土地活用ラボ for Biz

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コラム No.27-59

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第3回 物流DXをアジェンダに社会課題を解決する株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 株式会社Hacobu 代表取締役CEO 佐々木太郎

公開日:2021/03/19

物流DXとは何か

秋葉:「物流DX」という言葉をよく耳にするようになりました。私もあえて使ったりしますが、「物流におけるデジタルトランスフォーメーション」ということなのですが、これは、単にITを導入する、何かをデジタル化して終わりということではなく、いつまで経っても終わりがないというか、ずっとやることが続いてくような気がします。今、このタイミングで物流DXと言ったとき、何をすべきだと捉えればいいでしょうか。

佐々木:そもそもDXという言葉の意味は何かという話はありますが、トランスフォーメーションとは変わることですよね。要は、単なるITツールの導入ではないということが、デジタルトランスフォーメーションという言葉の意味なのだと思います。では、何がトランスフォームするのかというと、ビジネス自体のトランスフォームです。本来であれば、DXとは、デジタルを手段にしてビジネスをトランスフォームすることなのだと思います。 今、実際にいろいろなところで「物流DXですよね」という話は出ますが、ビジネスをトランスフォームすることまで視野に入れてその言葉が使われているかというと、そうではないことがほとんどでしょう。
しかし、個人的にはそれでもいいと思っています。「そんな言葉はどこかの人がマーケティング的なトレンドをつくるためにつくっただけだ」というような、ネガティブな意見もありますが、やはり標語は大事だと思うのです。そして、さらに大事なのは、物流の問題を経営アジェンダにすることです。これまで、物流の現場で起こっていた問題や課題は、経営アジェンダには上がらなかったことが多かったのですが、「物流DX」と言われたとたん、経営アジェンダになっていったのです。そういう意味でもキャッチフレーズは非常に大事です。
そういった意味で考えると、本来は事業のトランスフォームまでしなければなりませんが、そこまで描けないとしても、既存のレガシーの仕組みを真っさらにつくり変えて、「2025年の崖」※を越えていくところまで描いてやっていかなければいけません。そこまで持っていくためには、経営に対して、物流DXが効果を出せるということを説得しなければいけません。
ただし、いきなりWMSをコボルの仕組みから新しいクラウド型に変えようとしても、年月がかかってしまい、成果が見えない状態が続いてしまうと、そもそもプロジェクト自体にリスクがあると判断され、止められてしまう可能性があります。
だとすれば、そこまで重たくない部分で、クイックウィン的(すぐに成果が出る)にデジタルツールを導入し、インパクトのある結果をまずつくり出すことが、最初のステップとしては大事だと思います。
一方、「だからPOCをやる」と言う人たちもいます。私はこれにはネガティブな考えです。POCという名前を付けた途端、誰も本気にならないからです。誰も本気にならないので、導入しても効果は出ません。クイックウィンで、短期的に結果を出すことができるデジタルの導入ではあるけど、本気でやることが大事な気がします。

  • ※2025年には21年以上稼働しているレガシーシステムがシステム全体の6割を占めると予測されており、2025年までに予想されるIT人材の引退やサポート終了などによって、国際競争への遅れや我が国の経済の停滞などを指す。

秋葉:そこの本気を出してもらうために物流DXという言葉を使うし、その意味も伝えなければなりません。今までのシステムを使っているのは、仕事の仕方も今までの延長線上でやればいいと思っている会社が圧倒的に多いからですよね。現実にはいくらでもコボルの仕組みが入っています。今までと変わる必要がないと思っている人たちが大勢いるのが事実です。その人たちに気づいていただくためには、物流DXのようなキャッチーな言い方が必要なのかもしれませんね。

佐々木:秋葉さんは物流DXをどうお感じになっていますか。

秋葉:私自身は、言葉としてしか使えないと思っています。佐々木さんがおっしゃるように、トランスフォームするという意味でいくと、どのレベルまでトランスフォームするのかという点において、非常に意味のある言葉です。しかし、そういう理解をしている人はおそらく少数で、どちらかというとデジタル化くらいの捉え方をしている人がほとんどではないでしょうか。言い方を変えると、「システムを入れればいいんですよね」「情報の見える化ができればいいんですよね」といった話です。しかし、本当は見えた情報をどう使うかであって、その結果としてどうやって仕事を変えていくのかというところまでいかなければなりません。そこが中途半端に捉えられがちなのであまり好きではないのですが、一方で、検索キーワードの上位にくるような言葉としてはすごく意味があると思います。

佐々木:1990年代の後半から2000年にERPの導入が流行ったとき、ERPがなぜ多くの企業に導入されたのかというと、経営陣が経営課題としてアジェンダにしたからです。要するに、SAPやオラクル、ITコンサルタントの人たちがそういうアジェンダ設定をしたのですね。単なる会計システムの導入ではなく、それを使ってビジネスをトランスフォームするというところまで絵を描いて提案したから、経営課題としてのアジェンダになったのです。いかに経営アジェンダにするかということに対して、われわれ会社としても取り組んでいますし、業界として取り組まなければいけないことだと思っています。

佐々木:最近は、物流DXからいかにESGにつなげるかが、経営アジェンダ化にとって大事だと思っています。いかにつなげるかと言いましたが、実はつながっています。つながってはいるのですが、つながりをロジカルに説明できている人たちがいません。ロジックをきちんと組み立ててお客様にお伝えすることができれば、彼らがそれを経営に対して話すことができるようになります。
ESGは経営アジェンダです。先ほどお話ししたホワイト物流も、経営アジェンダ化されています。さらに、ESGになるとよりインパクトが出ます。最近では、ESGのレーティングが資本コストにどれだけ影響を与えるかといった研究もされています。ESGに関わる社内の投資をすると財務インパクトがある、ということがわかってきました。GPIFや日本のファンドも、ESG銘柄に対して投資をするような動きが出てきています。そのような中、物流はそこに刺さるテーマなのです。ただ、残念ながら、そこに関わっている人たちがそれをうまく説明できないので、経営者の頭の中で、物流を効率化するとESGにつながるというイメージがまだないのです。

秋葉:大和ハウスグループにとっても、これは大きなチャンスだと考えています。

物流DXからESGへ

秋葉:これからHacobuはどのような方向に進むとお考えですか。

佐々木:去年1年で、ツールの浸透と、データを使うと「運ぶを最適化」できるというところの初期の段階がやれたと思います。ここからはツールを広げていくのはもちろんですが、データを使うと、サプライチェーンに関わる人たちみんながハッピーになっていきます。三方良しで、何かを失う人はいないはずです。その具体化に取り組んでいくことが、この後やりたいことです。

秋葉:お客様がそれをどれくらいやってくれるかにもよると思いますが、Hacobuという会社として見たとき、その進捗をどのように確認するのですか。

佐々木:今の具体的なアウトプットとしては、ユーザーの中での共同配送や車両のシェアが行われています。それがどれだけのトランザクション量になっていくか、というところをKPIとして設定したいと思います。

秋葉:先ほどのESGのお話にあったように、Hacobuのシステムを導入してもらった結果、そのHacobuのシステムが全体にどれだけの影響を与えたか、というような考え方はありますか。

佐々木:ESGの中でいうと、まずは二酸化炭素の排出の話があります。これだけの共同配送がトランザクションとして行われると、そこからの二酸化炭素量の削減を計算することができます。このKPIはダイレクトにESGにつながります。
また、ドライバーさんの拘束時間や待機時間の削減など、他にも良い影響を与える数字があります。ここもまさにESGで、レイバーマネジメントという項目になります。
また、付加価値の低い作業を労働者にさせることは、ESGにとってはネガティブなことです。紙ベースの仕事ばかりやっている部門にデジタルツールを入れれば、より付加価値が高い仕事をすることができます。その付加価値が高い仕事に対してトレーニングすることが、ESGではプラスになります。これからHacobuの主軸サービスとなる「MOVO Vista」というプロダクトを使って、転記する仕事をよりインテリジェントな仕事に変えていく、倉庫の前での待機時間を削減するなど、まさにレイバーマネジメントに効いてくるので、ESGにインパクトを与える話だと思います。

秋葉:そうした指標を使って、Hacobuの世の中に対するインパクトや成果を見ることができたら面白いですね。物流は、そこで仕事をしている人たちが、今までどちらかというと辛い目に遭わされているケースが非常に多い業界でした。しかし今は、新型コロナウイルス感染症の影響もあって、物流がないと困るとか、自分たちが楽をするためには、配送を含めてそういったことにきちんとお金払う必要があるという雰囲気になってきています。
次は、物流に関わる企業がESGに対してどれだけ貢献できているか、ということが重要になります。というのも、学生たちがこれから就職活動をする上で、会社を判断する一つの基準になるからです。どのような会社でも潰れるような、何が起こらない世の中では、そうした指標が就職活動の中で会社を選ぶ基準になるのです。そこをいろいろな企業に出してもらいたいですし、だからこそ、Hacobuがそうしたものを指標として使っていってほしいですね。経営アジェンダとしてもありますが、こういうふうに世の中に貢献しているということを出していってほしいと思います。Hacobuという会社が社会にどれだけ貢献できたかということは、大和ハウスグループ全体としても、私から見ても非常に大きなことです。Hacobuには非常に期待しています。

佐々木:Hacobuにはコーポレートバリューがあります。「Give it a try. とりあえずやってみる」「Respect others. チームメンバー、取引先、顧客、あらゆる人を同じ人として尊敬する」「No boundaries. 能力が高い人は、それは自分の仕事ではない、とは決して言わない」「Speed-focused. 超速!超速!超速!」「Get things done. 目的を達成するためにとりうる手段はすべて講じる」という五つのバリューです。
ところが、中心が抜けていると思って、先週あたりから付け加えているものがあります(笑) こういったことすべて、何のためにやっているのかというと、社会課題を解決するためなのです。それで、真ん中に「Solve social issues 社会の課題を解決する」を据えました。Hacobuに集まってくる人、パートナーの方々は、Hacobuの「社会課題を解決するために頑張る」というところに共感してくださっているのだと思います。そこに共感し、応援していただき、社員も集まってきます。ユーザーにも、ツールの良さだけでなく、そこに共感してくださっている方々がいらっしゃると思います。社会課題をいかにテクノロジーで解決するのかというところがレゾンデートルなので、利益に走ってはいけないと。手段としてのIPOは考えますが、利益の追求のためだとしたら、Hacobuは終わってしまうと思っています。

秋葉:いろいろなうねりが重なり合って、さらに大きな出来事が新型コロナウイルス感染症だったと私は思っています。物流に関わる人たちだけでなく、すべての人たちが否応なしに考えるきっかけになったのではないでしょうか。コロナ自体は良いことではありませんが、一斉に考えるきっかけという意味では、これを活かさないといけないと思っています。それこそトランスフォームするという意味ではチャンスです。フレームワークスもHacobuもそれをお手伝いする会社ですから、それに気づいてもらうようにすることが、私らがやらなければいけないことだと思っています。また3年後に二人の対談で、「何も変わらなかった」と言うことがないようにしたいですね(笑)。

佐々木:フレームワークスのこの一年はどうなりますか。

秋葉:大和ハウスグループに属するフレームワークスの秋葉という立場からいうと、ロジスティクス領域のサービスプロバイダーの集合体であるダイワロジテックをつくったときの考え方をもう一度改めて思い返していただくという意味も含めて、横の連携を改めて強くしていきたいと思っています。Hacobuにも協力していただいて、他の会社との連携を強め、デジタルテクノロジーを使って輪をもう一度広げていく。それが結果として大和ハウスグループ全体の差異化になると思うので、力を入れていきたいと思っています。
フレームワークスやモノプラスという会社で考えると、ソフトウェアの構造を考えたとき、基幹システムがあって、オーダーマネジメントの層があります。私はそこをオムニチャネル層と言っていますが、そして、WMS(Warehouse Management System)の層があって、その下にはWES(Warehouse Execution System)とかWCS(Warehouse Control System)と言われている層があります。私はこれらを再定義し、本質的な物流業務のシステム構築として、提案したいと考えています。
もう一つは、実行系のロボットをどうやって制御するかです。マルチベンダーになってきて、なおかつロボットの進化が早いので、ここも個別にスクラッチでつくるようなことではなく、きちんと構造化したソフトウェアで開発しなければいけません。今、そこで製品開発をして、お客様に提案を仕掛けています。私らはどうしても倉庫の中のことが中心になるので、個別の企業に対しての貢献にはなりますが、これが出来上がると、資源が少ない会社、時間がない会社の中でもロボットやマテハンのシステムをシェアしやすくなります。少し回り道をしますし、時間はかかりますが、もう一度シェアリングというところに貢献できると思っています。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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