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コラム No.27-16

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 「物流イノベーション、今がそのとき」Ⅰ:物流をIT化することの意義 フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 株式会社Hacobu 代表取締役CEO 佐々木太郎

公開日:2017/08/25

大和ハウス工業の新たな事業戦略として「物流事業」への取り組みが注目されています。革新的なサービスを実践するベンチャー企業とのパートナーシップも本事業の特徴であり、その中核となる物流センターのシステム開発を担うのが、秋葉淳一代表取締役社長率いるフレームワークスです。
このコーナーでは、フレームワークスの秋葉淳一氏がホスト役となり、本事業の背景や物流業界が抱える問題点などについて、パートナー企業代表の皆さんと大いに語り合っていただきます。

今回のゲストは、株式会社Hacobu 代表取締役CEOの佐々木太郎氏。物流をIT化することの意義や可能性について、最先端で業界を引っ張るお二人ならでは興味深いお話が展開されています。

ITと物流をつなげようとする試み

秋葉:まず、株式会社Hacobuの事業について、佐々木さんから教えていただけますか。

佐々木:「運ぶを最適化する」をミッションに、2年前に創業しました。 もともと私はITおよびビジネスコンサルティングのバックグラウンドを持つ人間なんです。その中でメーカーの物流子会社におけるターンアラウンド(事業再生や経営改革)プロジェクトを率いる機会があり、そこで初めて「B2B」の物流の世界に触れました。
一般的には、物流といえば宅配便、すなわち「B2C」のイメージが強いと思いますが、その裏にはもっと大きな企業間物流の世界があって、マーケットの規模も断然そちらのほうが大きいわけです。小口貨物配達サービスである宅配便のマーケットが3兆円規模だとすると、企業間物流は10兆円くらいあります。にもかかわらず、この業界はほとんどIT化されていず、非常にアナログな世界でした。ここに私のITのバックグラウンドを活用することで、何かしら貢献できるのではないかという思いで創業に至りました。

秋葉:「ITと物流をつなげる」という感覚だったのでしょうか。

佐々木:そうですね。B2Bの企業間物流の世界ですと、大手のSIベンダーが膨大なコストをかけて一から仕組みをつくります。ただ、実際に荷物を運ぶ車両の95%以上は中小の運送会社のもので、そこにはITの恩恵がまったく広がっていませんでした。そこで、できるだけ使いやすく、かつ普及できるような価格帯でのサービスをITでつくり、提供していくことが重要だと考えたんです。

秋葉:物流をITで管理していこうという発想は、私が考えていることと一緒です。ただ、配送より物流センターのほうがIT化しやすいですし、実際に進んでいますよね。
日本に運送会社はおよそ6万社ありますが、佐々木さんがおっしゃったように、その95%が中小企業ですから、IT化やIT投資がかなり難しい状況にあります。元請けとお客さんがいくら電子データでやり取りしたとしても、全体としてのIT化はなかなか進まず、どうしても電話やFAXの世界が残ってしまうんですね。
業界大手の会社でも、車両情報などはシステムの中に入っているものの、そのつどの情報更新については電話やFAXを使っているところもあります。巨額のIT投資ができる企業は、あくまで限定されているということです。

佐々木:たとえば、ある大手物流企業などは何百億というコストをかけてそうした仕組みを構築していますが、そういったことは中堅企業であっても難しい投資になります。

秋葉:それをどうやって普及させるかなんですよね。
人手不足が叫ばれている中、まだ難しい面はあるにせよ、物流センターでは将来的にロボットや人工知能(AI)という手段があることは認識されています。
一方で、トラックドライバーの数を物理的に減らせるかというと、すごく難しいですよね。自動運転はおそらく数年後には実現レベルに至るでしょうが、だからといって、その辺を走っている車のすべてが自動運転になるかというと、それはまったく違います。自動運転が普及したとしても「自動運転=ドライバーがいらなくなる」という話ではなく、何かあったときのために、結局は運転免許を持っていて、かつ飲酒していない人が乗車している必要があるわけです。
それでも何か問題がない限りはただ前を見て座っていればいいので、ドライバーの労働環境は今より圧倒的によくなるでしょうが、ドライバーの数自体は減らないだろうと思います。

佐々木:飛行機もオートパイロットにはなっていますが、必ず機長と副操縦士が乗っていますものね。

Hacobuが進める三つのソリューション

秋葉:物流をIT化しなければならない背景として、他にどんな問題点が考えられますか。

佐々木:まず、利益率が非常に低いことです。労働生産性が低いので、そうなってしまうわけです。その原因となっている労働集約型のビジネスモデルについては、自動運転や省人化が進むこと徐々に解決されていくでしょう。
それ以外にも、データコミュニケーションがすべてアナログであることも、労働生産性の低さの原因になっています。Eメールやチャットツールなど、リアルタイムでのコミュニケーションが当たり前になっている世の中で、先ほど秋葉さんもおっしゃっていたように、物流業界は未だ紙に書いてFAXで送るような世界です。書く時間も送る時間も必要で、一人が生み出せる仕事量が圧倒的に低い状況です。 こうした部分をITで改善していかねばならない、と考えています。

秋葉:その点は物流センターの内部と同じですね。先日、ある卸しの物流センターに行ったところ、比較的システム化されているほうでしたが、未だに伝票や帳票が打ち出されていました。人間が仕事をする以上、間違える可能性があるので、プリントしてチェックする必要があるわけです。しかし、ITシステムを構築することによって、不要になる工程はいくらでもあるはずです。
そこで、Hacobuの出番となるわけですが、今、どんなことを進めていらっしゃるのでしょうか。

佐々木:三つのソリューションを考えています。一つは「トランスポート・アサインメント」といって、受発注の仕組みをオンラインで行うもの。二つ目が「トランスポート・ビジビリティ」といって、配送案件を運んでいるトラックの「見える化」を実現するもの。これは、GPSの端末を車両に付けて今どこにいるのかわかるようにする機能といえばわかりやすいのではないでしょうか。三つ目は倉庫の予約機能です。トラックは荷物をピックアップして、運んで、最終的にどこかに降ろすわけですが、そのとき倉庫で滞留して時間をロスしがちです。それを防ぐソリューションの開発を大和ハウス工業さんと一緒に進めています。

秋葉:三つ目の待機時間問題については、国土交通省からも指摘されていて、業界を挙げての大きな課題となっていますね。

佐々木:今は道路と倉庫が完全に分断されているので、そういう事態が起こるわけです。それを防ぐには、受注が入って、荷物を運んで、最終的に倉庫に降ろすまでを、シームレスにつなぐ「ワンプラットフォーム」を構築する必要があります。

秋葉:車両の待機時間というのは、そのエリアに入った瞬間からカウントされるので、それがシステム化されて、倉庫に降ろす時間を自動的に予約できるようになれば、ドライバーはそれまでの時間を休憩など有意義に使えるようになりますね。

佐々木:データが蓄積していくと、「何時に出たら、どこで、どのくらい待たないといけないか」ということもわかってきますから、逆に「出る時間」に対してのレコメンデーションも出すことができるようになります。

秋葉:全体がつながってデータ化されればこそ可能になることですよね。現状、物流センターは来たものをその場で捌くしかないので、トラックがエリアまで来たら「今はバースが一杯だから待機場所で待っていてください」などと指示を出すしかありません。これは間に人間が介在するからこそ起こる分断です。

ITを通してすべての情報をシームレスにつなぐ

佐々木:ただ、ITを通してデータがすべてつながっているような世界というのは、未だにそれほど実現はしていません。比較的、進んでいるのが半導体業界で、2000年くらいからグローバルなサプライチェーンの構築に取り組み、成果を上げています。
半導体業界のサプライチェーンは多段階で意思入れの入る多層構造になっているのですが、以前はそれをすべてオフラインで回していたんです。
当時、コンサルティング会社にいた私は、それをEDI(電子データ交換)でつなげて、一つの場所にデータがすべて入るシステムをつくり、自動的に需給調整を回せるようにしました。当時としてはかなり進んだ仕組みで、今も半導体業界は他と比べるとずいぶんIT化が進んでいると思います。

秋葉:半導体はどんどん新しい製品が開発されるので、どれだけ短い時間で生産して一気に売り出せるかの勝負なんですよね。旬の時期に利益をあげて、また次の設備投資をする。そういうサイクルで回していかないと生き残れない世界です。タイムリーに何ができるかという時間概念が非常に重要な業界なので、新しい生産ラインや仕組みづくりに投資して当たり前。そこに自分たちの価値があるわけですから。
一方の物流は、「言われたので荷物を取りに来ました、運びました」ということでやってきた世界ですから、こういう時間価値の概念はまったくないですよね。

佐々木:時間概念の貴重さと、もう一つ、ボラティリティ(需要変動の度合い)が高いかどうかもあるでしょうね。それが、シームレスに情報を連携すべきかどうかということに影響すると思うんです。半導体の世界はまさにボラティリティの世界です。市況が常に変化するので、生産とロジスティクスに対してタイムリーにその情報を連携していかないと在庫が溜まってしまう。これを「ブルウィップ効果」※といいますが、それが非常に激しい業界です。
実は、物流やロジスティクスも「いつ車が必要とされるか」ということのボラティリティが非常に高い世界です。その高さに対して、情報をきちんと連携してブルウィップ効果を低減していかないと、車両がだぶついてしまいます。そういうわけで、物流やロジスティクスはグローバル・サプライチェーン的な考え方が非常にフィットする世界でもあるということがいえると思います。

※ブルウィップ効果:サプライチェーンにおいて、川下で起こった小さな需要変動が川上に伝播されるに従って大きな需要変動になる現象。

秋葉:いわゆる「物流」ではなく、「ロジスティクス」の観点から行くと、それはごく当たり前の話なんですよね。だからこそ、改めてそこをきちんとやっていこうとしているのが今の状況です。
そのためには、まずたくさんの正確な情報が必要であり、そのデータをコンピュータが理解できる形でシステムに入れ、さらにきちんとデータ管理していくことが大前提になります。それをどうやってリアルタイムで行うか、という話なんです。

<次回に続く>

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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http://www.daiwa-logitech.com/column/index.html

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