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コラム No.27-48

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第1回 モビリティを再編し、物流起点のイノベーションを起こす株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 流通経済大学 流通情報学部 教授 矢野裕児

公開日:2020/04/30

物流危機による意識の変化

秋葉:先生の名刺を拝見すると「ロジスティクス・イノベーション推進センター」とありますね。先生のご専門について教えていただけますか。

矢野:流通経済大学の流通情報学部に所属し、大学院と学部で教えています。平成30年度には文部科学省の「私立大学研究ブランディング事業(タイプA社会展開型)」に採択され、新たにロジスティクス・イノベーション推進センターを学内に作りました。今の専門はロジスティクスですが、もともとは建築学科出身で、ずっと都市計画を研究していました。現在は、ロジスティクスを中心に、災害時対応、省エネルギー、卸売市場、大型店関係などを研究しており、国土交通省の委員会、例えばMaaS(Mobility as a Service)などにもかかわるなど、ロジスティクス(物流)の幅広いフィールドでお手伝いさせていただいています。けっきょく、物流は様々な分野に関わってきますが、重要でありながらも、物流はメジャーになっていないのが現状ではないでしょうか。

秋葉:おっしゃるとおりです。国土が狭いからなのか、物流は存在していることが当然だと思われているからなのかわかりませんが、なかなか表舞台に出てこない印象ですね。ヨーロッパであれば陸路で国を跨ぐことになりますし、アメリカのように国土が広ければどのように届けるかを考えなければなりませんので、彼らは効率を重視し、物流はどうあるべきかを考えなければなりません。日本でもここ数年、物流起点のイノベーションや生産性革命といった話を聞くようになってきました。矢野先生はどうお考えですか。

矢野:東日本大震災をきっかけに、物流に対する意識は大きく変わりました。例えば、「サプライチェーン」という言葉は、当時はほとんど使われていませんでしたが、その後マスコミ等でも多く使われるようになりました。さらに、最近の宅配便の再配達問題で一気に意識が変わりました。当時、私は「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」の委員長をやっていたのですが、今まで国土交通省の物流関連でマスコミの方々が揃うなどあり得ないことだったのが、ほとんどのマスメディアが揃っていて驚いたのを覚えています。物流業界にしてみれば再配達問題はそんなに大きな問題だと捉えていなかったのですが、一般ニュースになって急に注目されて、いろいろなところで取り上げられるようになりました。わかりやすかったのでしょうね。この「わかりやすい」ということは大事だと思います。着荷主といっても誰もよくわからなかったのが、宅配便の着荷主は消費者ですから、「サービスを提供するにはコストがかかりますが、あなた方は無理なサービスを要求していませんか」といえば理解してもらえる面もあります。

秋葉:メディアの取り上げによって、消費者は宅配便に関してはだいぶ敏感になりましたが、サプライチェーン全体での視点には、立ちづらいですよね。

矢野:消費者は、宅配のように直接サービスを受けるものであれば意識しますが、「小売りで買う」という毎日の行動が物流にどう結びついているかまでは、なかなか意識が及ばないのでしょう。消費者の小売りでの購買行動が変われば、小売りも変わらざるを得ません。そこまで至っていないのは、小売りの仕組みの問題もありますが、消費者の意識がなかなか変わらないという面もあると思います。
企業によって大きく違うのですが、異なる取引条件が効率を悪くしていることは間違いありません。今、リードタイムを伸ばすといった話も出ていますが、メーカーと卸はある程度進んできているものの、小売りでの動きはまだ弱いと思います。小売りの各企業は独自の仕組みを作ってしまっているがゆえに、なかなか動かしにくいということがあります。また、多頻度小口納入やジャストインタイムなどといわれていますが、きちんと計画的にやっている小売りもあれば、まったく計画ではないところもあります。計画的でない小売りがジャストインタイムをやれば、真似ているだけで最悪の状態になってしまいます。

秋葉:ジャストインタイムをやろうと思ったとき、例えばトヨタであれば、「三発内示」といって3カ月前に内示を出しています。それをやるためには、工場の生産計画を中心にして販売の数字も必要です。実は全部がつながっていて、ジャストインタイムでモノを持ってこられるようになっているのです。ところが、ジャストインタイムで持ってくるところだけを切り取って、「すぐに荷物を持ってこい」というような話をしてしまっているのが実態だと思います。

矢野:トヨタでは、極端な場合、数時間前に発注したものが納品されるといわれていますが、そこだけを見てジャストインタイムだと捉えてしまうことがあります。よく考えれば、急に入った注文に対してどこでもそんな対応ができるわけがないのです。秋葉さんがおっしゃったように、内示の情報が入っているからできるわけです。情報を共有しながら、少しずつ調整していく必要があります。また、たとえば、今まで受注締切りが13時だったのを11時に、2時間前倒しをしただけでも、やはり効果があるのだそうです。そう考えると、少しの変更でいろいろなところが変わる可能性があります。そこをうまく積み上げられるといいと思います。

標準化なき共同化は幻想にすぎない

秋葉:一部だけを変えても、かえって反故が出てしまうケースもありそうです。

矢野:おっしゃるとおりで、一部だけ変えようと思ってうまくいかないことが多いでしょう。その典型が共同化です。共同化したらぜったいにうまくいくと思われがちですが、それは幻想です。共同化したらコストが下がるといいますが、それだけやったとしても、全部とはいわないまでもほとんどが失敗するでしょう。共同化によって、マッチングがうまくできてコストが下がるような条件はそうはありません。ただし、例えばリードタイムを変える、共同倉庫にする、納品のタイミングを変えるなど、いろいろと手を打てば共同化がうまくいく可能性はかなり上がります。

秋葉:いくつか事例が出ていますが、一緒に会社を設立してまでやる場合、それが本当にできたらすごいことです。会社を一緒にするということは、文化も処遇も違うわけですから、それを一回壊せるかという話だと思います。簡単な話ではなく、相当な痛みを伴います。共同でやるということはうまくいかない要素が非常に多いわけです。それをきちんと考えて潰していかなければならないのですから、難しいのです。パレットを統一化する、ケースサイズをいくつかのパターンにする、といったところから入るのであれば、一緒に運ぶということ以前に、効率化できるところが確かにあると思います。それが先にあるのだとしたら一緒にしてもできると思いますが、そこをまったく合わせていない中でやっても、やはり難しいと思います。

矢野:少なくとも、標準化の議論をしておかなければなりません。さらに、先ほどお話ししたリードタイムのようなルールを変えていかないと、なかなか共同化には乗らないでしょう。そこをやるということは、けっきょく着荷主を巻き込まないと共同化はうまくいきませんから、発荷主と着荷主との強い連携が必要です。

秋葉:大手コンビニ3社で、共同で配送をやるという話も出てはいますが、それぞれのコンビニがそれぞれの最適を求めて作り上げた物流網なわけですから、それを一緒にするのはかなりハードルが高いですよね。

矢野:過疎地であれば可能性は高いですが、東京のように密度が高いところは各企業がギリギリの仕組みを作ってしまっているので、単純に共同化したら、かえって経路が複雑になってしまってほとんど意味がありません。関連する企業が共同の物流拠点を利用するのであれば別ですが。

秋葉:運ぶ量は決まっているわけですから、共同でやるとなると、運ぶエリアを小さくしないと1台の車では運べません。先生がおっしゃるように、都会・地方・中くらいの場所で整理をすると、やったほうがよいことはそれぞれ違いますし、ましてや人口が減っていくスピードもそれぞれ違います。地方でもエリアによって変わってきます。今まで、物理的なものを建てる場合、人口が減らないことを前提にするのであれば、建てたものを変える必要はありませんでした。なぜなら、そこを通過する量は減らないからです。けれども、人口が減るときは非常に難しくなります。減り方にはバラツキが出るので、あるものがどのタイミングで不要になるのか真面目に考えなければなりません。

矢野:人口密度が減るところは難しいですね。同じ地方都市でも県庁所在地とそうでないところ、同じ市の中でも役所があるところから離れていくと、急激に人口が減っていきます。過疎地、もう少し大きな都市、大都市では、それぞれレベルが大きく違い、物量も違いますから、場所に合わせたかたちで仕組みを作らないといけません。また、特に幹線輸送は危機的な状況です。ドライバー不足が一番顕著なのが長距離です。ドライバーがいないのですから、改善基準告示を守っていたら回せなくなるところまできています。

秋葉:そこで出てくるのがスワップボディ(※)の話です。大和ハウス工業も新富士に中継地として使える物流センターを置いていますし、スワップボディの考え方は間違っていないと思います。ところが、交通渋滞が起きると、新富士ではない場所が、時間という意味での中間地点になる可能性があります。中間なのは距離ではなく時間なわけです。そこをどうやってアジャストするかが非常に難しいところです。連結車両の話もやっていますが、これもけっきょくは2人で運んでいるわけです。
そこで、エリアを切って、その地点までは計画的に運ぶことができないかと考えています。エリアの切り方は、エリアを2階層にして、そこから1段下のエリアは柔軟に対応できるようにしておきます。幹線の部分は計画的に動かさないとおそらく無理でしょう。過疎地であればそれなりの薄い頻度で行き、東名阪であれば、高頻度で車のやり取りがあったとしてもそれなりに積載されています。あとは、時間拘束のところをどうやってアジャストするかだと思っています。
※着脱や自立が可能な荷台とシャーシに分かれている特殊車両

矢野:あとは、フェリーをうまく使うことが有効です。

秋葉:おっしゃるように、海上輸送をもっとうまく使えるかは大きなポイントだと思います。例えば車であれば、営業用に貨物を運んでお金を得る免許と人を運んでお金を得る免許は違うため、混載することができませんが、フェリーであれば可能です。それに、フェリーやJR貨物は時刻表が決まっているため、だからこそ計画運行で無駄なくできることもあるはずです。車の場合、30分ずらしても、1時間ずらしても何とかしてくれます。今まではそこがトラック輸送のメリットになってしまっていて、それゆえ無理を押し込んで、気がついたらドライバーさんがギリギリのところで頑張ってくれているわけです。先ほど、締切りの時間を2時間変えただけで大きく変わったというお話がありましたが、本来、そんなに変わるほうがおかしいのです。ギリギリでやっているところに2時間なので、効果が大きいと感じるのではないでしょうか。トラックも、幹線の時間をきちんと決めるためには、計画的に送り込まなければなりません。そのために、どれくらいの数をどのタイミングで送り込むのか、みんなで真面目に考えるべきだと思います。

矢野:フェリーをシャトル便のように、便数を増やして誘導するなど、やり方はいろいろあります。JRは旅客との関係があり、人優先なのでどうしても難しい面がありそうです。あとは新幹線を使うという話もありますが、JR西日本、JR九州、JR東日本であれば可能だと思います。

秋葉:ダイヤに余裕がありますからね。フェリーも地方の新幹線もそうですが、本数が少ないから使われないのです。昔の田舎のバスや電車がそうであったように、本数が少ないから利用されなくなり、利用者がいないからさらに本数が減ります。それなりの頻度で行くのであれば利用者は増えます。

モビリティの再編

矢野:例えば農産物の場合、繁閑差が大きく、持っていくルートの物量が多く、その逆ルートは意外に動いていません。そこで上下合わせないと、片道だけでペイさせようと思うと大変です。南九州も北海道もそうなのですが、首都圏から持っていくものは、九州であれば福岡、北海道であれば札幌を経由して行くことが多いので、うまく合わないのです。そこをうまく合わせることができればいいですね。これからは拠点も集約化から分散化になっていくので、もう一度道路、港湾等のネットワークを組み直せば、効率的なやり方はあると思います。残念ながら、現在、国土計画として、ネットワークのあり方を検討し、インフラを再編するといったことが、ほとんど考えられていないのが問題です。例えば、フェリーに関連して、徳島港で港湾を作り直して大型船が入れるようになるなど、一部で動いているところはありますが、あまり大きな動きにはなっていません。本当は全部やり直す、あるいは、組み替えたほうがいいのです。昔のような、需要が増えるから道路を作りましょうという議論はもはやあり得ません。サービス、ネットワークを持続するためにはどうしたらいいのか、何が最適なのかを考え、いろいろな輸送手段を組み合わせたかたちで、もう一度ネットワークを再編する議論をしなければならないのです。

秋葉:それほど今のトラック輸送に関して課題が多いということですね。

矢野:私自身は、長距離輸送が問題になっても、首都圏は放っておけばおそらく何とかなると考えています。需要がたくさんあるので、要望があればなんとか持っていくことができます。問題は地方です。地方は「持っていけない」「持ってきてくれない」の両方です。これからは、不動産価格や人件費は別ですが、輸送コストによって物価は地方のほうが高くなります。これは非常に大きな問題です。
小売業においても、以前と比べて、都市部と地方部では明らかに収益構造に違いがでています。地方では赤字になっているケースも多く、地方部に出店することがリスクになってしまっています。コストが上がってしまうと、全部の小売店に影響します。

秋葉:だから、どんどん店を閉める方向になっていきますよね。そうすると住んでいる人が余計に不便になって、どうするのかという話になるのに、モノが届かない。私たちもそうですが、東京に住んでいると、その環境を中心にしかイメージすることができないことも問題だと思います。逆に、地方に住んでいる人は、自分たちが住んでいる環境をベースにして想像しています。それゆえ一つの議論をしようとすることに、非常に難しさを感じています。

矢野:地方創生といわれていますが、物流がネックになるかもしれません。輸配送サービスにおいても、例えば宅配便がユニバーサルサービスとして成立するかという議論も現実に出てきています。サービスを持続していくためには、あるいは、地方にいることのメリットをもっと出すためには、物流のところを変えていかないと成立しません。これは物流だけでなくモビリティすべてにいえることです。そういう意味で、現在「MaaS(Mobility as a Service)」では、人流の話が中心になってしまっていますが、モノの話も含めてモビリティをどうするかが非常に重要です。
モビリティの再編が必要ですが、大都市と過疎地では状況が違いますから、それぞれにあったやり方に見直さないといけません。私は、過疎地であれば、人流も物流もモビリティ全部をくっつけてしまったらいいと思っています。自家用有償旅客運送とくっついたり、さらにもう少し進めて自家用有償貨物運送を作ることもありえるのであり、これからはそのような議論が必要なのです。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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