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コラム No.27-49

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第2回 「その場対応のロジスティクス」から「先を読んだロジスティクス」の世界へ株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 流通経済大学 流通情報学部 教授 矢野裕児

公開日:2020/05/21

「先を読んだロジスティクス」の世界へ

秋葉:これまでインフラについてお話をしていただきましたが、テクノロジーに関してはどのような取り組みをされていますか。

矢野:Society5.0(ソサエテイ5.0)という話もありますが、私がいつも言っているのは、「先を読んだロジスティクス」の世界にしましょうということです。今までは「その場対応のロジスティクス」でした。物流事業者は「今日持ってきてほしい」とまでは言わないまでも、今日注文があったら翌日の朝一番に届けるというのが普通でした。イレギュラーなことが発生しても、とにかく対応するのが現場力だとされてきました。その力を否定はしませんが、今までそこに頼りすぎていました。荷主のほうもそうですし、それだけを売りにしているような物流事業者もそうだと思います。
そうではなく、先を読んで、次にこういう作業が起きるだろうから、それに対して計画的・効率的にやっていくというかたちにすべきです。積載率が4割の世界はやはりおかしいわけです。
そういったことを直していくために、「先を読んだロジスティクス」を展開しなければなりません。そのための仕掛けがいろいろあります。AIやIoTなどは、全体最適を目指す世界ですから、そこで先を読んだロジスティクスをどんどん展開するべきです。ただ、AIやIoTを導入しさえすればいいかというと、それもまた違うと思います。

秋葉:計画しないと始まらないことがたくさんあるのに、それを放置しているのはどうかと思います。一口に計画といっても、数日くらいの近い計画もあるし、当然、10年、20年という単位の中での長い計画もあります。少なくともSCM(サプライチェーン・マネジメント)の観点からすれば、数字で物事を考えることが大事です。オペレーションが追従できないという意味で、一週間で考える難しさもあります。ZARAは3カ月くらいのサイクルでマーチャンダイジングし、2週間で商品を提供しています。ここから、2週間という期間が大きな成功事例になっています。2週間で回すことによっていろいろなところで無駄がなくなる、といったことが事実として起こっていますし、そうしたビジネスモデルも出てきました。その一方で、オンデマンドで明日、午後という話があるのは、無駄でしかないと思います。無駄でも価値になることもあるかもしれませんが、今は無駄なコストになってしまうほうが圧倒的に大きいのは明確です。そういった計画が全部あったうえでのことなのにもかかわらず、部分的なオンデマンドだけを求め続けることの難しさが起こっているのではないでしょうか。
これは、コンビニが24時間営業をやってしまった弊害でもあると思っています。24時間、コンビニは応えてくれますが、それを便利といってしまっていいのでしょうか。私たち世代は、セブンイレブンが朝7時から11時まで開いていることが画期的なことでした。それが便利なことだったのが、いつの間にかそうではなくなっています。
例えば、千葉の停電が起こった1カ月後、台風が上陸する可能性があるとなったとき、みんなが店の商品を買い占めました。このことで、「人間はわかっていれば行動する」ということが明らかになったと思いました。わかっていれば人間は行動するのです。夜9時に店が閉まる、朝は7時から開くと決まれば、それに合わせて行動するのではないでしょうか。商品も同様です。いつ行ってもあるということを前提にしているから、このような行動をしているだけで、今日はこれしかないけど明日になればくるとなれば、今日じゃなくてもいい人は翌日買うでしょう。そういったことがいろいろあると思うのです。計画しなくてよくしてしまったことの弊害が出ている気がします。こうした考え方も、AIやIoTで計画ができるようになるといった幻想が持たれているように思います。

矢野:いろいろなかたちの情報がすべて入ってきて、それを収集、分析し、バーチャルでシミュレーションして、リアルに戻すところまでできれば、一番いい状態です。それを否定はしませんし、将来はそうなればいいと思います。しかし、現実の物流の世界は、まずデータ化されていない、電子化されていないことが山ほどあって、それをどうするのかというところから始まります。一番怖いのは、AIやIoTの流行に乗ってやってみて、うまくいかずにやっぱりだめだとやめてしまうことです。昔のSCMと同じで、お金をかけて情報システムを入れたからといって、一番重要なデータが共有されなければ動くはずがありません。

秋葉:同じことが起きかねないですよね。ガートナーが発表した「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2019年」によれば、人工知能、AIの浸透はまだ先なので、この後必ず幻滅する場面があるのも事実です。先生がおっしゃるように、期待値だけで採用してガッカリしすぎると、本来やりたいことができなくなる可能性があります。私たちからするとそれが怖いですね。「データを渡したのにできない」「人工知能っぽいものを入れたのにできない」ということが起きてしまうのです。この「人工知能っぽい」というところがポイントです。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)のようなルールベースのものを人工知能と言う会社もあります。そもそも、人工知能を入れれば100点を取れるというのは幻想だということに気づかなければなりません。人工知能を使うということは、ある意味で割り切ったり、諦めるべきところを決めておく必要があるということなのです。

矢野:「先を読んだロジスティクス」にはいろいろな段階があると考えています。例えば、需要予測の精度が上昇することは、とても意味があります。ただし、全部の需要が正確に予測できる世界はあり得ません。レベルは上がっていきますが、全部ができるようになるわけではないのです。逆にいうと、加工食品でリードタイムを1日延ばすようなことも、現実に大きな効果があるので、結果的には先を読むことになります。あるいは、前工程の状況が後工程にきちんと伝われば、そのための準備ができますから、それだけでも当然変わるわけです。 ですから、「先を読んだロジスティクス」と一言でいってもいろいろなレベルがあって、それを積み上げていけばどんどん変わっていくのです。最終的にはAIやIoTの方向にいくにしても、いきなりではなく、ステップを踏みながらやっていかないといけません。そこをやらないとけっきょくは失敗してしまいます。最初は、電子化や標準化を連携して取り組むといったところから始めないと、いきなりAIを導入してもほとんどうまくいきません。
物流情報という言葉が簡単に使われますが、物流情報には階層がいくつもあります。物流インフラの情報もあれば、輸送機関の情報もあり、貨物輸送単位の情報、商品単位、商取引といった情報もあるわけです。いろいろな段階があって、それらが全部つながれば、ロジスティクスはまったく違う世界に変革しますが、実現は相当難しいのです。特に、インフラ、輸送機関の情報までは比較的管理しやすいのですが、例えば宅配便のトラックが動いていても、どのトラックにどの荷物が積んであるかまでは、現状ではリンクしていないのでわかりません。それぞれの商取引情報と貨物輸送単位の情報をリンクさせるのは、実際には非常に難しいのです。ケース単位で動いていればまだいいのですが、バラ単位になったら困難の極みです。しかし、現実の商取引ではそれをやらなければなりません。その情報をどうやってリンクさせるかは相当難しいのですが、それが実現すれば、今とは全く違った世界になるでしょう。

ルール・業務プロセスの統一化が急務

秋葉:秋葉:私は、商品の情報に対してプロフィールをつけたいですね。それはバーコードでは無理で、RFIDが少なくともケース単位で全部についていれば有効なのですが、未だに、「RFIDのお金は誰が負担するのか」といった話になってしまっているのが現状です。
通信の方法もいろいろありますので、なかなか統一ができません。この、一つに決められないということも物流に大きな影響を与えます。複数のやり方があると、物流に携わる人たちは複数に対応しなければなりません。そこでも無駄が発生します。物理的な箱だけではなく、通信のやり方、データの取り方も含めて統一化できないためにすべてに対応しなければならず、そこが非常に高いハードルになっています。
ダイワロジテックでもプラットフォーム化に取り組んできましたが、プラットフォームという言葉だけが先行しているので、○○プラットフォームといったとき、どの会社でも同じレベル感で作られているかというと実はそうではありません。同じレベルで競争していて守備範囲が違うだけであれば、どこかで横連携するか、最終的に全部を束ねるようなものを作れば済むのですが、そもそものところが違うので、くっつけたところで共通情報になるかわかりません。そのギャップを誰が埋めるのかが重要です。ロジスティクスは戦略であるならば、国として本気で考えるべき課題だと思います。私個人としては、企業間で当然競争するべきところはあるにしても、ルールは国としてきちんと決めてほしいと思っています。

矢野:私も共通化したほうがいいと思います。どこまでやるかいろいろ議論はあると思いますが、パレットの標準化、データ・伝票の統一化など、物流の分野ではほとんどのことが共通化、標準化できると思います。それともう一つ、業務プロセス、業務の流れの統一化をしてほしいですね。けっきょく、納品先ごとに要求することが違うわけです。納品先の要求を満たすために、このドライバーでないとできない、共同化できない、この車でないと持って行けないなど、おかしなことがおきています。業務プロセスを統一化すればいろいろできることがあります。完全に統一することは難しいと思いますが、ある程度類型化するなどやり方はあると思います。

秋葉:最近はだいぶ変わってきましたが、百貨店では専用値札になっていて、それを物流センターでつけるのです。それが共通の値札でいいのであれば、メーカーの値札のままでいいので余計なことをしなくて済みます。

矢野:今、あるファーストフードの企業で、作業の標準化を取り組んでいます。店舗に食材を持っていくとき、店舗ごとに条件が違います。当然1種類にはできないので、数パターンを作って当てはめていき、コストもそれで計算するというやり方で標準化を進めています。100%これでないとだめだというと難しいですが、少しでも標準化することによってコストダウンも可能です。そこで作業が平準化したり、配送日数を減らすこともできます。ですから、業務作業の標準化についての議論が必要です。日本はとにかく変なところでカスタマイズしようとしますから。

秋葉:人と違うことに価値があると思っている節があります。さらに、それに応える作業会社も価値だと思われているところがあります。これはシステム会社にも一因があります。カスタマイズするとその分お金がもらえるので、売上数字という意味でいくと、それで達成することもできるわけです。しかし、そんな時代も終わってきています。今は変えなくてもいいという流れになってきていて、「標準でここまで用意しているので、これで運用できますか」という議論になってきています。
海外ではソフトウェアをパッケージで入れますが、さすがに、日本でそのまま使うのは厳しいかもしれません。お客様ごとではなく、日本標準のようなものがあるのであればそれに合わせたり、さらに日本標準の中で、業種等によって何パターンかに分かれた中で選ぶのであれば選びやすいと思います。アメリカやヨーロッパでうまくいったものに合わせるというのは、さすがに乱暴です。それは、物流センターの中のオペレーションでも一緒です。

矢野:物流は標準化に向かっていると思いますか。

秋葉:メーカーのほうが意識は強いと思います。なぜなら、標準化がしやすいということも一つあります。箱に詰めて出すので、メーカーは商品スペックの話をしていればいいのですが、それが小売りになった時、「消費者に買ってもらうためにどうするか」という観点が出てきます。値段のコントロールもありますし、お店での並べ方など、ネット上であろうとリアルな店舗であろうと、いろいろなところで違いを出したくなるのは事実だと思います。
実は今、計画的というところで、食品業界で効果が出せるのではないかと考えています。メーカーや小売にはいろいろな会社がありますが、食品の大手の卸というレベルになると数社になります。あくまで仮説ですが、大手であれば協業しやすいと思いますので、そこを利かせて計画的に進めたり、そのための標準化であれば考えやすいと思うのです。

矢野:情報システムの関係者から、「なぜ欧米でできて日本でできないのか」と聞かれることがあります。しかし、トイレタリーなどでは標準化がある程度進んでいますが、食品は圧倒的に小売店もメーカーも多い。アイテム数も多く、メーカー、卸、小売店と流れているわけです。海外であれば上位小売5社でだいたい6〜7割を売り上げていますが、日本では5社で3割程度です。小さいところも地方スーパーも頑張っていて、力もあって、逆に、特に総合スーパーなどが苦戦しています。そういう状態の中で、同じような仕組みで対応することができません。
たとえば、日本のスーパーでは醤油ひとつにしても多品種が並んでいます。外資系スーパーでは、1種類しかないところもあるほどです。「選ぶのは1種類なのに、なぜ何十種類も置くのか」という意見もありますが、良い悪いは別として、文化的な側面もあると思います。今の、これだけメーカーがあり、卸があり、小売りがあるという構造を残しながら食品のサプライチェーンを作り上げるのが望ましいといえますが、難しい面もあります。根本的に違うのですから、そこの中で作るとなると、一番弊害が出るのは物流で、そこをなんとかしなければなりません。昔は卸不要論がありましたが、今はそんな話は出てきません。ロジスティクスのところは卸がやるしかないと誰もが思っているわけです。そういう意味では卸を軸に、標準化、情報共有の議論をし、作り上げていけば、少しは何とかなるのではないかと思っています。

秋葉:小売りにおいても、ネットショッピングは別にして、お店に並べないと商売できませんので、品出しにものすごく時間がかかっています。品出しに時間がかかっているのに、箱のまま売ることはしません。ヨーロッパでは買いものに来るお客さんの層が違うので、高級スーパーではきっちり並んでいますが、売っている商品は高い。一方、安いスーパーに行くと、パレットに載せたまま箱を開いていたりします。日本の場合、いろいろな人が来る前提の中で、ヨーロッパの高級スーパーのようにきちんと並べています。このこと自体どうなのでしょうか。今、人が足りません。ドラッグストアでも、朝、パートさんが来て商品を並び終える前に、お客さんが入って来て、来るたびに一回よけます。人手不足も含めて、今のやり方が必ずしも良いとは皆さん決して思っていません。そういう意味で、見直す良いチャンスではあると思います。そのとき、小売店のオペレーション負荷が上がるような変え方をしてしまうと当然反発はありますが、少しでも改善されたり、あるいは悪くならずにコストを下げることができれば、反対されないのではないかと思います。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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