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コラム No.27-69

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第1回 物流を知り、理解することから始まる株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 学習院大学 経済学部経営学科教授 河合亜矢子

公開日:2022/02/10

理論と実務、二つの視点から学生に伝えたいこと

秋葉:今回は、学習院大学経済学部経営学科の河合先生にお時間をいただきました。今まで学生を見てきた先生のご経験から、大学生の物流やロジスティクスに関する認識、就職活動に対する考え方について、また、先生はサプライチェーンマネジメントを研究テーマにされていますので、物流の標準化をどう進めていったらいいのかというお話についてもお聞きしたいと思います。 まず伺いたのは、私を学習院大学に特別客員教授として招聘していただいたのが河合先生だったわけですが、なぜ私を招聘しようと思われたのですか。

河合:本校の経営学科では、マーケティングの授業は非常に人気があります。マーケティング、人材育成、企業戦略が三大人気ですが、そこだけで経営学を学んだつもりになって、実際にどうやって進めるのかを知らないまま社会に巣立ってしまうと、社会にとってもよくありません。オペレーションのところをしっかり学んでほしいというのが一番の動機でした。 私の授業では、主に2年生が履修する専門科目でオペレーションズマネジメントの話をします。そこで面白いと思った学生、理論的な背景を少し勉強した学生が学ぶアドバンスト科目として、実務と理論の両方の目線を持った方に話をしてもらいたいと考えると、秋葉さんが適任だと思いました。秋葉さんは実際に経営をされています。いくらオペレーションの効率が良くても、いくら良いシステムを作っても、お金を稼ぎ出すことができなければ意味がありません。

秋葉:私が最初の授業で学生に言うことは、学問は専門の先生に教えてもらうとして、私の役割は、世の中、企業の中で、どういう発想で、どうやって事業を興して利益を上げるかについて話をするということです。授業は「経営とロジスティクス」と「オムニチャネル戦略」を二本柱として、それに付随するかたちで企業分析も入れています。 企業分析にもいくつかの方法があります。一つは有名な企業の分析で、もうひとつは、自分で起業をする場合を想定するものです。例えば、自分たちで雑貨屋をやるとして、雑貨屋の定義から自由に考えます。菓子屋や居酒屋の年もありました。居酒屋を定義してもらったら、「居酒屋とはお酒が出る場所であればよい」と考える学生もいれば、「大人がくつろげる空間を提供するのが居酒屋だ」「全国各地の美味しいものとお酒があるのが居酒屋だ」と考える学生もいます。次に、それを商売にするにはどうしたらよいか考えさせます。そもそも材料はどこから仕入れるのか、どうやってデリバリーするのか、ECで売るためには何をすればいいのか。そういったことを何サイクルか回していくと、最終的にはそれなりのストーリーが出来上がります。 また、起業をして、成長させて、老舗になったときにまたイノベーションを起こすという企業のライフサイクルがあります。そのライフサイクルのステップごとにゲストをお呼びして、学生とディスカッションをしました。 学問を学びつつ、現実で起きているところが、学生の頭の中でクロスしていくと面白いですよね。アドバンストとおっしゃいましたが、レベルが高いというより、実践的という意味でのアドバンストを私はさせていただいています。

河合:学習院大学の学生はとても真面目なのですが、委員長さんタイプというか、程よくまとまった学生が多いので、秋葉さんのようなちょい悪オヤジに鍛えてもらうのがいいのです(笑)。それこそ居酒屋の定義から始めることで、「そんなところから自分たちで考えていいんだ!?」という感覚を持てます。居酒屋という定義が決まっていて、それを展開していくのは割と得意ですが、居酒屋とは何なのかを最初から考えていいと思っていない学生が多い。そこは、教員がドラスティックに教えるのがなかなか難しいところです。実業されている方はもっと自然に伝えられることがあると思うので、とても良い試みだと思います。

秋葉:私の授業は年間で6コマあります。主軸は「経営とロジスティクス」や「オムニチャネル戦略」です。ロジスティクスを生業としている会社はありますが、実際にはそれだけでは商売にはなりません。経済活動や消費があるから、そこにロジスティクスという商売があるわけです。サプライチェーン全体の流れをある程度わかってもらう意味でも全体的にお話ししています。違う学部の学生も受講できるので、その学生たちがディスカッションの輪に入ると、それはそれで面白いですね。 物流系の講義では飲食店のオンライン配達サービスの話題も出ます。そこでアルバイトをしている学生もいて、1日走り回って8000円だと言うので、アルバイトとして8000円ならいいけど、職業としてどうかと聞くと、無理だ、生活できないという答えでした。ということは、物流会社で働いている方にもそれなりに賃金を払わないと職業として成り立たないということです。それなのに、「普段から送料無料のサービスを選んでない?」と言うと、考えこんでいました。学問と自分の生活ではどうしても距離があります。物流を含めて、実はすごく身近で、自分たちの生活との連動があるということを伝えたいと思っています。 河合先生のゼミ生は、実践的な調査をする学生が多く、素晴らしいと思います。以前、実際に買い物をしたときの良いところ・悪いところを調べてきた学生がいましたよね。ほかにも、オムニチャネル系の研究をしていました。買うまでのUXのつくり、Webサイトをクリックしてから届けられるまで、あえて返品してみるとどういう対応になるかなど、全行程を調査、研究していました。

河合:実際に自分で購入や返品など一連のお買い物体験をしてみて、アクティビティ図にまとめる。それをヨドバシカメラさんとユニクロさんと無印良品さんで比較して、返品のプロセスがどう違うか、どの工程で何日かかっているかなどを分析していましたね。

秋葉:そういったことが学校の中でできるのはすごく面白いと思います。先生が厳しく指導しているのでしょうか。

河合:今の学生は私が学生のときよりよほど勉強していますし、やってくるように言うときちんとやってくるので、人として尊敬しています。私は本当にダメダメ学生だったので…。ただ、突き抜けないところ、小さくまとまってしまうところがあって、そういうところはゼロベースで考えなければいけないので、「もっと自由になっていいんだよ」と伝え続けています。

秋葉:私は、学生に「そのアイデアはつまらない」とあえて言うことがあります。なぜなら、私たちだとどうしても経済合理性がつねに頭にあって、その枠の中で考えてしまいますが、経済合理性は後付けでいいので、発想として飛び出してほしいと思っているからです。

これからの物流業界に必要なのは、知ってもらい、理解してもらうこと

秋葉:先生は、いったん物流関連の企業に就職されましたが、なぜその選択をされたのですか。

河合:大学生になって初めてアルバイトをしたのが大手コンビニエンスストアで、その頃POSシステムを持っていたのはそこくらいでした。在庫状況がシステムで見えて、アルバイトの私が発注しても、発注したものが正しく届く。これはすごい!と、恋をしてしまいました。これを仕事にしたくて、ものを運ぶ会社かコンビニエンスストア、物流のシステムをつくる仕事かシステム全般をつくる会社のどれかに入ろうと思って就職活動をしました。結果、各カテゴリからそれぞれ採用内定をいただき、どこにしようかと迷った末、あまり大きな会社に入るより小回りの利く会社に行ったほうがいろいろなことができると思い、物流システムをつくる会社に決めました。コンビニエンスストアも新しいビジネスで魅力的だったのですが、やっぱり仕組みが好きだったのでしょうね。ものは絶対に動きます。「いかに効率よく動かすか」というところに携わる仕事がしたかったのです。

秋葉:就職されてどうでしたか。

河合:基幹システムの設計に携わり、多くのことを勉強することができたのですが、すごくもどかしさも感じました。基本は倉庫の会社なのでトラックも持っていないし、当時はまだお客様への提案という意味でもできることにかなり限りがありました。フレームワークスさんのように物流を突き詰めて研究しているわけではなく、要するに、未来の物流をリードする専門家集団という雰囲気ではありませんでした。なにより私自身が無知で、このままこの会社に勤め続けていてもできないことが多いということに気づいたんです。だから、もう少しちゃんと勉強しようと思って大学院に戻りました。

秋葉:学校に戻って、物流に興味を持ってくれる学生を育てることは大きな意義があります。私のような物流に身体を突っ込んでいる人間からすると、物流はすごく多くの人に関わってほしい業界だと思います。人に関わってもらうためには理解が必要なので、やればやるほど「人をどうするか。人にどう伝えるか」というところに戻っていくのが現実です。私自身、河合先生に声をかけてもらって、学習院大学で教える機会をいただいていますが、JILS(公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会)の活動や、他の大学、ビジネススクールで話すのも全部同じ目的です。物流を知る人を増やしたい、その中から理解者が増えたらいいと思っています。

ロジスティクスが動かないと経営も動かない

秋葉:学生が就職活動をする中で、希望する企業として物流会社を挙げる方はほとんどいないのではないかと感じるのですが、いかがですか。

河合:残念ながらそうですね。授業でアンケートを取ってみたのですが、物流会社を就職先として考える学生は、200人中0人でした。

秋葉:私の授業にGROUNDの宮田社長に来ていただいたことがあり、その後、インターンシップに行きたいからつないでほしいという学生が3人いました。これは、物流というより、ロボティクス、デジタルというところが効いたのでしょうね。 2022年2月に開催されるロジスティクスソリューションフェア2022では、高度物流人材というテーマで、私と河合先生でパネルディスカッションをします。もともとセミナーのようなかたちだったものを、パネルディスカッションに変えていただきました。なぜかというと、セミナー形式だと企業が採用という方法を前提とした話をしたがるからです。学生が物流業界に入りたいかどうかもありますが、私は、この先約40年、そもそも企業が若い人材を活用し続けることが本当にできるのか疑問に思っています。それだけの賃金を払うことができるかも問題ですが、約40年間働くことに対しての価値を出し続けられるか疑問なのです。それよりも、周辺の企業に入った優秀な人たちをきちんとまとめることや、プロジェクトや目的に応じて一緒にできるような環境をどう作るかを考えたほうがいいのではないかと考えました。それで、いろいろな立場の方たちでパネルディスカッションをすることにしました。

河合:おっしゃるとおりです。私はたまたま物流が好きですが、学生たちに物流業界に行ってほしいと思うわけではありません。先ほどのアンケートで、物流に興味があるかを聞いたところ、「ある程度興味がある」「ニュースや情報に関心がある」と答えた学生もいました。関心があるならそれでいいと思っています。どんな業界に行っても、ロジスティクス(物流)は経営と隣り合わせです。ロジスティクスが動かないと経営も動かないということを知っている人間が増えれば、それで大満足です。その中で、物流の世界で活躍してくれる学生が出ればより良いと思っています。

秋葉:理解してくれる、知っていてくれるだけで大きく変わります。その次に、就職した後に何かきっかけがあって、物流周辺で関わってもらうことができたらいいですね。物流会社に入ってもらうことが、私たちが求めていることではありません。物流をやるにしても、その前の川上の部分を理解していないとできませんから。

河合:プロジェクトで企業の方とご一緒しても、物流畑一筋というメーカーの方と、この間まで営業で仕事をしていて、新しく物流部門に来たという方では視点に違いがあります。物流部門の方は「きちんとモノが動くことが重要」という発想の人が多く、後者の方は「このロジスティクスの仕組みができれば、こういうことが可能になる」という発想の人が多いというように、視点も、気質も少し違うように感じます。どちらももちろん重要ですが、サプライチェーンマネジメントという観点からはやはり、幅広い知識と全体観のある人、バランス感覚の優れている人がいいですね。

秋葉:もう一つキーがあるとしたら、SDGsやESG経営です。物流会社だけでなく、委託する企業側の責任も問われるような状況になってきました。

河合:それも大きいですね。サプライチェーンとSDGsは切り離せません。学生に、「日本ではどれくらいの食料品が捨てられていると思いますか」「世界では食べられるものの何分の一くらいが捨てられていると思いますか」といったクイズを出すと、ほとんど正解するくらいなので、意識が高いのだと思います。格安の衣料品を買ってすぐに捨てるのではなくて、しっかり選んだものを大事に使うような気風を感じます。

秋葉:企業選びでも、そのような活動をしている企業に就職したいと考えるようになりますよね。

河合:自分が働く会社はクリーンであってほしい、地球環境に悪い影響を及ぼしたり、後進国の労働力を搾取したりしているようなサプライチェーンには加わりたくないという意識は、現在の学生は本当に高いと思います。企業側も真剣に取り組まなければならない課題です。先日もゼミの学生が、自分たちは小さい頃から耳にタコができるほど環境教育を受けてきているので、環境に悪い仕事はしたくない。ある研究発表会でそうきっぱりと、言い切っているのを耳にしました。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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