土地活用ラボ for Biz

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コラム No.27-50

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第3回 物流ネットワークの在り方が変われば物流が変わる株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 流通経済大学 流通情報学部 教授 矢野裕児

公開日:2020/06/25

環状道路に対応したモビリティの再編を

秋葉:先生が関わっている取り組みで、今年から中央卸売市場の商物分離、金とモノを別々にできるようになると伺いました。商品が市場になくても取引が成立するようになるということは、一つのきっかけとして大きいですね。

矢野:卸売市場法というのがあって、従来は、基本、市場に商品の現物を持ってくるという商物一致が原則です。今までも一部の例外はありましたが、今後は、すべてフリーというわけではありませんが、緩やかになります。商物分離も含めた物流効率化の議論が進めば、農産物などの動きも大きく変わってくると思います。

秋葉:今は一度集めてまた散らばすという、ロスが相当ありますよね。東京近郊の市場に集めることでブランド価値がつくので、そこに一回集めたいのもわかるのですが。

矢野:けっきょく、首都圏には昔の放射状道路の頃の構造が残り過ぎているのです。市場に限らず、物流施設の配置や港湾においても同じです。東京港はたしかに首都圏の真ん中にあり、消費者に近くていいのですが、もう余裕がありません。施設容量に対して取扱量が2割ほどオーバーし、東京港コンテナターミナルにおける海上コンテナ車両待機時間は平均で2時間以上、ひどい場合は6、7時間の待ち時間が発生している状態です。中央防波堤の外側で拡張工事をしていますが、それでやっと需要と供給がギリギリでバランスがとれる状態で、これ以上は拡大しようがありません。今は首都圏の環状道路がほぼ整備できているのですから、それに対応したかたちの物流再編の議論が必要です。 また、東京には大田、板橋、足立、葛西という大きな流通センターがありますが、機能を一部見直すなど、もっと全体の構造から考え直す必要があるということです。作られた昭和40年代は東京の環状道路として、環七が重要だったわけですが、今は首都圏の環状道路ネットワークのなかで考えるべきです。

秋葉:例えば、今のところは別の使い方をして、もう少し外側にするなどトータルで考える必要がありますね。ただし、東京は人口が減るわけではないのできちんと見直せばいいのですが、地方は変わっていきます。20数年しないと償却できないような建物を建てていいか、といった話もあると思います。

ネットワークをいかに作るかがカギとなる

秋葉:イノベーションが起きてくると施設や立地も変わってくると思いますが、その辺りはどうお考えですか。

矢野:首都圏などの物流施設の立地構造を、今までの集中型から環状道路型に作り直すための議論が必要だと思います。また、今までは単体の施設ごと、大きな物流センターごとに配置、機能を考えていました。今後はネットワークとして配置、機能を考えていくことが非常に重要です。例えば、大和ハウス工業さんが物流施設を作るときに、当然配送の仕組みも提案されると思います。シェアリングするということも含めて、ネットワークとして提供していくことを考えていただければと思います。けっきょく、今までは建物として考えていたところを、機能として提供するというように変わっていかなければなりません。 そういう意味で、今までの荷主企業と物流業者、あるいは物流施設と不動産業者、物流事業者と自動車メーカーといった関係がこれからは大きく崩れていくでしょう。そこでやはりシェアリングの話が出てきます。単純なシェアリングではなく、シームレスになっていくかたちで展開していきます。そこで一番効率的に運営できるようなネットワーク型組織がカギを握ることになるでしょう。そこは変わる可能性を持っていると思います。そういう意味で、物流施設も建物単体ではないところでどのように付加価値をつけていくかが重要です。その付加価値のつけ方において、大和ハウス工業さんのようにいろいろな拠点を持っているところは、そこのネットワークをいかに使っていくかということがポイントだと思います。

秋葉:私も、そこが大きな転換点になると思っています。ビジネスとすれば、物理的な建物があって、そこが何坪あって、何坪借りてくれますかとなるのですが、本来の情報がきちんと整理されていくのであれば、首都圏くらいの括りのセンターがバーチャルであって、その中を計画的に動かしているような状態があってもいいと思います。「バーチャルな首都圏センターに、これだけの荷物を預けるのでやっておいて」というかたちが理想です。 20年前、ある小売業さんがバーチャルで東西に2拠点を持っていました。実態はカテゴリごとに5社の物流会社に委託しているので、最低でも5箇所のセンターがあるわけです。物量も多いので、細かくいけば実際にはもっとたくさんあるのですが、バーチャルとしては東西なのです。つまり、そこの下はその中で融通してくれということです。20年前と今では、データ収集能力や処理能力が圧倒的に違うわけですから、今はそれが1社である必要はないと思っています。首都圏で、バーチャルで動かすということが、本来できる状況のはずです。先生がおっしゃるように拠点ごとのネットワークを密にして、情報も、物理的な移動もその中でやります。ですから、幹線の話とエリアという考え方がまったく違ってくると思います。

矢野:もう一つ、輸送コストが間違いなく上がるわけです。今まで、拠点の統合集約化が、在庫コストと輸配送コストなどのコストの積み上げの中で、もっとも効率が良いということで、進展してきました。今後、輸配送コストが上がるのですから、当然、コストのバランスが変化するわけで、拠点の分散化を進めていったほうがいい場合が多くなります。拠点を分散化するところで、拠点の持ち方も考えなければなりません。分散化しても自社で持たなくても済むような仕組みができるようになると思います。それがDC(在庫型物流センター)であってもいいのですが、今までとは違ったかたちの分散型のネットワークを作り出そうという話が出てくるはずです。情報化がこれだけ進めばしやすくなりますから、拠点の持ち方自体、そして拠点のネットワークのつくり方自体が変わってくる可能性があると思います。

秋葉:拠点自体の機能も変わりますよね。物理的な拠点の機能が変わるわけですから。

矢野:「ネットワークとして持つ」「共同で持つ」「シェアリングする」という議論も含めてやるとすれば、そこのところのコントロールは誰がやるのか。物流事業者がやることもあり得るかもしれませんが、一つは大和ハウス工業さんのように大きな物流センターをいくつも持っているところがネットワークをうまく使えば、可能性としてはけっこうあるのではないかと思います。

秋葉:ただ、情報を集めて処理することの価値というものが、物流の価値がなかなか認められないのと同じくらい、認められていないと思います。情報は「無料」だと考える人もいます。それが無駄を省くわけですから、本来は大きな価値を出せることなのです。

矢野:今はとにかく「見える化」されていないので、何の無駄が起きているかさえよくわかっていません。

秋葉:「車は変わる」と、みんなが明らかに思っています。自動運転になるということも、少しずつ想像できるわけです。人間が乗っているけど、何かあったときに対処してくれればいいとなったとき、今のドライバーと同じような業務と給料が必要なのかという話にもなるでしょう。今6万2000社以上の運送会社がありますが、その構造も変わるということはみんなわかっています。それと同じように、物流倉庫や物流のネットワークも変わっていくと思ってもらわなければいけないのですが、なかなか発想がそちらにいきません。多くの人が既存の在り方のままいくように思っていますが、それはありません。 IoT云々の前に人口が大きく変わることを考えたとき、物流ネットワークの在り方も変わりますし、そうすると拠点の機能、拠点ですべきことも変わります。日本全国、事業の内容によっても違いますが、対応を考えていかなければなりません。 私自身もまだブレークスルーの答えはありませんが、今回このような話の場をつくっていただきましたし、先生と一緒に研究会を立ち上げようという話もあります。これは国を巻き込まないといけないことではありますが、ヤマト運輸さんが世の中のニュースになったのと同じで、世の中の人たちにどう理解してもらうか、どう想像してもらうかが大きな変換点になり得ると思っています。私と先生だけが熱く議論していたとしても、それでは変わっていきません。さらに、業界だけで話していても変わりません。先ほど着荷主とおっしゃいましたが、宅急便であれば受け取るのは私たちです。小売業、消費者、卸、メーカーも、輸送事業者、3PL事業者、建物を建てている業者も、みんなが意識しなければいけません。ある業界だけが意識していても変わらないのです。 私たちは大和ハウスグループに属しているので、先生や他の方たちから「大和ハウスだったら変えられるかも」と言ってもらえているのは価値があることだと思います。変えていくリーディングがグループとしてできたらよいと思います。そういう意味で、先生には先頭切ってディスカッションや問題提起をしていただいて、語り部になっていただきたいですね。いろいろな分野や業界でそういった方が出てくるとよいと思います。

こういう時こそ災害時対応について考える

矢野:最後に一点、災害時の話があります。災害時対応は東日本大震災以降進んだことは間違いありません。国の緊急支援物資のシステムも、ラストワンマイルでの課題はあるにせよ、たしかに前より良くなりました。ただ、問題なのは、首都直下や南海トラフのような災害が起きれば、東日本大震災の規模では済まないという議論をしっかりしてほしいと思っています。供給も確実に止まります。例えば、首都圏の食品製造業が全国の2割を占めていますが、サプライチェーンで考えれば、首都圏が止まったらあっという間に5~6割が止まってしまいます。 道路がだめになるという議論も当然ありますが、もう一つ、需要の話があまりうまく伝わっていません。東日本大震災における避難者数は、発災3日後が最大となり約47万人でした。首都直下地震は1日後約300万人、南海トラフ巨大地震は1日後約700万人と想定されています。東京都はそれに合わせて備蓄を持っています。問題は、首都直下地震では2週間後に約720万人になることです。2週間後まで、停電と断水で避難者数がどんどん増えていきます。そのときに被災地外から多くの物資が入ってくるわけがありません。とんでもない量の物資が必要になるにもかかわらず、供給が止まってしまいます。単純に6倍というわけではなく、累積だととんでもない数字になります。720万人という数字に対してどれだけ提供できるでしょうか。はっきり言ってまったく見通しが立ちません。停電や断水は読めないうえに、発生したときのリスクは非常に大きいのです。よほどしっかりとした仕組みを作っておかなければならないのです。

秋葉:先生がおっしゃるように、東日本大震災は一つのきっかけだったと思います。私も、大学の講義で、阪神淡路大震災と東日本大震災の比較をしています。全国レベルで影響を与えたのは東日本大震災です。理由はいろいろありますが、地方分散化もその一つです。道路網が整備され、いろいろなところに分散した結果、最終製品が出来上がらないということが起こりました。一方、阪神淡路大震災も甚大な被害を受けたのですが、そこはそこで経済圏として完結していたので、日本全国への影響度合いは少なかったそうです。今、どこかで何かが起こったら、日本全国に対して経済的な影響が大きいのです。 モビリティのお話で出ましたが、そのとき船をどうやって活用するかが重要だと思います。阪神淡路大震災の時、P&Gが船で物資を届けました。非常に理に適っています。日本の多くの企業は陸上からどうにかしようとしていて、それができませんでした。南海トラフになったら、鉄道網、道路も含めてだめになる可能性があります。そのときどうするか真面目に考えなければなりません。ドローン1基で飛ばせる量はたかがしれていますし、何ともならないわけです。千葉の停電の期間の長さも、改めて考えさせられました。今回の新型コロナウイルス感染症もそうです。災害というものを考えるきっかけにしなければなりません。 最近、お客様のところでもBCP(事業継続計画)の話が出てきています。災害後しばらくするとみんな言わなくなってしまいますが、これからは、真剣に考え出すのではないかと思っています。今までBCPといえば耐震、免震だけだったのが、豪雨、津波、停電、新型コロナウイルス感染症ですから、私自身責任の重さを感じています。未だに労働集約でしかやりきれない物流施設があるわけで、そういったところが実際に止まってしまうわけです。先日会ったお客様は、「今後の感染症対策においては、センターとエリアが封鎖になる可能性がある」と明確に言っていました。良い話ではありませんが、考えるきっかけになるのであれば、きっちりと考えることが大切です。大和ハウス工業も私たちも提案しなければいけませんし、こういう時だからこそ、先生にもそこの大事さをアピールしていただきたいと思います。

矢野:だからこそネットワークが重要になってきます。今度のオリンピックもそうです。何らかの制限がかかったとき、他のところにどうやって代替できるか、ネットワークが非常に重要です。平常時のネットワークの構築と同時に、何かが起きたときのネットワークをどうやって作るのか。ネットワーク全体、インフラも含めて作り直さないと難しくなってきています。

秋葉:BCPというと極端な話になってしまいますが、復元力、レジリエンスと言いましょうか、何日間で回復、復元できるのかを考えておくだけでだいぶ変わるはずです。そこの議論も重要なので、継続して行っていかないといけないと思っています。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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