大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

DXアニュアルレポート2025

特集

大阪・関西万博

いのちの遊び場 クラゲ館

目的、ビジョン

当社が協賛し、建物の基本設計と全体監修に携わった2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のシグネチャーパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」(*1)(*2)は、中島さち子プロデューサーのもと「いのちを高める」をテーマに、誰もが内に秘めているいのちの輝き(創造性)をひらく場と活動を用意しています。
その建築はパビリオンとしての性質上、半年という会期を経て解体されるものですが、「プレハブを建設し再利用する」ことや鉄などを「素材としてリサイクルする」という従来の仮設的概念に留まらず、一層の価値を付加して「サーキュレーション」する、別のカタチに「トランスフォーム」するといった、【いのち】のような建築のあり方を考える機会でもありました。

(*1)【クラゲ館紹介】いのちの遊び場 クラゲ館 - 2025年日本国際博覧会テーマ事業 「いのちを高める」
(*2)【大和ハウスの取組動画】(ダイジェスト版)【大阪・関西万博】大和ハウスグループの挑戦 「いのちの遊び場 クラゲ館」

図1:クラゲ館外観写真

取り組みの全体像

プロデューサーの中島氏と建築家の小堀哲夫氏によるコンセプトデザインはとても生物的・独創的でした。
そこで、BIMを建物計画段階から導入し、ほとんど同じ部材のない有機的形状の鉄骨躯体をつくりました。さらには、それらの形状や座標の属性をデータ管理し施工管理に活用すると共に、解体時や再建時のトレーサビリティを確保しました。

図2:トラス屋根 鉄骨躯体設計図

図3:トラス屋根 ナンバリングによる施工管理

一方で、建築部材の再利用(中古部品)についての法的な扱いをどうするかという建築行政上の課題や、そもそも移築受け入れ先をどのように見つけていくのか、リユースを前提とした丁寧な解体の費用や方法、再建のタイミングにより生じる保管場所・運送方法をどうするのかなど、多くの課題が見えてきました。

そこで、役務協賛の形で博覧会協会と協力し、万博会場全体で取り組む「万博サーキュラーマーケット ミャク市!」(以下:「ミャク市!」)(*3)というWEBプラットフォームを構築しました。(*4)従来の大量生産・大量消費を前提とした直線型経済(リニアエコノミー)に対し、リユースと資源の循環を重視する循環型経済(サーキュラーエコノミー)の実現は、当社の創業100周年に向けたロードマップ(*5)にも明記され、万博における重要課題の一つでもあったからです。

「ミャク市!」は、建物の移築や建材・設備のリユースに特化したフリーマーケットのようなサービスです。万博で使用された建材・設備がWEBサイト上に出品され、公募により購入者が決まった商材は丁寧に解体・一時保管され、希望する購入者へは運送業者が紹介されます。

既存のオンラインマーケットサービスとの決定的な違いは、建物という性質上、解体/運送/保管などが大規模かつ高い専門性が必要という点です。これらの課題を解決するため、建築に精通した運送業者や保管業者と連携し、リユース解体から運送までのサービス体制を構築しています。

(*3)【ミャク市! ホームページ】万博サーキュラーマーケット ミャク市!
(*4)【大和ハウス工業による「ミャク市!」への協賛】2025年日本国際博覧会 「リユースマッチング事業」への協賛が決定
(*5)【大和ハウスのサステナビリティ経営の考え方】Road to 2055 と マテリアリティ

図4:万博サーキュラーマーケット「ミャク市!」概要図

取り組みのタイムライン

2022年からクラゲ館の屋根について、BIMを用いて3D検証し設計を行いました。(*6)
同年から「ミャク市!」構想に関する打合せを博覧会協会と共にスタートしました。

2023年には、BIMデータをもとに建物部材を作成し、ナンバリングを行いました。2024年2月からはそのBIMデータを基に現地での組み立てが始まりました。

2025年3月から「ミャク市!」の運営が開始されました。
例えば、クラゲ館(屋根)の購入が成立した場合、解体・運送の後、BIMデータを用いた再設計・再組み立てが可能です。

(*6)【昨年度DXアニュアルレポート】[大阪・関西万博] いのちの遊び場 クラゲ館

図5:クラゲ館(屋根)と「ミャク市!」の取り組み概要フロー

効果、今後の展開

「ミャク市!」では、建材や資材に二次元コードを付けて利用履歴や素材情報を付与するDMP(デジタルマテリアルパスポート)という仕組みを導入しています。
リユース資材を単なる中古品ではなく「ストーリーのある資源」として扱い、その価値を高めるという思想です。(*7)

しかし、出展者の入力情報が不足するなど、プラットフォームの設計とその運用にはいくつかの課題が浮き彫りになっています。
その解決には、建設バリューチェーン全体のデジタル化や部材再利用に関する法整備によって情報入力を促すための運用方法を確立するなど、マーケット全体における官・民の総体的な取り組みが必要になるでしょう。

万博をいわば社会実験のチャンスととらえ、未来の循環型経済(サーキュラーエコノミー)の実現に向けて当社が挑戦した「ミャク市!」は万博終了後に閉鎖されますが、今回得られた成果と知見が活かされ、次世代の仕組み・枠組みづくりが社会全体のムーブメントとして継続されていくことを期待しています。

(*7)【DMP関連インタビュー】"ボルトから大屋根リングまで"をリユース――ミャク市の仕掛け人3人が描く壮大な循環型経済の未来

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