土地活用ラボ for Biz

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コラム No.27-37

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第2回 この千載一遇の好機を見逃さないために株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 株式会社ローランド・ベルガー プリンシパル 小野塚 征志

公開日:2019/05/31

フレームワークスの秋葉淳一氏がホスト役となり、株式会社ローランド・ベルガー プリンシパル 小野塚征志氏をゲストにお迎えし、ロジスティクス業界にイノベーションを興すために必要なことは何かについて、語り合っていただきました。

今が一体的な取り組みを行いやすいタイミング

秋葉:標準化する、つまりルール化された中で仕事をきれいに回していくためには、計画すること、計画精度を上げることが非常に重要です。私は、その点に関して真剣に取り組む企業がまだ少ないと感じています。多くの現場で、ルールを決めたにもかかわらず、「荷物がきてしまったからなんとかしてほしい」という事態が起こります。
また現場では、人を用意するにしても、ロボットを入れるにしても、マテハンを入れるにしても、リソースコントロールをするわけですから、時間当たりの生産性をどこに設定するかに基づいて準備をします。お客様はそこを高くすることを強く望まれますから、物流センターの運営側からすれば、その分の投資をするわけです。しかし、実際に入ってくる荷物は毎日その2割減で、その数字に達するのは月に1回か2回となると、このへこんでいるところのお金は誰が負担するのかという問題が出てきます。そこを本気で考えないといけません。

小野塚:計画精度について補足すると、入荷の計画をつくるのは物流センターの人ではなくて工場の人だったり、販売計画をつくるのは店舗側の人だったりするわけです。サプライチェーンを担う人とは、間をつなぐ人ですから、この人たちだけが頑張っても成立しないのです。みんなが同じ目標を目指して進む必要があります。
もう一つ、例えば食品業界を考えた場合、アメリカであればウォルマートと食品メーカーが直で取引します。しかも、ウォルマートは在庫情報を全部開示しています。ところが日本にはメーカーがたくさんあって、間の卸が1次も2次もあれば、場合によっては3次まであり、食材によっても様々な卸があります。さらに小売りは小売りでいろいろな会社があります。食文化としては素晴らしいのですが、これをつなぐのは大変なことです。
ですから、別な業界、例えばアパレル業界などでトライアルをしていくのは良い方法だと思います。上流から下流まで参画するプレーヤーが比較的少ないアパレル業界でトライしてできたものを少しずつ広げて、仕組み化して、クラウドで集約していくという方法がいいのではないでしょうか。 一方、味の素さんが始めるF-LINEに代表されるように、業界内の垣根はどんどんなくなっています。あるところではもう耐えられないと思っていて、別のところではイノベーションを起こそうとしている人がいる。また、規制緩和や商慣習を変えなければいけないと思っている人もいる。まさに産業と官、一体的な取り組みを行いやすいタイミングなのではないかと思います。

秋葉:小野塚さんが『ロジスティクス4.0』の中で書いていただいている、辻社長のPALさんも面白い取り組みをしていますね。

小野塚:PALさんはロジテックファンドをつくっています。施設は証券化されている一方で、ロボットはまったく証券化されていません。リースという手もありますが、基本的には買うしかなく、いずれにせよ設備投資において責任を負わなければなりません。積極的に投資されている会社もありますが、そういうところばかりではありません。PALさんがやろうとしているのは、ファンドと組んで、選定や導入支援も行い、加えて証券化して提供するので、ランニングコストだけで済むというものです。このプラットフォームはPALさんにとっても新しいビジネスだと思いますが、ロボティクスを導入してみたいけれども踏ん切りが付かないという会社からすると、非常にありがたい話だと思います。
馬車から自動車へ変化したとき、自動車メーカーはもちろん大きなビジネスになりましたが、ガソリンスタンドつくった人、道路をつくった人も大きなチャンスをつかみました。こういったことにチャレンジして進化した物流会社は、大きなビジネスになるでしょう。しかし、それを応援する人にとってもチャンスであり、応援する人がいることが日本の進化にもつながります。また、そういうことにトライすることが社会にとっても役に立ちます。
今はまだごく一部のチャレンジ精神がある会社だけが取り組んでいて、「ニトリさんはやっているけどね」「大和ハウスさんはすごいよね、うちは真似できないけど」という状況かもしれません。しかし、「あの会社も導入したの?」「あの規模でも大丈夫なの?」となれば、話は全然違ってきます。自分たちに比較的近い規模の会社が始めると、一気に導入が進むのではないかという期待があります。そうすると逆に、日本はヨーロッパより先にいろいろなものが標準化して、「みんなやっているよ」「普通でしょ」となっているかもしれません。

秋葉:日本では、傾向として先陣を切って取り組もうとする企業は多くはありません。逆に、業界内などで他の会社も導入するとなると、一気に動くという傾向もあります。そういう意味では、動き出す企業が増えてきましたから、様々な人たちにとってチャンスは近づいたという気はします。

小野塚さんにも参加いただいた、先日のHacobuさんのイベント「MOVO FORESIGHT 2018」では、そうそうたるメンバーが登壇され、参加された方々は、これだと思ったのではないでしょうか。まさにベンチャー発信のビジネスモデルが、皆さんの共感を得たような気がしました。あのような場に集まった人たちが、聞く側もそうですし登壇している側もそうですが、いろいろな場所で顔を合わせるようになりました。すごく良いことだと思います。同じグループだとか、出資しているからだとかだけではなく、同じ志を持っている人たちのコミュニティに近い状態になりつつあると捉えています。ある部分ではコンペティターになり得るけれども協力できることがあるのではないか、こういう課題はどうするかといったことについて、自然に会話できる環境になりつつあるのではないでしょうか。

また、こうした動きはこれからさらに広がっていくでしょう。これまでは、サプライチェーン・マネジメント、ロジスティクスに関係している人間たちが主でしたが、ここに注目が集まりだしたので、スタートアップだけではなく周りのデータサイエンティストやロボティクスが大好きな人たちが、それをロジスティクスの世界でどう使えるかといったかたちにまで広がり出すのではないかと思っています。

世の中を一変させる100年に1度のチャンス

秋葉:日本でもようやく経営戦略での遡上にロジスティクスやサプライチェーンの課題が乗るようになってきました。いろいろなところから教えてほしいという依頼もきます。小野塚さんのところもそうだと思いますが、戦略系のコンサルティングファームでの話題にロジスティクスが上り、一緒にやりましょうというお声がけをいただくケースが増えています。
大学においても同様で、今でも物流やロジスティクス、サプライチェーンを教える学部はほぼないのですが、その代わり、経済学部や経営学部の中でロジスティクスのことを教えてほしいといわれるようになってきたことも大きな変化だと思います。重要な要素だとようやく捉えられてきたのではないでしょうか。

小野塚:ヨーロッパ、アメリカでは、SCM部門にエースが来るかは別にして、SCM室、SCM担当のトップの権限が日本より強い会社のほうが多いですね。やはりそこは違うと思います。そういう室がある、そういう権限がある会社は、当然、営業や生産に対して全体最適はこうだ、営業のいうとおりにつくると在庫が増えるからだめだ、生産のいうとおりにつくると量産ばかりするのでだめだと、最適化のバランスを取ってくれます。日本の場合、そもそもそのような室はなかったり、あっても権限が弱かったりします。花王さんのような進んだ会社もありますが、むしろ例外です。歴史上から見ても、アカデミックの世界においても弱かった。しかし、おかげさまで、そういうものに対して意識が働くようになりつつあります。

秋葉:ただ、先ほど小野塚さんもおっしゃったように、同じ業種、業態の中に小さい会社がたくさんあることは日本の良さでもありますが、それを整理する難しさもあります。それぞれの業種、業態で頑張って整理してくださいといっても、すごく難しいことです。そこで大和ハウス工業のような第三者がプラットフォームをつくれないかというのが発想の一つでした。

小野塚:第三者的な立場の会社が、中堅、中小の会社も含めて支えられるプラットフォームをつくる。スーパーパワーのある会社がクローズドで全部を乗っ取るのではなく、みんなが使える基盤を用意することが、まさに日本らしさだと思います。暮らしている一個人としてもそうあってほしいと思います。そうでないと多様性が失われてしまいますから。

秋葉:ここからはオープンにできるかどうかです。私たちのことでいえば、アッカ・インターナショナルが持っている仕組みをどれだけオープンにできるか。そのために、システム構造上見直すべきところは見直す。この1~2年でそこを私たちが試されていると思っています。ここをできるかどうかはすごく大きいです。オープンにすれば加速もするし、社会貢献もできます。

小野塚:おっしゃっていただいているとおり、現在、良い分水嶺だと思っています。三つほど重なっているポイントがあります。まず、世の中の危機感です。ニュースで報じられているというところも含めて、物流業界の労働問題が表面に出てきたおかげというところもあるのかもしれません。今だったら値上げをしても仕方ない、ロボットを入れても仕方ないと、誰しもが納得してくれるような状況になっています。 次にイノベーションです。正直、投資対効果はまだ微妙です。本当にどこでもマッチするというものは、今はまだ多くないかもしれません。しかし、車が出たときもそうだったと思います。T型フォードが出て10年で変わりました。今はT型フォードならぬ、T型ロボ、T型システムができるタイミングなのかもしれません。まさにそれが世の中を一変させる100年に1度のチャンスなのだと思います。
さらに、経産省や国交省、内閣府も、この領域に対して、彼らにとってみても賭けに出ているというところがあると思います。そうしたバックアップも進みつつあるという、この千載一遇の好機を逃すのはもったいないことです。むしろそのチャンスをものにしていただいたほうが世の中にとって価値があるということを、皆さんにぜひ伝えていきたいと思います。

秋葉:国もロジスティックのイノベーションについてよく発信していますし、効果は少しずつ出ていると思います。国の予算をつけるということなので、当然、厳格なルールやチェック体制がありますが、経産省も積極的に動いています。ベンチャーやイノベーションを起こそうとしている人たちに予算をつけようとしているという意味でも、これまでとは大きく違ってきています。私もいろいろな会議に出させていただいていますが、そこでは、大きく三つのグルーピングがあります。既存の事業者、コンサルファームや大学の先生方、イノベーションを起こしそうなスタートアップやベンチャーという三つのくくりです。そういう取り合わせの場をつくっていること自体が、これまでとは何か違うのではないかと思います。

小野塚:私もイノベーションの芽は出つつあると思います。海外を見ても同じなのですが、この領域で本当のイノベーションを起こせるのは、今物流会社をやっていない人たちです。今までの慣習に囚われず、アセットにも囚われず、考え方にも囚われません。ベンチャーや、大和ハウスグループさんもそうだと思いますが、もともと物流会社ではない会社のほうがイノベーションを興す可能性を持っています。
例えでよくいうのが、HISさんの「変なホテル」です。彼らはホテル業をやっていたわけではありません。だからこそ、ああいったある種割り切ったホテルをつくることによって、今まで30人が必要だったホテルを7人で回せるようになったんです。受付はロボットですし、ルームサービスはありません。一方で、WiFiの設備はしっかりして、ベッドの寝心地が素晴らしかったりします。費用をかけるところとかけないところを割り切っています。 物流会社でいえば、これまでは、お客様である荷主の仕事を全部ほしいから何でも入る倉庫を作りましょう、というのが普通の考え方でした。本当は真逆の発想もあるわけです。この大きさのこの形に合わせてくれたら誰でも入っていい、そのかわり値段は半額です。そういうこともあるわけです。

秋葉:考え方としてまったくその通りだと思います。既存の枠組みがある日突然変わるのだったらみんな壊せるのですが、現実ではある日突然変わることはありませんので、そこをどう捉えるかだと思います。
小野塚さんの本の中にも出てきますが、西濃運輸さんがオープンイノベーション推進室という部署をつくりました。既存のビジネスから完璧に切り離して、新しいことや次のビジネスになりそうな芽をたくさんつくろうとしています。
そうすると、いわゆる物流業以外のことばかりやっているように思われがちですが、そうではありません。西濃さんは今までコールドチェーンをやっていなかったのですが、最近取り組みを始めました。これも新規事業という位置づけなのです。これはすごい考え方です。コールドチェーンを物流領域だと定義すると新規事業に入らないわけですが、新規事業としてオープンイノベーション部門がコントロールすることで、既存に引っ張られないようにするという一面がそこに表れていると思います。

物流業からコールドチェーンを捉えるのではなく、まったく違う視点からそれを捉えるということです。そういう考え方をしている物流会社が出始めたことは素晴らしいことだと思います。日立物流さんもスマートロジスティクスというキーワードで、そこを検討するチームを持たれています。

小野塚:日本の物流会社でR&Dの予算がある会社は本当に少数です。しかし、海外で大手といわれる物流会社はみんなR&D予算、研究センターを持っています。要するに投資をするのです。設備投資もそうですし、研究開発投資もしますし、イノベーション投資もします。かつての日本の物流会社では、本当にごく一部の例外を除けば、イノベーションに投資をするという思想さえ少なかったでしょう。投資といえば、トラックの購入か倉庫を建てるくらいでした。今の時代、倉庫は借りればいい時代になっていて、トラックも庸車が多いわけです。 現在、ようやく投資をする土壌が育ちつつあります。いかにスケールを利かすか、経済性をどう担保するか、将来のビジネスモデルを見据えて、何に投資して、何を取捨選択するかという議論がようやくできるスタートラインに今立ちつつあるという感じがします。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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