土地活用ラボ for Biz

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コラム No.27-61

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第2回 物流施設が担う新たな役割株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 大和ハウス工業株式会社 取締役常務執行役員 建築事業本部長 浦川竜哉

公開日:2021/05/21

産業の転換点のつなぎ役としての役割

秋葉:最近、公設市場の案件にかかわらせていただいているのですが、不動産の有効活用という点から考えても注目すべきところだと思います。日本には、築40年以上の市場が日本全国にあり、国も何とかしなければならないと考えています。人口が減少していく中、地方の市場が今までと同じような収支を何十年もやり続けることは難しく、市場の建物自体の複合化や市場の土地の使い方についてもさまざまなアイデアが求められており、そこにもチャンスがあると思っています。

浦川:今、公設市場の役割が大きく変わってきています。地方の良い場所に立地しているにもかかわらず、2万坪、3万坪の土地が効果的に活用されていない市場もたくさんあります。大和ハウス工業では、こうした市場の再生をお手伝いさせていただきたいと考えています。
大和ハウス工業がなぜ市場に注目したのかというと、それは、全国には機能を十二分に果たせなくなった市場が数多く存在しているからです。市場が有効に活用されるには、昔の役割から今の時代に合ったかたちにしていく必要があります。
そのためにはコンパクトにしなければいけません。あまりにも広大な土地ですから、今は機能の50%も使えていないような市場が全国に約1200カ所あるといわれているような状況です。
市場が現代版の市場にミニマライズされ、整理されて、余った土地に、物流センターや民営のマルシェ、商業施設、あるいはデータセンターといったものと組み合わせていく。その全体を大和ハウス工業が運営させていただくことができないかと考えており、私自身も、非常に期待しています。
私たちは、大和ハウス工業が提案する、この新しいコンセプトを持つ「公設市場」のことを「D-マーケット」と呼んでいます。
そして、この「D-マーケット」の第1号が富山で内定しています。そこは商業向けの立地なので、市場と商業施設というかたちになりますが、市場と物流施設が入るパターンもあると思います。ある地方公共団体で市場の活性化をご専門にされていた方に大和ハウス工業に来ていただき、一緒に動いていただいていますので、市場のこれからにご期待いただきたいです。

秋葉:富山の市場には私も行かせていただきました。大和ハウス工業としての取り組みに対して、現場で働く方々からは、マインドを含めて、非常に良い印象を受けました。世の中に対してそういった場所を見せることで、他の市場の方々、開設者の方々に「そういうやり方があるのか」と気づいていただくポイントにもなると思うので、私もすごく期待しています。

浦川:われわれの事業には、ある意味、時代の役割を終えたような業種、業態の、産業の転換時期のお手伝いとしての役割も大きいと思っています。例えば、大阪府茨木市松下町1丁目1番地に、パナソニックさんのブラウン管テレビ工場の跡地がありました。今やブラウン管テレビはおろか、プラズマ、液晶、有機ELにおいても、日本での生産では競争力がなくなっています。 そして、今ではここは、ラストワンマイルを担うヤマト運輸さんの関西ゲートウェイとアマゾンジャパン合同会社のアマゾン茨木フルフィルメントセンターが、同一敷地内に建っています。
フルフィルメントと配送双方が同敷地内に建った初めての例になりました。そういった意味で、ECとラストワンマイルを担う次の産業への転換のお手伝いができたと思っています。
その結果として、地元にきちんとした雇用と税収を生み、つなぎ役としての役目を果たすことができました。 DPL流山も、もともとは第一種農地で開発がまったくできなかった土地でした。60%以上が耕作放棄地で、後継者不足により農業が続けられなくなり、荒れ地のままになっていた場所に、次の産業の核となるであろう物流センターを設けたのです。流山市は、つくばエクスプレスができたこともあり、千葉県では人口増加数、人口増加率とも4年連続1位の新しい街で(令和2年2月27日発表 流山市ホームページより)、大和ハウス工業の住宅やマンション、商業施設も大変お世話になっている街でした。そこに物流施設をつくることによって、地元の方々の雇用をお手伝いし、さらに託児所をつくることで、女性の社会進出のお手伝い、地元の待機児童の解消にもつながりました。また、現地は江戸川が決壊すると3メートル近く水没するような土地でしたが、流山市と防災協定を結び、施設には約1200名が避難することができるようにしました。そのうち500名分の災害用品も備えられています。
こうした積み重ねによって、近くにあると排気ガスや公害が出て危険で、雇用も税収も生まない物流センターというこれまでのイメージから、「あったらいいな」「そばにあると役に立つな」というイメージを持つ物流センターに変えていきました。物流センターが一つの街づくりの核とはいかないまでも、重要な一つのポイントになるのではないか。特に、水害や地震など、物流が滞ったとき、荷が着くのを待つのではなく、物流センターに逃げ込めば、そこには災害用品があり、最低限のものが確保できる。このように意識が変わっていくのではないでしょうか。
われわれがそういった展開を全国でしていくことで、「物流が近くにあって良かった」と言われるような存在にしたいと思っています。物流センター自体の認識のアップ、地位の向上、ひいてはそれが業界全体につながっていくとすごく嬉しいですね。

秋葉:一昨年、災害が起こりそうになって、ランプウェイに車を停めさせてほしいという話がありましたね。

浦川:DPL国立府中ですね。2019年に台風19号が上陸したとき、地元の自治会長さんから避難させてほしいというお電話をいただき、60台ほどの車に避難していただきました。自走式のランプウェイがついていますので、脚の悪い方やお年寄りの方でも、車に乗ってそのまま避難することができます。防災拠点として非常に有効だと実感しました。

物流施設を中心とした街づくり

秋葉:過去の団地の再生、大和ハウス工業では「再耕」という言葉を使っていたと思いますが、その中にも物流の重要性があると思っています。大きな物流施設を中心にした街づくりといえるでしょうか。そういった団地再生もやられていますよね。

浦川:現在、神奈川県横浜市栄区の上郷ネオポリス、兵庫県三木市の緑が丘ネオポリスの2カ所で再生事業をお手伝いしています。実は、プレハブ住宅を最初につくったのが大和ハウス工業で、それから、住友銀行(現:三井住友銀行)さんと組んで最初に住宅ローンをつくったのも大和ハウス工業です。さらに、住宅団地を造成したのも大和ハウス工業が最初なのです。そういった意味では、創業者の石橋信夫はすごい人だと改めて思います。プレハブ住宅をつくって、それを買うための住宅ローンというものをつくって、さらにそれを建てる住宅団地まで、3つをすべてつくってしまったわけです。

大和ハウス工業は、上郷ネオポリスや三木市の緑が丘ネオポリスのように、ネオポリスという名前で、昭和30~40年代に団地を開発してきました。今、そのころに入居された方々が高齢化しています。また、山を削って開発した地域が多いため、駅からバスを使っても時間がかかり、団地内の商店もかなり閉店してしまって、買い物も不便な状態です。
大和ハウス工業は、そこにもう一度コンビニエンスストア等のお店を再生して、ラストワンマイルを担うような物流拠点を団地の中につくりたいと思っています。法整備は必要だと思いますが、団地内はドローンが飛ばしやすい環境になっています。大きな障害物がないので、ラストワンマイルを物流拠点からドローンで各家庭に運ぶことができます。あるいは、高齢で元気な方に、団地内のラストワンマイルを配達してもらうことも可能でしょう。そういったことを2カ所のネオポリスでやろうとしています。
さらに緑が丘ネオポリスでは、ミニ胡蝶蘭の製造販売を始めていて、そこで高齢者や障がい者を雇用しています。実は、われわれの業界は地鎮祭や竣工式といった式典が多く、胡蝶蘭をよく使います。胡蝶蘭は高価なものですから、それならばつくってしまおうというのがきっかけでした。普通の胡蝶蘭もさることながら、ミニ胡蝶蘭はリーズナブルで利用しやく、個人の贈答に利用することもできます。このように、製造、直営販売、ネオポリス内の高齢者と障がい者の雇用促進をセットにして、昭和30~40年代に大和ハウス工業が開発した団地のリバイバルを始めています。その中でも物流が一つの大きなポイントになっていると考えています。

秋葉:団地の開発当時は同じような世代の方が多く、その結果、子どもに引き継がれずに空き家が出てきたという面があると思います。いろいろな世代が住むことによって、団地が長く成り立っていきます。そういう意味で言うと、雇用もそうですし、高齢者の方たちに対してもそうですし、子育て世代の方たちに対してもそうです。やることがたくさんあると思っています。

浦川:おっしゃるとおりです。今、若い世代にも、郊外に住宅を移すという志向の方が若干ながら増えています。通信環境が整い、間取りその他もリモートワークしやすくなっていて、かつ、買い物等においても、ラストワンマイルの仕組みを持つことで、自宅に居て何ら不便がないような住まいづくりを、今まさに始めようとしているところです。これがうまくいくようであれば、横浜と三木の2カ所の他にも全国で展開したネオポリスがありますので、この辺りにも着手していきたいと思っています。

秋葉:すごく楽しみですね。物流を中心にとは言えないかもしれませんが、新たな街づくりといいましょうか。温かみのある、人間を感じられるような街という意味で非常に魅力的だと思います。

浦川:大和ハウス工業はプレハブ住宅をつくり、住宅ローンをつくり、住宅団地までつくってきました。産業構造の転換ではありませんが、住む街の構造改革のようなものをやっていくのは、先駆者としての責任だと思っています。人生100年時代ですので、元気で健康に過ごしてもらうための快適な環境づくりを提供していくこともわれわれの義務だと思っています。しっかりと腰を据えてやっていきたいです。

秋葉:そのとき、物流が生活に必要なインフラであるということが、改めて意識されると思います。高齢の方たちを目的地にどうやって送っていくか。あるいは、生活に必要なものをどのようにお届けするか。そういったことを合わせていく必要があります。今までわれわれがやってきたデジタルの技術や要素を街の中にどうやって落とし込んでいくのか、私たちも考えなければいけません。今まではどちらかというと、事業や産業に対してどうやって物流のデジタルの力を使うのか、というかたちでしたが、そこからもう少し先まで考えなければなりません。ラストワンマイルで送るところまではデジタルを使っているのですが、あと少し先、家の中までというか、生活している人も含めた中でデジタルの力をどうやって使うのか、というところになってくると思います。もうひとひねり、もうひと頑張り、私たちが考えるべきところが出てくると思うので、それもすごく楽しみにしています。

浦川:住んで、いかに快適に過ごしていただくか。DXの取り組みをどこまで入れ込むのか、感じ取っていただくのか。こういったことも大事なのですが、大和ハウス工業が手掛けたネオポリスだけでなく他社が建てたところも含めて、都市圏から40~60キロ圏内の郊外の山の上に造成されているところがあります。
生活の足としてバス便が必要なのにもかかわらず、少子高齢化によって、バスが廃線になってしまったり、間引き運転になってしまったり、あるいはミニバスになってしまう。このような団地が、今、全国的に非常に増えています。だからこそ、団地の中で安全に、快適に暮らしていくために、週1回、月1回は街に買い物に行ったり、レジャーに行ったりして余暇を楽しむ。そんなふうに団地内で快適な生活を続けるためには、生活環境の整備が非常に大事です。繰り返しになりますが、横浜と三木、まずはこの2カ所から進めていきたいと思っています。

秋葉:楽しみな話ばかりですね。

浦川:現在、アトランティックサーモンの陸上養殖を静岡県駿東郡小山町で進める計画があります。年間約6300トンの生産量を計画しています。
物流を取り巻く環境、また、日本の中長期的な課題の中で、切っても切り離せないのが食料自給率の低下です。日本の農林水産業従事者はこの30年で約2分の1以下に減ってしまっていますし(総務省産業別就業者推移 1980年約610万人、2010年約240万人)、今では食料自給率が38%となっている時代です(農林水産省 食料需給表 令和元年総合自給率等の推移 供給熱量ベースの総合食料自給率より)。江戸時代であれば100%自給自足していたはずが、産業構造の変化や食の欧米化などいろいろな要素があって、あっという間に食料自給率がここまで落ちてしまいました。私は、これは非常に怖いことだと思っています。
食糧がもし止まってしまったら、日本人は生きていけなくなってしまいます。ですから、食料自給率の低下に伴って、日本の物流と生産地側での物流の品質の確保、特にグローバル・サプライチェーン、グローバル・コールドチェーンの構築が非常に重要なのです。大和ハウス工業が海外の5カ国でコールドチェーンを積極的にやっているのは、日本に食の安心・安全を届けるために、現地での品質管理に力を入れているからです。日本の食料自給率が低下していく中、日本でつくれるものは、もっとつくっていかなければなりません。
こうした食料の問題について、いろいろなことを考える中でたどりついた一つが、アトランティックサーモンです。今、サーモンは、マグロを抜いて、世界でもっとも食べられている鮨ネタの一つです。金額もマグロよりリーズナブルで、何よりマグロよりも簡単に養殖ができます。陸上養殖をすることによって、アニサキスのような寄生虫の付着を防ぐことができます。
ノルウェーに本社があるプロキシマーシーフード社のヨアキム・ニールセンCEOにお話ししたところ、意見が一致しました。大和ハウス工業が富士小山で開発をしている工業団地に陸上養殖施設を建築していただくことが決まりました。この工業団地では、富士山の新鮮な伏流水を得ることができ、東京にも近くて便利です。「富士山」もブランド向上に効果的です。また、小山町は静岡県ですから、中国を中心とした海外への輸出も可能です。ですから、非常に良い組み合わせだと思っています。ただし、食料ですから慎重にやらなければいけません。安全性が確保され、軌道に乗り、大和ハウス工業も参加できるとなれば、満を持して参加しようと思っています。これも楽しみにしています。

秋葉:常務がおっしゃるように、大きく世の中が変わる中で、人の生活をどうやって支えていくのか。改めて貢献ポイントがたくさんあると思いました。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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