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コラム No.27-71

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第3回 現在の学生が業界の中心となる30年後、企業はどうあるべきかを考えたい株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 学習院大学 経済学部経営学科教授 河合亜矢子

公開日:2022/03/31

ロジスティクスが経営課題、経営戦略として捉えられてきた

秋葉:先生からご覧になって、企業側の物流に対する意識は変わってきていますか。

河合:今、急激に変わろうとしていると思います。私が知っている範囲の話ですが、新型コロナウイルス感染症をきっかけに大きく変わってきています。コロナ禍の前と後で困りごと自体は変わらないのですが、困り度合いの大きさが急に桁違いになり、「物流を何とかしなければ」と言う企業が増えたと思います。ここ1年で急に意識が変わった気がします。学生は、この機会を活かさない手はないですね。

秋葉:就職活動でどれだけその機会を活かすことができるかですね。それこそ先生の講義や私の話で聞きかじったことを面接でしゃべったらいいと思います。

河合:しゃべっているみたいですよ。マーケティングや商品開発、人材育成をしたいという学生は多いですが、ロジスティクスをしたい、サプライチェーンをしたいという学生はまれですので、非常に反応が良いそうです。

秋葉:採用部門の方々の反応が良くなってきているということは、経営陣の意識もだいぶ変わってきているのでしょうね。先ほど先生がおっしゃったように、以前と課題は変わっていないのだけど、新型コロナウイルス感染症で課題が顕在化しました。

河合:最近、JILS(公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会)も変わりつつあるように思います。JILSに「MEET LOGI!」というフォーラムがあって、倉庫会社や物流会社の方を取り上げて特集を組んだり、講演をしたりしているのですが、最近はメーカーや情報システム関係の方を取り上げて、「どんな業界にもロジスティクスはありますよね」という論調に変わってきています。JILSが変われば、企業の中で人材を育成する人のロジスティクスやサプライチェーンのイメージも変わっていくかもしれません。

秋葉:アプローチをする先も今までは物流会社の方々ばかりだったのですが、私たちの周りの人間が、もっと製造業や流通の方々と関わる必要があるという提案を続けてきました。少しずつ変わってきたようです。製造業の方々にも積極的にアプローチし始めています。

河合:その成果が出ているのだと思います。JILS教育研修プログラムの新入社員・新任担当者を対象にした「ロジスティクス基礎講座」の監修をしているのですが、物流会社だけでなく、メーカーなどたくさんの方々が受講してくれています。中でもメーカーの比率が明らかに上がってきている感じがします。受講しているのはまだ一般社員の方々ですが、「在庫管理をしっかりしないといけない」「ロジスティクスが自分たちの戦略になる」ということに気づいてもらうための講座に、メーカーの方々が来てくれるようになりました。

秋葉:企業側の意識が変化してきたとはいえ、学生にとって、物流やロジスティクスに対するイメージはさまざまでしょうね。

河合:私の授業に出ている学生たちが物流と聞いてイメージするのは、圧倒的に輸配送のトラックです。それがロジスティクスとなると少し変わり、さらにサプライチェーンマネジメントというとトラックや輸配送のイメージが出てこなくなります。ただし、まだサプライチェーンマネジメントには自社調達のイメージがあるようです。

秋葉:物流とロジスティクスという言葉が混在して使われているので、その違いを理解する難しさがあります。また、サプライチェーンマネジメントというと、学問的な捉え方をする方々がいるのも事実で、その辺の意味をきちんと伝えていくことも大切です。しかし、ロジスティクスが経営課題、経営戦略として捉えられてきたことも最近は感じています。
学生の視点でも、さまざまなロジスティクスへのイメージがありますが、実は企業の中でも、現場が思う採用したい人物像と、経営サイド、トップマネジメント層が思うロジスティクスに採用したい人物像にはギャップがあります。本来はトップマネジメントが思っている人物像を採用したほうが企業にとっては良いはずです。一方、物流部門の方に話を聞くと、どうしても物流業務をする人を欲しがる傾向があります。ここが実は逆なのです。物流事業者からすると、依頼されたことをきちんとやることが自分たちの仕事ですから、「言われたことをどうやって守るか、どうやって実現するか」という発想です。これでは個別最適にしかなりません。本来はそうではなくて、提案側に回らなければいけないはずです。本来は、提案するために頭を使える人たちを採用しなければいけないのに、現場は違う人を求めているのです。

河合:真面目にきっちり仕事をしてくれる人を欲しがりますよね。

秋葉:経営の視点、あるいはイノベーションの視点から見れば、本来は違うはずです。経営サイドと現場がディスカッションをして、お互いに高め合うような関係が本来は必要なはずです。

河合:本当にそうだと思います。そこからしかイノベーションは生まれてきません。

秋葉:そうした現場と経営陣がつながる経験も学生にとっては必要なことですね。先生が提供されているゼミでの現場体験で、先生が今後やりたいことはありますか。

河合:理科系の学生と文科系の学生では、環境も適性も違います。理科系の学生は自分の机が大学にあって、研究室が居場所になりますが、文科系の学生は、ゼミがあっても週に1回授業のようなかたちで受けるだけです。でも、文科系の学生じゃないとできないこともあると思うので、それを見つけていきたいと思っています。
昨年1年間、ソフトバンクさん、モノヅクリンクネットさんと一緒に、「コンサルタントのひよこプロジェクト」という中小企業の現場を改善するプロジェクトに携わりました。実はこのプロジェクト、手を挙げたのは全員女性です。女性が元気だとよくいわれますが、大学でもそれを感じることが多いです。実際にプログラムをコーディングしたわけではないのですが、現場の課題を整理して、これから作るシステムのコンセプトを学生がまとめて、中小企業の社長さんに提案しました。先方から「あと1年一緒にやりたい」と本気で惜しんでもらえるくらい、大変喜んでもらえました。
このプロジェクトは相当手応えがあって、文科系の学生じゃないとできないことがあると感じました。今はノーコードでシステム開発できるものもあり、概念設計までしたら、やるかやらないかは企業の自由です。概念設計に文科系の柔らかい頭を持った学生に入ってもらうと、コンサルタントのビジネスパーソン相手にはなかなか打ち明けられないことも、学生が相手なら本音でしゃべってしまうような場面もあるのです。自分の研究とは別に、そんな風に学生を武者修行に出すようなことを継続的にやっていけたらいいと思っています。学生にもっと現場を知ってもらいたいと思いますね。

秋葉:学習院大学のOB、OGのラインだけではなく、ほかの学校の世代が近い学生たちの交流の場を、私たちが設定できれば面白いですね。いろいろなことを知ることに意義がありますから。

多様性のある意見を尊重し、失敗できる風土が人を育てる

秋葉:コロナ禍になり、もっと長期的なビジョンを考えなければならないと言われたり、最近では「パーパス」という言葉が流行したりしていて、社会的意義を問うような風潮になってきています。2030年、2050年に向けて、いろいろな企業が長期ビジョンでどうあるべきか語るのを聞くと、いつも疑問を抱きます。なぜなら、目の前の数字の話と、20年後、30年後の話を同じ場で議論してしまっているからです。評価軸が「昨対売上」といった短期的なものしかないにもかかわらず、同時に長期的な話をするのはおかしなことです。
また、持続的イノベーションの話をするか、破壊的イノベーションの話をするかでまったく違います。短期的な成果でしか評価されない中、急に長期の議論をするべきだと指示したところで、評価されないことを誰がやるのでしょうか。

河合:やっぱり人が大事ですね。人はどうやって変わるのでしょう。

秋葉:私たちがお客様のところにコンサルティングに入って、人材育成をすることがあります。そのとき、パーソナリティの軸と行動特性の軸で、4象限で見たりするのですが、私は行動特性よりもパーソナリティを大事にしたいと思っています。パーソナリティは善し悪しではなく個性で、その人の個性が職種や企業に合うかどうかです。行動特性の場合、社長と似たような行動をする人間を善しとする傾向になりがちです。社長の行動が間違っている可能性もあるわけで、軸にはなりませんから、パーソナリティを重要視したほうがいいと思っています。かつてパーソナリティは変わらないといわれていましたが、最近の研究で、衝撃的なことが起こると変わるということがわかってきました。大きな失敗によって消極的になったり、大変なプロジェクトの達成後にすごく褒められたりすると、ポジティブになるともいわれています。だとすると、経営者がそのような機会をどれだけ与えられるかです。
あとは思考です。「もっと自由になっていいよ」と学生に教えて、その学生たちが社会に出たとき、それを許容できるような会社であることが重要です。世の中多様性だといわれている中で、いびつな思考、偏ったことにしかイエスと言えない人たちが集まったら、そもそも多様性に対応することができません。多様性のある意見を尊重し、その中で、「今回はうちの会社としてはこうだけど、意見をありがとう」と言えるような関係を作れるかどうかだと思います。

河合:言える環境、失敗できる環境が大事ですね。最初に入った会社で、私は瞬間湯沸かし器といわれていました。瞬間湯沸かし器だったことは悪かもしれませんが、言いたいことを言わせてもらったことは良かったです。何でも言えるし失敗できるという風土はとても大事です。

秋葉:セイノーホールディングスの河合さんと対談したとき、「100個の水たまり」「9999回の学び」「DNAの伝承」という三つのキーワードで新しいことをするとおっしゃっていました。何か新しいことをしようと思ったとき、1個ずつシリアスにやっていたら、何年かかるかわかりませんし、方向の修正もききません。小さなことでもいいからいくつか同時にやるという意味で、「100個の水たまり」と言うのだそうです。当然失敗することもありますが、そこから学べることもあるという意味で、「9999回の学び」になります。失敗したで終わらない。「なんでうまくいかなかったんだろう」「もしかするとああしたらうまくいったのかもしれない」と学ぶことで、ほかの水たまりに生かすのです。
「DNAの伝承」というのは、会社のミッションやビジョン、ポリシーから大きく外れないということです。この発想でいくと、「物流事業者だから、物流からかけ離れたことをしてはいけない」とはなりません。物を届けることがお客様へのサービスで、それによって人々の生活を豊かにするということが中心にあるので、「人々の生活に役立つことをする」というところからは外れてはいけないことになります。
このような捉え方をしたとき、失敗はどれだけあるでしょうか。ビジネスなので、数字が取れたか取れないかという意味での失敗はあるかもしれません。しかしそれは、どうすればマネタイズできたのか、どういうことにもう少し早く注意しておけば赤字幅が減らせたのかということであって、やっていること自体の失敗とは違います。失敗できる環境をどれだけ作ることができるか、そのような機会を与え続けられるかどうかなのだと思います。
特に、高度物流人材と定義されるような、テクノロジーに関わる能力の高い方々に、物流会社が活躍できる環境を提供し続けることができるかどうか。物流会社は物流会社であって、システム会社ではありません。新しいテクノロジーを追い続ける人と、テクノロジーの進化ではなくフィジカルな物流を追いかける人は同じではありませんし、「人々の生活に役立つことをする」ことから外れないように人材を育成しなければなりません。

河合:物流会社の価値はAからBに運ぶことですものね。

秋葉:あくまで物流とは、荷物を動かすことです。ただし、それは複雑に連続しています。その連続性をいかにシームレスに、どうつないでいくかが今求められています。

現在の学生が業界の中心となる30年後、企業はどうあるべきか

秋葉:先生のCIO研究会(日本小売業協会内の研究会)での提言は調査した事実に基づくもので、勝手な空想ではありません。業界人にしてみても、「痛いところを指摘された」と感じたはずです。イベントやセミナーなど、いろいろな方々を巻き込みながらそういったことを発信していくことがとても大事です。いろいろな波が重なってきています。SDGsも進めなければいけないし、労働力不足の話もあります。以前と変わらないことばかりしていたら、学生は就職先として選ばないという話ですよね。

河合:私はそこが一番大事だと思っています。「小売業にはあまり学生が来てくれないから、もっと来てくれるようなアピールをしたい」といろいろな方に言われるのですが、手塩にかけて育てた学生ですから、その能力とパーソナリティを存分に活かしてもらえるところでキャリアを積んでもらいたいと思うのです。でも、自信を持って学生に薦めることができる小売チェーンは多くはありません。仕事がハードすぎて、心身がもたない、若い芽が摘まれるようなことがあってはいけません。そうならないような業界になってもらわないと、安心して学生を送り出すことができません。私はビジネスパーソンでもないし、無責任な立場だと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、業界が変わることによるメリットと私自身のメリットが直結していると思っています。エシカルなマインドを持ち大きな可能性を持つ学生たちに、就職先として、自信を持って薦められる業界になってほしいのです。科学的に物事を捉え、提案できる、失敗も肥やしと前向きに受け止められるような風土がほしいです。
私には私なりの理屈があって、学生に教育をしています。「外に出てみたら、そんなことは誰もやらせてくれませんでしたよ。話が違いました」と言われてしまったら、私の信頼にも関わります。教えたことが世の中でも行われているような状況にしたいのです。

秋葉:学問は学問、ビジネスはビジネスではなく、先生がビジネスにつながるために教えていらっしゃるのは素晴らしいことです。30年後、今の学生たちが企業や業界の中心になります。30年後にどのような世界になって、その中でそれぞれの業界がどのような活動をして、企業はどうあるべきなのか。そこまで想像して学生を送り込みたい。難しい世の中だからこそ一生懸命考えたいですよね。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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