土地活用ラボ for Biz

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コラム No.27-29

サプライチェーン

秋葉淳一のスペシャルトーク 第1回 働くママを応援し、雇用を生み出すフレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 株式会社ママスクエア代表取締役 藤代 聡

公開日:2018/09/28

子育てをするお母さんの「働きたい」という思いを実現

秋葉:これまでの常識を打ち破る、子どものそばで働くことができるという「ママスクエア」の仕組みを簡単に教えていただけますか。

藤代:ママスクエアとは、お母さんが子どものそばで働ける、保育園でもない在宅でもない新しいワーキングスペースです。オフィスとキッズスペースがセットになっていて、お母さんが働いているガラス越しに自分の子どもが見えます。ビジネス自体はすごくシンプルで、子育てをするお母さんの「働きたい」という思いを実現します。
大きな特長のひとつは、職場とキッズスペースが同じ場所にありますから、お子さまの預け先を探す必要がありません。お子さまの様子が見えますから、お母さんとして安心ですし、子どもたちにしてみれば、何かあってもすぐ隣にお母さんがいます。子どもと一緒に出勤・帰宅できるので、送迎の手間もありません。学童のような利用の仕方も可能です。
3年半が経ち、現在直営拠点は20カ所出店していますが、届出は必要ありませんでした。コロンブスの卵ですよね。預けて仕事に行こうとする保育園が足りないわけですが、子どもと一緒にいて仕事があれば、託児でも保育でもないので、好きなときに好きなところに出店できます。
1号店は川口のショッピングモールの中に出店しました。通常、お母さんたちは仕事をした後に保育園でピックアップして、その後に夕食の買い物をしたりしますが、ショッピングモールの中にあるので、託児と仕事と買い物が全部ワンストップでできるという仕組みになっています。

秋葉:最初にこのお話を聞いたときは本当にびっくりしました。発想の転換だと思います。私たちは、お子さまのいるお母さんが働くためには、「子どもを預ける」必要があるということを、知らず知らずに前提にしています。「預けずに一緒にいる」というのはまったく違う概念です。
我々のビジネスにおいても、物流センター内の仕組みは人間がオペレーションをする前提で考えられているわけですから、私も「ロボットでオペレーションを行う」という考え方を、あえて逆に「ロボットはどこまでしかできないのか」という風に変えています。そんな発想をしている私からすると、まったく違う見方をするという意味で、すごく参考になる話でした。
一般の人から見れば、流山の物流センターとママスクエアの組み合わせというのは、とても新鮮なことだったと思います。

藤代:私は前職でリクルートにいたので、働き方に関してはけっこう調べていました。たとえば、働きたいお母さんが仕事をするという意味でいうと3層に分かれます。事務職をやりたい人、販売・サービス・フードなどの接客をやりたい人、身体を動かしたい人の3層です。物流センターや倉庫には人は集まらないと思われがちですが、実は、ガソリンスタンドで働く人やテーマパークで働く人たちのように、どちらかというと身体を動かしたい人たちの層は必ずあります。そして、3層全部の方が、「子どもをどうするか」という共通の悩みを持っています。
最初にショッピングモールに出店したときは、3層の中でも事務系の仕事をしたい人たち向けのサービスでした。他にも身体を動かして働きたいという層はいるわけで、その人たちにも子どもをどうしようという悩みがあります。
最初に大和ハウス工業から流山でやりませんかといわれたときには、そこを解決してあげれば、物流センターの中で働こうという人たちはたくさんいるだろうという仮説に基づきました。とはいえ、実際にやってみないとわからなかったのですが、やってみたら、10人の募集枠に対して100人の応募がありました。ですから、その仮説は間違いなかったのだと、改めて分かりました。

新しい「働く環境」を提供する

秋葉:今、大半の経営者の方が、「人手不足」「採用できない」とおっしゃる中、ものすごいことだと思います。私たちは流山の広い敷地の中に物流施設をたくさん建てる計画がありますが、物流のイメージを変えるために、物流タウンという表現をしています。流山は人口増加率が全国2位であり、特に子育て世代の人口転入数が非常に多いのが特徴です。そのため、比較的人が集めやすいのではないかという感覚があったので、その中でママスクエアさんに入ってもらうことができれば、すごく面白くなるのではないかと思いました。
一方、そうした下地のデータがあるとはいえ、物流施設で保育所を併設しても意外と人が採用できなかったという話も、他の会社さんから聞いていました。適正なキャパシティはどれくらいなのか、やり方としてどれがいいのか。そういった手探りの中でやった結果、1棟目は40人のキャパシティで認可保育というかたちになりました。
今回、働きたいお母さんがたくさんいることがわかったわけです。しかも、少ないですが、流山に新たな雇用も生むことができたわけです。私たちもものすごく勉強させてもらいました。

藤代:働く人たちの意向からいうと、流山は子育て世代の人口も多いので、成功する確率は高いのではないかと思いました。結果としてもその通りになりました。
一般の方は、あまりご存じないかもしれませんが、働きたいと思っている女性の「働けない度」は深刻です。私も最初からママスクエアを思いついたのではありません。私は子どもが3人いて、子育ては大変だと思っていたので、リクルートから独立して最初にやったのは親子カフェでした。仕事場の横にキッズスペースがあるのではなく、カフェの横にキッズスペースがあるのです。これも日本で初めてのモデルで、20店舗くらい展開しました。「子どもが遊んでいるのを保育士が見ているので、お母さんたちはゆっくりお茶でも飲んでくださいね。ここでゆっくりして、それで夕方から優しくなってくださいね」というのがコンセプトでした。すると、この親子カフェは、3カ月先まで予約が取れない店になりました。テレビで取り上げられてからは、子育てに疲れたお母さんたちが、日本中からすごい勢いで来ました。
中には、そのカフェにお客様としてではなく仕事をするために、面接を受けに来るお母さんもいます。すると、面接の最中に泣き出す方が何人かいました。なぜかというと、面接を受けることができたことに感極まってしまったのです。
それだけ、働くことが難しいということなのです。中には、電話だけで12件断られたという方もいました。それは相当辛かったでしょう。そういう人たちにしてみると、面接してもらえただけで嬉しかったのです。そして採用して働いていただくと、感謝の気持ちというものもありますし、もともと優秀な人たちが多いですから、ものすごく頑張って働かれていました。
こんなに優秀で頑張れる人たちが、面接すらしてもらえない。これはおかしいと思って、親子カフェの遊び場の横にカフェがあるのではなく、仕事場があれば、この人たちは普通に働けるのではないかと、5年くらい前から構想し始めました。原点は、「これだけ優秀なお母さんたちが、こんなに働けないのか」ということです。そこに気づいて思いつきました。それで新しいモデルとして展開したのが、ママスクエアです。

秋葉:すごい話ですね。人を集められないとほとんどの人がいっている中での話ですから。実は、集められないといいながら、誰も集め方もやり方も変えていません。今までと同じやり方をしていながら、人が集まりませんといっているのです。なかなか発想を転換することは難しいとは思いますが、採用しようと思ったときにそれに気づいて、始められたということはものすごいことだと思います。
お子さんを安心して預けられるということは、仕事に集中できることに繋がります。ノンストレスとはいいませんが、仕事をしていただく上で非常に良い環境です。ですから、「言葉だけではない働き方改革」といいましょうか、働く場所改革、働く環境改革のようなことは、私たちがしていかなければいけないことです。藤代社長はその先端を行かれていますし、画期的なことをされていると思います。私たちが展開するときには、ずっと藤代社長にも行ってもらいます(笑)。

藤代:秋葉社長も、環境改善に向けて取り組まれています。先日のセミナーでは「新3Kの環境をつくりたい」とおっしゃっていました。

秋葉:これまでの物流現場での仕事は「きつい、帰れない、給料安い」など、いろいろいわれてきましたが、基本的にはネガティブな話です。新3Kというのは、たとえばそれを、「かっこいい、クール、輝きたい」という風にしていきたいのです。イメージを変えていかないと、そもそもこの業界に人を集めることは非常に難しいことです。
物流業界は、営業利益率が5%に満たない会社が圧倒的に多くを占めています。なぜかというと、基本的に、荷主さん側にリスクを背負ってもらっているからです。作業者の給料ともらう作業荷役の差額で経営を回しているのが実態です。そういう仕組みの中で仕事をしている限り、新たな取り組みをするのは非常に困難です。
今までの物流は、「いわれた通りにものを運べばいい」という考え方でしたから、コスト削減という課題しかありませんでした。営業利益が低い会社は、当然、給与を上げることはできませんし、1割上げたらその瞬間に会社は倒産してしまいます。
ですから、職場の環境を大きく変えるには、物流のビジネスを構造的に変える必要があります。時間や給料を少し是正しただけではだめなのです。なぜなら、悪いイメージが定着しているからです。「他の業界と同じ給料です。同じくらいの労働時間で大丈夫です」と提案しても、「でもきついんでしょ」となってしまいます。そこを変えないと難しいのです。
私たちも環境を変える努力をしますが、一番強いのは、そこで働いていただけた方たちの「いや、そんなことないよ」という口コミだと思っています。あとは、事業構造を完全に変えることです。ロボットや人工知能を活用することによって、物流の価値を上げれば給料もたくさん払えますし、イメージも変えられますし、利益率が高くなればまた新たなことができるようになります。

行政との取り組みによって地域再生にも効果

藤代:以前に、奈良県の葛城市から古民家を活用してコールセンターができないかという依頼があり、出店しました。人口3万人の都市で待機児童はゼロです。市が市民に対して古民家の提供を呼びかけたところ、すごい数の古民家情報が集まったのですが、お母さんたちの通勤が難しく、諦めました。最終的にはロードサイドの仏壇屋さんを改装して出店しました。それが行政との初の取り組みです。
3万人の都市で、しかも待機児童がゼロです。これは我々でも、最初は募集に苦労するのではないかと思いました。さらにハードルもありました。市から補助金が出るので、他市からは採らないでほしい、広域に募集をかけないでほしいということでした。ところがふたを開けてみると、124人の応募がありました。3万人の都市でこんなに来るのかと驚きました。少ないだろうと思って、説明会で市長が「皆さん、ママスクエアが出店するということを、ぜひお友達にもぜひお知らせください」というと、みんな嫌だというのです。「倍率が上がってしまうから教えません」と(笑)。それだけ働きたいという意欲が高かったのです。実際には、日本中、働きたいけど働けないお母さんたちが多数いらっしゃるのだと思います。

秋葉:まさに地域活性化、地域再生につながるお話ですね。流山の物流用地はもともと農地です。それを用途変更したのも初めての試みでした。そこに雇用を生むために、物流施設が選ばれました。そういう意味でいくと、同じようなモデルは他の地域でも当然ありえます。そのとき、土地だけ用地変更をして物流施設を作ったとしても人は集まらないということを、逆に、大和ハウスグループとして自治体にお伝えしなければなりません。それは、僕らよりも藤代社長のほうが現実的にすべてわかっていらっしゃることだと思います。

藤代:神戸市では、あえてシャッター商店街に出店しました。そこはショッピングで人を集めることはなかなか難しいわけです。たとえば、土日にタレントさんを呼んで人を集めても一過性のものです。神戸市に、復興支援を受けている良い商店街があるのですが、オープンのときに行ってもシャッターだらけでした。通るのはお年寄りばかりです。そこに毎日お母さんと子どもたちが来ることによって、商店街を活性化して明るくしたいというのが、神戸市からの要望でした。結果としてたくさんのお母さんたちが商店街に通勤してきて、希望通りの結果が出せています。

秋葉:私たちは今だけではなく、将来にも責任を持っています。5年後に無人の自動運転になっていますかと聞くと、だいたい皆さん、まだなっていないといいます。そこで30年後はどうですかと聞くと、8~9割の人がなっているといいます。30年後となると自分は関係ないと思う人が多くいます。しかし、30年後には、自分たちの子どもが私たちと同じくらいの年齢になっています。ということは、自分と関係ない時間軸ではなく、関係ある時間軸の中でそれくらいの変化が起こります、と最近は話しています。そういう意味ではすごく重要な岐路、ポイントになる数年なのだと思います。
改めてですが、我々も加速していかなければいけないですし、業界を変えるためには、周りの人たち、企業も巻き込んでいかなければならない。そういった中において、ママスクエアさんの取り組みは非常に重要なポイントです。これからも協力しながら、世の中を良いほうに変えていけたらいいと思います。

藤代:人口が減っていく世の中には将来がありません。今、我々は4人で1人のお年寄りを支えていますが、私の息子の代になると1人で1人を支えなければなりません。私は父親から、「苦労は買ってでもしろ。必ず報われるから」といわれて育ってきました。自分の息子にそういっていいのだろうか。給料の半分近くが社会保障で消えてしまうかもしれないのです。そんなときにモチベーションが保てるでしょうか。これから我々が子どもたちの世代に引き継ぐときに、人口が減少する社会を、何の手も打たずに引き継いでいいのでしょうか。お母さんたちが安心して子どもを産むことができて、人口が増える世の中にしていかないといけません。優秀な人が海外に出ていってしまうと、さらに空洞化に拍車がかかってしまいます。お年寄りと海外に出られない若者しかいないような世の中を、我々として引き継いでいいのでしょうか。そのようにお伝えしています。
秋葉社長がおっしゃるように、先のことを考えずに、我々の子どもの世代にこういう世の中を引き継いでいいのかという問題意識を持ちながら、小さな力ですが、お母さんたちが安心して子どもを産める世の中にしていく取り組みがしたい。新しいことをして、さらに人口が増えるような世の中にしたいと思っています。

(第2回へ続く)

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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