日)によれば、今回の新型コロナウイルスの影響下において、特に20歳代、30歳代で地方移住への関心が高まっており、20歳代を地域別にみると、特に東京都23区居住者で地方移住への関心が高まっているようです。
また現実においても変化が起こっているようです。総務省の「2021年の人口移動報告」によれば、東京都の「転入超過」は、過去最少を記録しました。東京23区に限れば、新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークが増えたことなどにより、初めて「転出超過」となりました。
東京都では昨年1年間で42万167人が転入し、41万4734人が転出しました。月別で見ると、3、4月以外は転出が転入を上回り、東京23区では1万4828人、転出が転入を上回りました。

国は多様な二地域居住等を推進

国はこうした状況をふまえ、二地域居住等を推進する様々な施策を打ち出しています。
東京一極集中の是正や地方創生、関係人口の拡大はもちろんのこと、多様なライフスタイル等の実現、地方での豊かな自然・生活環境、自己実現、地域コミュニティへの参加や社会参画・協働、ふるさと回帰等、さらには、災害リスクの回避等も施策の目的として掲げています。なかでも代表的な施策を紹介します。

全期間固定の住宅ローン

住宅ローンに対する多様なニーズに対応するため、証券化の仕組みを活用して、民間金融機関による全期間固定金利の住宅ローンを支援します。セカンドハウスの取得でも利用可能で、借入時に総返済額が確定するため、安心感につながると言われています。

空き家の活用

また、全国で問題になっている空き家の利活用も推進しています。空き家・不良住宅の除却、空き家の活用、関連事業など総合的な空き家対策に取り組む市町村に対し支援を行います。その一環として、国土交通省では、各自治体が個々の空き家バンクに掲載している空き家等の情報について、簡単に検索できるよう「全国版空き家・空き地バンク」を構築しました。
その結果として、平成30年1月と比べて、令和2年12月末時点での参加自治体数は約1.8倍、物件掲載件数は約4.7倍まで増加しました。自治体へのアンケート調査等によると、約6,500件の物件が成約済となっているようです(令和2年12月末時点)。

テレワークに関する支援

そのほかにも、「地方都市の中心市街地の生活圏等におけるテレワーク拠点施設(コワーキングスペース等)の整備」「観光等地域資源活用に取り組む地区におけるワーケーション拠点施設(コワーキングスペース等)の整備」「老朽ストックを活用したテレワーク拠点やグリーン・オープンスペース等の整備に対してファンドを通じた金融支援」「小さな拠点を核としたふるさと集落生活圏形成推進事業」などテレワークに関する支援を行います。
また、国土交通省だけではなく、「内閣府地方創生推進局」からも、「デジタル田園都市国家構想推進交付金」「地方創生テレワーク推進事業」「地方創生移住支援事業」などの支援が発表されました。

「全国二地域居住等促進協議会」がWebサイトで情報提供を開始

「全国二地域居住等促進協議会」には、全国の地方自治体601団体をはじめ、多くの移住等支援団体、住宅・不動産関係団体などが参加しており、二地域居住等の推進に係る様々な施策や事例等の情報の交換・共有や発信をするために、Webサイトを立ち上げました。(https://www.mlit.go.jp/2chiiki/index.html
今後も、こうしたWebサイトを通じて、様々な連携、支援を発表していく予定となっているようです。