社外取締役のメッセージ

「生成AI」の活用で新たな価値を創出する時代に入った

当社のDXの進展には目を見張るものがあります。それを表しているのが今回の「DXアニュアルレポート2025」であり、成果に限らず、将来への思いや課題についても積極的に取り上げています。「DX活用による将来のあるべき姿」が意識されているからこそであり、事業の成長・進化、働き方改革、人財強化などに焦点を当てた内容は年々充実度が増していると確信します。私が言い続けてきた「社員の意識改革」が確実に進んでいることの証です。

「DXアニュアルレポート2025」で特筆すべき点は、

（1）大阪・関西万博でのBIMの最大限活用。①電力館でのたまご状の類を見ない3次元曲線の設計、施工、②null²（ヌルヌル）のフィジカルとデジタル、硬質さと柔らかさの共存、③いのちの遊び場クラゲ館のトラス屋根鉄骨躯体設計、など万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」に響いた技術といえます。
（2）生成AIの活用が本格的にスタート。①住宅部門での「AIプランコンシェルジュ」は、要望合致度によるプランの絞り込み等でお客様とのつながり強化、他社にない体験価値を提供、②バックオフィスにおいても社内情報の検索、議事録作成等にAIを駆使しています。
（3）グループ会社のDXの取り組みが拡大。11社（うち、米国3社・豪州1社）の状況が可視化されています。重要なのは、単なるシステムの刷新ではなく、DXを「イノベーション」「オペレーション・エクセレンス」「パートナーシップ強化」等に位置付けていることです。

さらに、映像を駆使することで取組みを分かりやすく理解してもらい、将来の姿（夢）をイメージしやすいように工夫を凝らしているところです。

社外取締役　吉澤和弘
日本電信電話公社入社後、株式会社NTTドコモ代表取締役社長。
現在は株式会社NTTドコモ相談役、ソニーフィナンシャルグループ株式会社社外取締役、パーソルホールディングス株式会社社外取締役。

今後、DX推進にはAIの活用が避けて通れません。AIは企業の競争力を分かつ存在となりつつあります。生成AIは日々賢くなり進化しています。例えば、AIエージェントとして「AI社長」や「AI役員」なるものも出現しています。また、建物のデザインや映像・音楽の生成、プログラミング（コーディング）もこなし、難解な大学入試問題も解いてみせます。

当社でも、上記（2）のような取り組み、活用が進んでいますが、私は生成AIを「（超）優秀な部下（アシスタント）」と捉えています。皆さんの横にいて、お客様接点での商談、デザイン、設計、施工に関わる情報収集、分析やプランの現出、そして何といってもそれらの高速化を実現します。もう少し時間が進めば、

経営者（プロジェクトリーダー）の分身として仮説の検証サイクルを高速に回す
投資案件レビューやそのリスク分析を高速で回し、AIとしての解決策、施策を提案する

ようになります。経営、事業の生産性が上がり作業の効率化に資することになりますが、当然のことながら、最終確認・判断は人間が行うといった運用が求められるのは言うまでもありません。

また、AI活用によるDX推進は、人口減少による人手不足や技術者不足を補うこととともに、今までにない新しい価値創出につながります。それはお客様の体験価値の向上や全く新たな感動・歓びにつながるということです。

最後になりますが、生成AIは万能ではありません。また、AIも最終的には普遍化する、つまり同質化が起こり得ます。引き続く革新や進化は、人が生む「異質化」にあるのではないでしょうか。生成AI活用によるDX推進も多様性（ダイバーシティ）経営の一つの柱であって、多様な人財の集結・活躍こそがイノベーションの源だと信じています。当社のイノベーションに少しでも貢献できるよう注力したいと思います。