土地活用ラボ for Biz

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コラム No.27-4

サプライチェーン

秋葉淳一の「物流は経営だ」 Vol.4 IOTとロジスティクス

公開日:2016/07/28

IOTをいかに物流施設の中で活用していくか

IOTをいかに戦略的に活用していくかは非常に重要な視点となる。ただし、物流センターの中でどう使うかという観点と、もう少しレンジの広いロジスティクスの観点でどう使うかという話は、分けて考える必要があるだろう。

まず、物流センターについて考えてみよう。
顧客に対するレコメンドを割り出すのは比較的容易である。人間の行動パターンは読みやすいので、プロフィールの収集、更新、蓄積によって、ヒット率もどんどん高くなる。
一方、物流センターにモノが入ってきた場合、商品としてのプロフィールは存在するが、モノには人間のような行動パターンが存在しない。
しかし、IOTによってさまざまな情報がクラウド上に上がってくると、モノについても「おそらくこういう動き方をするだろう」ということが読めるようになってくる。
数年前、Amazonが「注文されていない商品を届けます」と言っていたのも、まさにこの流れを受けてのもので、需要予測の範囲が「この商品が何個売れるか」という数量のみの把握から「いつ、どこへ」というところまでも含めたものへと、レベルが格段に向上している。
そうなると、物流センターに商品が入ってきたとき、「これは保管しておけばいい」「これはすぐに出ていくから出荷処理のほうに回す」という動き方も可能になり、何らかの指示やアクションを受けて動くという従来のイベントドリブン型から、「こういうことが起こるだろうから、今このように動く」という方向へ、物流センターの基本的な動き方も変わっていくことになる。
現在でもリアルタイムに情報が入ってくればオンデマンドによる処理は可能だが、これはまだイベントドリブンの範疇といえる。今後は、リアルタイムのデータを常に入れながら、集積された過去のデータを分析することで、今の状況がリアルタイムでわかれば先が読める、という時代になるだろう。
物流センターにおいては、オーダーを受けてから出荷までの時間が勝負であり、そこにはオーダーの締め時間と出荷時間という二つの物理的な制約が存在する。
このタイムスケジュールに沿って、単位時間当たり何個までの処理が可能、または限界という話になる。モノを運ぶ出荷作業においては物理的な制約もあるが、オーダーの締め方については、今後、受注を読む精度がさらに向上すれば事前の対応も可能になってくる。
実は、今の段階でも、「2時間前の状況からすると、2時間後に締める頃にどんなことになりそうか」というところまでは読めるのだが、IOT技術によってもっと精度が高まれば、どこもこのやり方になっていくのではないだろうか。
膨大なデータを時系列の中で蓄積しながら、今を反映して先を読めるのが、IOTを物流センターで活用するうえでの最大のメリットの一つといえるのではないだろうか。

ロジスティクスの観点からIOTを考える

次に、ロジスティクスの観点からIOTを考えてみよう。
前に紹介したように、ロジスティクスというのは元々軍事用語で、適切にリソースを配分し届けるということだが、ロジスティクスの観点でIOTを捉えると、さらに大きな戦略が見えてくる。
たとえば、現実の世界で起きていること(Physical System)をIOTの技術によってCyber(電脳)の世界へとつなぎ、3日後の世界をシミュレーションして商品を生産し、1日後の世界をシミュレーションして商品を運ぶ、などといったことが可能になるだろう。
しかもそのシミュレーションの精度は99.8%以上になり、生産設備も配送車両も全て自動運転で行われているという世界だ。

次の絵は、この現実世界(Physical System)と電脳世界(Cyber System)を結ぶ、CPS(Cyber-Physical System)の仕組みのイメージだが、ロジスティクスのシステムにIOT技術が組み込まれることで、現実世界(Physical System)に存在するセンサーやカメラやエッジデバイスなどの情報を、電脳世界(Cyber System)の強力なICT技術と結びつけ、人工知能が解析をすることによって、より効率のよい高度な社会を実現するためのサービスが生まれるであろう。

CPS(Cyber-Physical System)の仕組み

IOTによってあらゆることが自動化する?

このように、さまざまなものと有機的につながることができるIOTは、すべてがうまく機能すれば、物流センターにおける、目であり、耳であり、手足であり、頭であり、すなわち「人間の代わり」になり得るものになるほどのポテンシャルを秘めている。
扱っている商材によっては、大手紳士服量販店のように96%くらいの自動化率を達成している物流センターも存在する。
ただし、物流現場においてICTが活用され、IOTの技術が導入されるようになっても、すべての自動化はやはり困難である。一般の物流センターでも作業効率省力化のための機械はたくさん導入されているが、ロボットには人間のような手指の動きが難しく、一つひとつをピッキングしたり仕分けしたりすることはできない。
だからロボットはダメだという発想に行くのではなく、人間がやったほうがいいことは人間がやればいいのであって、すべてを機械化することが重要なわけではない。

重要なのは、IOTを介して集まってくるデータをどのように扱うかということだ。人工知能でできること、ロボットにやらせるべきこと、人間がやるべきこと。この三点をきちんと整理してエンジニアリングできる人間が物流センターの設計をしないと、いくらIOTの活用だ、ロボットの導入だといっても、効率が上がるとは考えにくい。
今の時代、ICTをはじめ、本当に総合的に先を見て判断していく必要があり、どのような戦略や技術を用いていくにしても、本来の目的にしっかり根ざしたうえで、「お客さんは何を求めているのか」という発想がないと、継続的な成果は出ないのではないだろうか。

さらにロジスティクス全体でいくと、個人に対して先読みサービスの提供をいかに行うかという話題になってくる。
Vol.1のコラムでも触れたように、私のプロフィールが蓄積されていれば、私が駅の改札を通ったとき、その情報を受けて、さまざまなレコメンドを行うことが可能になる。たとえば、事前に部屋のエアコンを入れておく、必要であろう商品を先回りして自宅に届けるなど、データをいかに分析し、適切なサービスを提供するか、さまざまな可能性が考えられるだろう。
こうした流れを受けて、最近では、統計学やコンピュータサイエンスなどを駆使して、膨大なデータを整理・分析して「使える情報」にしていく「データサイエンティスト」という職業が注目されている。データを分析するためのエンジンを水面下で秘かに開発している人たちもいて、今後、このジャンルがどのように進化していくか、目が離せない。
今では、インターネットもクラウドも、大企業に限らず誰もが安価に使える環境にあり、そうなった以上は、IOT技術を含んだICTを活用したロジスティクス戦略に取り組むのがむしろ当然で、それをしない企業も個人もアウトだということは肝に銘じておくべきだろう。ユーザインターフェース用デバイス(PC、タブレット、スマホなど)とネット環境さえあれば、自前でサーバーを買う必要すらない。ローコストにしてノーリスク。取り組まないという選択肢は有り得ないというのが、私の結論である。

トークセッション ゲスト:株式会社ABEJA 代表取締役社長CEO 岡田陽介

トークセッション ゲスト:株式会社ローランド・ベルガー プリンシパル 小野塚 征志

トークセッション ゲスト:株式会社アッカ・インターナショナル代表取締役社長 加藤 大和

スペシャルトーク ゲスト:株式会社ママスクエア代表取締役 藤代 聡

スペシャルトーク ゲスト:株式会社エアークローゼット代表取締役社長兼CEO 天沼 聰

秋葉淳一のロジスティックコラム

トークセッション:「お客様のビジネスを成功させるロジスティクスプラットフォーム」
ゲスト:株式会社アッカ・インターナショナル代表取締役社長 加藤 大和

トークセッション:「物流イノベーション、今がそのとき」
ゲスト:株式会社Hacobu 代表取締役 佐々木 太郎氏

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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http://www.daiwa-logitech.com/column/index.html

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