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コラム No.27-55

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第2回 ライフサイクルを回すフィジカルインターネット株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 明治大学 グローバル・ビジネス研究科教授 博士 橋本雅隆

公開日:2020/11/30

シェアリングがフィジカルインターネットを後押しする

橋本:先日、スマート物流の実証としてコンビニ3社が共同配送の実験が行われました。地方のコンビニにおいて物流が厳しくなっているという背景があって、お互いに困っているのだったら一緒にやろうよという気運がようやく出てきたのでしょう。今は小売チェーンによって荷役の方式も統一していません。カゴ車やパレット、折りコンなどを情報タグで商品と紐づけして、情報セキュリティを整備したうえで、物流トレーサビリティー情報を収集して、物流プロセスの品質とセキュリティのエビデンスを取ることを考えないと、共同配送の責任も担保できません。さらに、これが社会実装されて膨大な物流データが出てきたとき、例えば、ブロックチェーンのスケーラビリティ問題(処理性能の制約)が出てきます。また、通信の処理をするときの電力エネルギーがものすごくかかるという問題もあります。そういった問題への対策も非常に大事です。

秋葉:データを吸い上げることは、それを活用してリアルな世界にフィードバックするという意味で重要なことですが、集めて処理することでエネルギーを使ってしまいます。

橋本:ロボット化についても、フィジカルインターネットと併せて考えると、これからはパケット化された貨物というかたちを前提として考えていかなければなりません。

秋葉:本当にそう思います。ロボット化についても、いろいろなサイズのいろいろなものがあるから、個別最適に導入をして、費用が下がらないといったことが起きてしまう。しかし、きちんと整理することができれば、ロボット導入のパターンも整理されます。「うちはこの時間はこのロボットが空いているから、使っていいよ」ということだってできるようになる。そうすると、配送も共同でやるし、当然、中の設備も共同で使えるという話になってきます。

橋本:やはり、最小単位がモジュール化されていることが大事なのです。物流センターでいえば、今まではBTS(Built to Suit)が主流だったのが最近、マルチ化に移行し始めてきたようです。これだけ需要の環境変化が激しいと、共同化という動きが出てきます。まさに動態的なロジスティクス制御を目指すフィジカルインターネットにおける物流拠点のシェアリングという考え方に沿う動きといえるかもしれません。

秋葉:今まではスタートラインに立ってもいなかったけど、やっと皆が入り口に立った感じですね。そこでどっちの方向に行くかという方向づけを先生方にしていただけると、皆が向かっていけると思います。

橋本:いわゆる小売専用センターについても、シェアリングの流れに持っていくべきだと思っています。

秋葉:小売のセンターは結局、店舗向けに仕分けています。入ってきたものを仕分るのであれば、それが橋本商店であっても秋葉商店であっても本来は関係ありません。物流会社からすればどこの荷物であろうと同じです。小売でも、当然それと同じことができますよね。

橋本:あるスーパーマーケットのチェーンでは、自社専用TC(トランスファーセンター)を外部とシェアし始めました。自分の店舗に運ばないものも、「どうぞそこでさばいてください」ということを始めています。この事例が非常に賢いのは、そのあたりの調整を契約しているトラック運送企業に任せているところです。要するに、「自分たちの配送の効率が上がるように共同化してください」と言っているわけです。すると、物流で困っているサプライヤーなどが、「じゃあ、共同で運びましょう」ということが起きてきます。その物流センターが何で収益化しているかというと、ダンボールやプラスチックの再利用です。まさに、SDGsです。昔の専用センターがセンターフィーで利益を上げる話とは、全然発想が違います。 物流センターでもう一つ言えば、これからは自動化や情報投資に本腰を入れて取り組まなければいけませんが、実際にそれを作るとなると相当な投資が必要になります。それを全部財務の中でバランスシートに抱え込むと、相当重たくなって、自動化投資や情報化投資が十分にできなくなってしまうのではないかと危惧しています。その辺の財務戦略も含めて、どうやってオフバランスをしていくか。そこにかなり戦略的な発想を組み込んでいかないといけません。

秋葉:おっしゃるとおりで、個別の荷主様、お客様がそこに投資をすると、個別最適に向かってしまうこともありますし、財務的にも非常に厳しいものがあります。だからこそ大和ハウスグループで「一つの資産を建てる」という中に、土地、建物、設備、システム等を組み込んで、皆さんには「使った分を薄く負担してください」というかたちにしていきたいなと思います。

橋本:財務的には、今はいろいろなやり方がありますが、そのように動いていった方が、動かしたモノを今は全部情報でトレースできるわけですから、そういう使い方ができますよね。機能的なオペレーションに対する課金というスタイルになっていく。私は、輸送のキャパシティも含めて、ダイナミックプライシング(価格を需要と供給の状況に合わせて変動させる)が適用される場合もあると思っています。

秋葉:ダイナミックプライシングまでいったら本当に面白いですね。そこまでいくと、国がそれに対して税金をかける可能性も出てきます。それはある意味平等だと思うのです。商売に対してきちんと税金をかける。しかも、データとして証明されているので、嘘のつきようがありません。

物流を制する者が勝ち組となる

橋本:大きく言えばプラットフォーム化といいますか、ロジスティクスはレイヤー構造になっていくと思います。情報のプラットフォーム、物流のプラットフォーム、金融財務のプラットフォーム、エネルギーのプラットフォーム、人材教育のプラットフォーム、私はこの5層になると考えています。

秋葉:人材教育については、数年ぐらい前から、高度物流人材をどうするかといったテーマがいつも出てきています。何ができる人たち、何を理解できる人たちをこれから求めていくのか。そこがあまり定義づけられていない中で、高度という言葉を付けて、今と違う人を作りましょうということになってしまっているのが、僕は少し違和感を持っています。

橋本:15年か20年ぐらい前、アメリカでロジスティクス、サプライチェーンを教えている大学がどれくらいあるか調べたことがあります。およそ200校ありました。アメリカは人口が多いしと思って、次にドイツを調べてみました。当時、ドイツでも60ぐらいの大学でロジスティクス、サプライチェーンの学部学科コースがありました。ところが、日本には数えるほどしかありません。ロジスティクスというのは、相当範囲の広い、レベルの高い、総合的、学際的な分野です。こうした教育をしないと、「高度人材」というところに追いついていかないだろうと思っています。

秋葉:教育は、今日始めたら来年にできていますという話ではないわけです。だからこそ少しでも早く始めて、そういう人を増やしていく。そしてその人達がまた教えていく。そういったサイクルを作っていかなければなりません。

橋本:私はJILSで大学と企業の人材連携にかかわる委員会の座長をやらせていただいているのですが、その中で、学生を集めて、企業の方にいろいろとプレゼンをしていただくと、学生の反応が非常に良いのです。学生さんが、サプライチェーンとロジスティクスというのは、トラックでものを運んでいるだけではなく、こんなに大事な幅の広いものだったのかと感動している。こんなに良い反応があるのかと、企業の方も驚いていました。やはりそこを伝えないと、学生が学ぼうという気にならないですよね。

秋葉:僕も学校で教鞭をとらせていただいているのですが、今やっている授業が「経営とロジスティックス」というテーマで、履修している学生は150人くらいいます。ロジスティクスに興味を持って、履修をしてくれる学生が150人もいるということに驚きました。きちんと教える環境がなかったのはわれわれの反省であって、そういう場を用意すれば、興味を持ってくれる学生はけっこうな数いるし、その中からさらにこの業界に入ってくれる、あるいは間接的にかかわる人たちもいると思います。

橋本:場をうまく作っていくことも大事ですし、逆に、そういった流れが出てくると、企業の中におけるサプライチェーンの位置付けも相当変わっていくでしょう。先ほどのデザイン・フォー・ロジスティクスではありませんが、製品開発と調達、生産、営業、物流がバラバラで、物流が生産と営業の間に挟まれているようではだめだと思います。

秋葉:笑い話ですが、物流部門が製造と営業どちらの下につくか議論をしている会社がありました。どちらの下でもありません。そもそも下側ではないのですから。

橋本:ロジスティクスはなかなか社長マターまでいかないですよね。小売業でも、本来ならばマーチャンダイジング、棚割り、在庫管理というのはビジネスの根幹なので、ストア・フォーマットをどのように設計するか、店舗のオペレーションをどうするかということと併せて、商品の取り扱いをどうするか、どう売るかまで、全部一体に設計されないといけません。ところが、今までそういう発想はあまりありませんでした。

秋葉:部門の垣根もあって、部門それぞれが生産性を上げることだけを考えますよね。全体を通したときに何がベストなのかが大事なのに、自分の部門のところがという話になってしまう。

橋本:どうやって川上から商品を持ってくるかというところまで、きちんと責任を持って考えてほしいですね。そこが課題です。そもそもチェーンストアというのは、物流センターと店舗を計画的に連携づけて設計して、それが棚割りや店舗内のオペレーションまで全部つながって設計されないといけないのです。ところが全然そうなっていない。そのような取り組みをされているチェーンもありますが、まだ多くはない。

秋葉:昔は人口に従って店舗を配置していましたが、最近はドミナントで同じところに集中して作るようになっています。セブンイレブンさんやニトリさんがそうです。ドミナントでやらず、まだ出してない県に1店舗だけを作るのは、物流のことは何も考えていないということです。

橋本:今まで、そういった店舗でも卸やメーカーが一生懸命サポートして成り立っていたのが、人手不足になってしまいましたから。

秋葉:勝ち組という言葉は適切ではないかもしれませんが、それぞれの業界の中で営業利益率が良い会社を見ると、やはり物流のところをよく考えています。そこを自らか自らの子会社がやっているかという話は別として、マネジメントは自分たちでやるということを徹底している会社ばかりです。

橋本:ニトリさんがそうですね。マーチャンダイジングからサプライチェーンがきちんとつながっていて、増収増益をずっと続けています。しかし、小売チェーンの中には、いまだに単品の売り上げしか見ておらず、投資利益の視点が薄いチェーンもあるように思います。それでは、売れたらいい、その結果、損益面でも、販管費が増えて儲けは薄いということになる恐れがあります。

秋葉:既存店売上という見方しかしていない場合、そこにいくらのコストをかけたのかという話はないのかもしれません。

橋本:ある物流エンジニアリング企業が米国の小売物流センターを受け負ったとき、ROI(投資収益率)が○○パーセントという条件がついてきたそうです。日本でそのような話は聞いたことがないという話でした。

秋葉:ROIなどの経営指標の数字をクリアするということに対してやっていかないと、経営として成り立たなくなってしまいます。

橋本:オペレーションが成り立てばいい、というだけではないですよね。

BCPプランにおけるロジスティクスの可能性

橋本:私は、ロジスティクスには二つあると思っています。一つはサプライチェーンにつながるロジスティクスで、もう一つがライフサイクルサポートです。これはメンテナンスから派生してきたもので、プラントシステム等の大型システムを長期的にどうやって維持していくかというところの体系です。製品投資のライフサイクル管理もこの範疇に含められるでしょう。フィジカルインターネットのところでサステナビリティが出てきたように、このライフサイクルサポートという考え方がロジスティックスの非常に重要な柱になります。物流センターも取得コストだけではなく。15年20年使って、全体でコストがどうだったのか。何か災害が起こったときにダウンしなかったか。そういったことを含めて評価をするべきです。つまり、ロングタームでのマネジメントがきちんとできていないとだめだということですね。わかりやすい身近な例でいえば、車を買うときには、新車か中古車かという選択があります。中古車の方が取得価格は低いけど、5年10年使ったとき、メンテナンスや故障といったことも含めたトータルでは、実は新車のほうが安いこともあるわけです。例えば、ある物流センターの物件は非常に堅牢で、地震があっても操業を続けた。そういったところをきちんと数値化して選んでもらわないといけません。要するに、ライフサイクル全体を通じた評価とマネジメントが大事なのです。ただ、こうした長期にわたる運用・保全データをきちんと取っている場合はまだ多くはないかもしれません。例えば、リート物件についてはきちんとデータを取られていても、それ以外はあまり取れていないなどです。 物流は地域のインフラであるという視点も大切です。自治体とよく話をして、例えば、工場の跡地を物流センターにするとき、雇用をどれくらい生み出せるのか、インフラとの関係はどうなのか、あるいはエネルギーや環境への影響ははどうなのかまでトータルで考える。これはまさにライフサイクルの戦略を考えているということになると思います。現在でもこうした点に注力されている企業はありますが、これからはますますそういったことが必要になってくるでしょう。

秋葉:自治体と話をすることによって、電気、水、排水、人の雇用も含め、生活により寄り添うかたちにしていくということですね。そもそもロジスティクス自体が生活に必須なもので、水や電気と同じように生活を支えているものだと考えると、生活の中にどれだけ入っていくかが非常に重要です。普段の生活の中で、皆当たり前のようにこなしていますが、実はそれがかなり疲弊してしまっています。災害が起こったとき、店にものが並ばなくなって初めて、物流が大変だと騒ぎますが、逆に、普段が素晴らしいのだと思ってもらえるといいですよね。

橋本:そういうことが見えるようにしないといけません。ロジスティクスにはある種公共のインフラという役割がありますから、うまくシェアしていくことをフィジカルインターネットで考えるべきだと思います。電力、エネルギーの問題も含んでいます。前にも申した通り、フィジカルインターネットの概念の中にはスマートグリッドが入っていて、BCPプランと密接に関係してきます。最近、物流センターでもPV(太陽光発電)とバッテリーを合わせているところをよく見ます。例えば、働いている方の自動車をEV化して、いざとなったらその電源を使うこともできますよね。地域のインフラとしての信頼性も上がりますし、場合によっては周辺に電力を提供することもできます。

秋葉:物流施設自体も、単体ではなく複合の施設が最近増えてきました。あれだけ堅牢な建物ですから、もしも災害があったときにはそこに避難できますし、備蓄もあります。PVであれば、電力を数日間対応することも十分できますよね。 店舗網をどうするかと同じで、物流網をどう作るかを考えたとき、消費地に近いかどうかは当然重要なポイントです。加えて、BCP対策としてどういう配置をしておくべきかということも非常に重要ですよね。

橋本:これからはBCPプランを必ず考えないといけません。物流センターは、災害のときには拠点になります。例えば災害時にはまず水の供給が重要課題です。物流センターによってはそうした重要物資のいくつかを在庫しているわけですから、自治体や荷主と協定してそうした重要物資については在庫を非常時には転用できるようにするとか、柔軟に考えるべき課題と思っています。東南海地震の発生確率が30年以内に70%~80%と言われているわけですから、ある種国家戦略として考えるべきことかもしれません。フィジカルインターネットの前提はネットワーク全体の在庫状況の可視化にありますから、このような日本における重要課題への適用という意味でも重要でしょう。

秋葉:ロジスティクスは人の生活を守るために非常に重要なものです。それくらい重要なことなのに、日本では軽視されてきたのが実態です。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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