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コラム No.27-5

サプライチェーン

秋葉淳一の「物流は経営だ」 Vol.5 多様化する物流ニーズ アパレル企業が求める物流施設

公開日:2016/08/31

マルチ構造ブームの功罪

物流施設の巨大化、大型化が加速しているが、現在のように商材や業界によってニーズが非常に多様化している状況において、こうした巨大化する建築構造が本当にニーズに合っているのかというと、私は少々懐疑的だ。
様々なマテハン機器(Material Handling:運搬や荷役作業を助ける機器)の搬入が可能なように、それなりの耐荷重と天井高の箱を建てておけば後は何にでも使えることには間違いないが、巨大化、大型化が本当にニーズにマッチしているのか、データをしっかり分析する必要があるのではないだろうか。
たとえば、アパレル雑貨の物流センターを考えてみると、高い天井高は不要であり、マテハン機器を使う場合にもさほどの耐荷重は必要ない。したがって、荷物を入れても天井までにかなり無駄な空間が生じる。本来は必要のない機能を持たせるために建物自体を巨大にしているので、柱や杭も増える。こういう無駄があちこちで起きているように見受けられる。
さらに立地についても、駅の近くにつくるメリットが軽視されている。いくら土地代が安いとはいえ駅から遠い施設に人は集まらない。
特にアパレル通販の会社は駅に近いところを求める。撮影の際にモデルやチームメンバーを集めるにしても、本社からスタッフが行くにしても、駅から近いか遠いかで、利便性はまったく変わってくる。首都圏ならば、埼玉県や茨城県などで駅から徒歩10分以内の場所に物流施設を建てれば、借り手に困ることはまずないだろう。

アパレルにはアパレル向きの箱がある

発想を転換して、アパレル雑貨専用の都市型で小綺麗な外観の物流センターを駅の近くにつくれば、若い女性たちも興味を示すのではないだろうか。
たとえば、そこで仕事をしている若い女性が「仕事は何をしているの?」と聞かれたとき、「物流の仕事」ではなく、「アパレル関係の仕事」と答えられるような建物だ。そうした心理的、イメージ効果のある魅力的な建物が建てば、周辺の活性化にも少なからず影響があるだろう。
ある大手通販企業では、内装の壁をボルダリング仕様にしたり、内部にカフェを併設したりした、新しい物流センターを近々つくるという。こうした視点の有無がビジネスチャンスの差となって表れるのは自明であろう。
アパレル業界の場合、他のジャンルに比べても流行り廃りのスピードが速く、逐次ニーズに応えていく難しさはある。しかし、物流軸から見ていくと、人口に応じた相応の動きはあるものの、全体の物量からすると流行による影響はさほどでもない。そこを気にするよりも「こんないい施設に商品を保管できる」というメリットのほうが大きいはずだ。

物流施設は単なる倉庫ではない

こうしたことを踏まえると、これからのアパレル関連企業などは、恵まれた立地に物流センターを構える必要性が出てくるだろう。
さらに、膨大な店舗数を持つ企業では、各店が抱える在庫量のほうが物流センターの在庫量よりも多くなっており、この現状を緩和するために、都心部の物流センターを店舗のバックヤードとして活用していこうとするだろう。
十数年前は、店の売れ筋の状態を見て、生産国のほうでアソートを組んで店に届ける、それが理想の形態とされていた。当時はまだ、それくらいのスピード感でよかったということでもある。

こうした戦略の変化を見ると、物流施設に対する概念にも明らかに変化が出てきているといえるだろう。
しかし、そこから十数年が過ぎて、海外の本当の意味でのファストファッションがどんどん日本に進出してくると、生産国で組んだアソートをそのまま日本の店に送っていたら、流行の流れに間に合わないのである。
さらに、ネットでの売り上げ数字が大きく増えてくると、物流センターにあった在庫品がある瞬間からネットでの売れ筋商品となるという事態も起こりうる。すると、その売れ筋商品を店のほうにも補充しようとなるのだが、こうなったとき、店舗のバックヤードという存在をどう捉えるべきか。当然、在庫管理のためのスペースを広く持っておくのは無駄ではないのか、という考えが出てくるわけである。
その結果、消費地にどれだけ近いところにお店のバックヤード=物流センターを構えるか、ということが重要な経営戦略となっていく。今や、物流施設とは、そういう位置付けのものになりつつあるということだ。

ニーズに合った活用法を考える

あるアパレル通販企業の例を挙げると、本社は八丁堀で、物流センターは市川塩浜の施設を借りている。その施設の中にはスタジオやカフェもあり、発送業務だけではなく、マーチャンダイザーなども仕事をしている。中に入ると物流センターという感じがまったくしない。
まるでアパレルの企画部署のような雰囲気のスペースになっていて、借主の企業側がもはや物流施設を倉庫とは捉えていないことがよくわかる。完全にバリューチェーンの中の一つになっているのだ。
こういうアパレル雑貨系の専用物流センターを見た後で、現在の大型化した物流センターを見ると、非常に典型的な物流センターに感じることは否めない。とはいえ、時代が変わったから、すべてがこうなるべきということではない。
たとえば、飲料など重量のある商品を扱うならば、フォークリフトなどを使って搬出入を行う必要があるため、やはり天井高があって、たくさん積めて、保管効率を上げられるマルチの物流センターがいいという判断になるだろう。
一方で、アパレル雑貨やメガネ、靴など、ネット通販でもどんどん売れていくような細かい商品の場合は、必ずしも最新鋭の大型の物流施設が機能するわけではないということを指摘しておきたい。

トークセッション ゲスト:流通経済大学 流通情報学部 教授 矢野裕児

トークセッション ゲスト:アスクル株式会社 CEO補佐室 兼 ECR本部 サービス開発 執行役員 ロジスティクスフェロー池田和幸

トークセッション ゲスト:MUJIN CEO 兼 共同創業者 滝野 一征

トークセッション ゲスト:株式会社ABEJA 代表取締役社長CEO 岡田陽介

トークセッション ゲスト:株式会社ローランド・ベルガー プリンシパル 小野塚 征志

トークセッション ゲスト:株式会社アッカ・インターナショナル代表取締役社長 加藤 大和

スペシャルトーク ゲスト:株式会社ママスクエア代表取締役 藤代 聡

スペシャルトーク ゲスト:株式会社エアークローゼット代表取締役社長兼CEO 天沼 聰

秋葉淳一のロジスティックコラム

トークセッション:「お客様のビジネスを成功させるロジスティクスプラットフォーム」
ゲスト:株式会社アッカ・インターナショナル代表取締役社長 加藤 大和

トークセッション:「物流イノベーション、今がそのとき」
ゲスト:株式会社Hacobu 代表取締役 佐々木 太郎氏

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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