DX推進を支える組織体制
デジタル戦略部では、第7次IT中期計画の施策の一つとして、IT投資の最適化を目指し、ITコストの可視化に取り組んでいます。これまでは利用部門にとって、「負担しているITコストが適正かどうかわからない」「IT投資を積極的に進めてよいのか判断できない」といった課題がありました。そこで、利用部門に対してデータに基づいた説明を行うために、ITコスト全体の可視化とITコスト構造の可視化を進めています。また、データ分析を活用してITコストの合理化・最適化を図り、運用費の継続的な削減と新規開発投資の最適化を実現します。
ITコストの可視化を実施するにあたり、ITファイナンス高度化の方法論であるTBM(*1)のフレームワーク(図1)を適用し、ITコストをコストプール、ITタワー、アプリケーション、利用部門の4層で分類します。これにより、財務、IT、ビジネスの3つの視点(図2)で可視化され、単なる費用の分類ではなく、ビジネス価値やIT運用の効率性を考慮した詳細なコスト分析が可能となります。
分析したデータをもとに「ITコスト最適化」「利用部門との関係性改善」「IT予算と統制」を実施します。ITコスト最適化では、無駄なコストを削減し、効率的なIT投資を行うための具体的な改善策を施します。利用部門との関係性改善では、データに基づいた説明を行い、部門間での理解と協力を促進します。IT予算と統制では、予算管理を強化し、最適なIT投資を目指します。
これらの取り組みにより、保守・運用費の継続的な削減と新規開発投資の最適化を実現し、企業全体のITコストが改善され、効率的な運用と戦略的なIT投資が可能となります。
(*1)TBM:Technology Business Managementの略称。ITファイナンスプロセスの高度化を実現し、テクノロジー投資によるビジネス価値の最大化を支援するIT部門経営高度化のための方法論。
図1:TBMフレームワーク
図2:ATUMによる4層でのITコスト可視化
デジタル戦略部では、TBMの代表的ツールであるApptio(*2)を導入しました。2022年7月からPOC(概念実証)を行い、2023年11月から本番環境の構築を開始しました。2024年10月からデータの精度向上に取り組み、2025年3月にはデジタル戦略部におけるITコストをコストプール(図3)、タワー、アプリケーションの3つの分類で可視化できるようになりました。
(*2)Apptio:ITファイナンスの高度化を実現するSaaSソリューション
図3:コストプール別実績前年比較とコストプール比率
2025年7月現在、コストプール、タワー、アプリケーションの分類でITコストを可視化できるようになっています。しかし、可視化したデータの分析に多くの時間がかかっているため、分析の効率化を進めています。
今後は、ITコストの対象範囲を社内の他のデジタル関連部門へと拡大し、会社全体のITコストを可視化していきます。また、可視化したデータをもとに「ITコスト最適化」「利用部門との関係性改善」「IT予算と統制」を実施していきます。将来的にはグループ会社への展開も予定しています。