土地活用ラボ for Biz

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コラム No.27-36

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第1回 ロジスティクス4.0の世界株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 株式会社ローランド・ベルガー プリンシパル 小野塚 征志

公開日:2019/04/26

フレームワークスの秋葉淳一氏がホスト役となり、株式会社ローランド・ベルガー プリンシパル 小野塚征志氏をゲストにお迎えし、ロジスティクス業界にイノベーションを興すために必要なことは何かについて、語り合っていただきました。

ロジスティクス4.0

秋葉:小野塚さんは物流業に関するコンサルタントとして、長い間ご活躍されています。

小野塚:私はローランド・ベルガーという戦略系のコンサルティングファームでコンサルタントをしています。会社としては物流関連だけではなく、メーカー、商社、小売、金融、建設業界など幅広く展開しています。私自身は、物流、サプライチェーンを一貫して担当して、約10年になります。

秋葉:最近『ロジスティクス4.0』(日本経済新聞出版社)という書籍を上梓されました。ロジスティクスの進化が非常に分かりやすく書かれています。簡単に1.0から4.0の進化について教えていただけますか。

小野塚:ロジスティクス業界には、大きな変革が過去に3回あって、今、4回目の変革の真っただ中にいるということです。1回目は20世紀初頭くらい、いわゆる大量輸送時代の幕開けです。これが一番わかりやすいかもしれません。今まで馬車で運んでいた荷物を鉄道やトラックで運ぶことができるようになりました。それまでは大きな荷物を運ぼうとしたら海上輸送しかなかったのですが、陸上でも大量輸送ができるようになったわけです。また海上においても、蒸気船、いわゆる汽船ができて時間どおり運べるようになりました。大きな物資をどこまででも運べるようになったことが、それまでとは決定的な違いです。
2回目の変革は戦後間もないころに起こりました。フォークリフトやコンテナ船が出てきて、積み替えるところで機械化や自動化が進みました。それまでは大量に運ぶことはできても、積み替えは手作業でした。例えば、船だけ大きくなっても、荷物は全部手作業で降ろすので、戦後直後頃の大型船は海の上を走っている時間よりも港にいる時間のほうが長かったのです。積み替えるのがそれだけ大変だったからです。もちろん全部ではありませんが、作業の機械化が進んだのが2回目の変革です。
次の3.0の変革は1980年代に起こりました。いわゆるシステム化が進み始め、WMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)やTMS(Transport Management System:輸配送管理システム)といったシステムを提供する会社が出てきました。貿易においても、NACCS(Nippon Automated Cargo And Port Consolidated System:輸出入・港湾関連情報処理システム)をはじめとするつながる仕組みができてきました。

そして、今まさに4回目として起きようとしているのが、「ロジスティクス4.0」です。大きなキーワードは2つ、省人化と標準化です。省人化は、今まで人間がやってきたことを機械やコンピュータがやるということです。例えば、自動運転トラックができて、宅配ロボットが配達し、ドローンが動いて、倉庫の中も全部完全にロボットが動かすようになれば無人になります。ただし、注意すべきことは、それは明日には実現しません。自動運転トラックも、2022年には高速道路での隊列走行を商業化させるという国交省の目標がありますが、2020年代に、高速道路は人が乗っているけれども寝てしまってもいい、2台目以降は人が乗らなくてもいい、くらいが現実的ではないでしょうか。普通の道路をすべてロボットが運転しているとか、ドローンが当たり前のように荷物を運んでいる世界はもう少し先の未来だと思います。
倉庫も同じです。倉庫の中の作業が完全にロボットに置き換わるとは思っていません。3年前に、ヨーロッパでロボットがどれくらいのスピードで倉庫の中に普及するか、予測シナリオをつくりました。これは、かつてFA(ファクトリー・オートメーション)がどれくらいの時間軸で進んでいったかをアナロジーとして使った、ヨーロッパにおいてどれくらい進むかという予測です。2030年に、倉庫の中で働く人の約4割がロボットに置き換わるくらいのスピードで進むでしょうというシナリオになりました。ヨーロッパのほうが日本より5年くらい先に進んでいることを考えると、仮に日本が同じ変化のスピードで進むとすれば、2035年くらいに約4割がロボットになっています。
4割といっても、これはすごい話です。それくらいロボットがやっている、あるいは人が要らなくなっているという話です。半分近くになるということはものすごくイノベーティブで、大きな変化となるでしょう。
ただ、逆にいえばヨーロッパでさえ6割は人だといっているわけです。ですから、省人化に関していうと、今までに比べて人の必要性が半減するとしても必ずしもゼロにはなりません。

小野塚:もう一つの標準化は、当然省人化と相まっての話ですが、今後いろいろな情報がデジタルになっていきます。ロボットを入れるために標準化をしなければならないのですが、逆にいえば、ロボットが入ったら必然的に標準化します。そうすると、今までは「我々ならではのオペレーションで安く運べます、品質が違います」といえていたのが、ロボットさえ入れてしまえば、どの会社でやってもサービスレベルがまったく同じという世界がやってきます。そうしたら物流会社はどうやって差異化するのでしょうか。
いち早く投資をして、スケールを狙いにいくのも一つのやり方です。DHLはシンガポールにR&Dの巨大なセンターをつくって、自分でドローンもつくり、自分で飛行機の研究開発もし、自分で電気自動車もつくり、自分で投資をしています。これはスケールを狙う戦い方です。日本には運送会社が約6万社ありますが、その6万社がスケールを狙う戦い方ができるかというと無理です。できるのはごく一部の大手だけで、そうではない会社は、規模の戦いになったときどうやって勝ち残るかということを真剣に考える必要があるわけです。世の中はどんどん標準化して、機械を入れて投資をしないといけない状況になります。スケールで競うことはできないとなると、違うところでどういう付加価値を出すかを真剣に考えないと、淘汰されてしまうかもしれません。

しかし、いろいろなベンチャーも出ています。一部には、中小の物流企業の出身の方がやっているベンチャーもあり、いち早く先駆けて進化をして、資金を得て、飛躍できるかもしれません。今は中小の運送会社がまったく違うビジネスモデルをつくって、20年後には今でいうユニクロさん、ヤマトさんのようになっているかもしれません。この本の帯には「次なるGAFAはどこだ」と書かれていますが、アップル以外の会社は創業から20年程度しか経ていません。それが今や時価総額で世界ベスト10に入る会社になりました。もしかしたらダイワロジテックさんもそうなっているかもしれませんし、ダイワロジテックさんが出資をされている会社が20年後にはトヨタやヤマトを超える会社になっているかもしれません。その一大チャンスなのです。

4回目の変化といっていますが、実は2回目、3回目はそんなに大きな変化ではありませんでした。4回目こそが100年に1回の大きな変化なのではないかと思っています。
20世紀初頭に大量輸送時代がきたとき、もともとは馬車で運んでいた人がトラックや車に変わったということは、馬にエサをあげていた人は必要なくなりました。ですが、ガソリンスタンドを始めた人は大きなビジネスになりました。つまり、物流をやっている人だけではなく、付随するサービスを提供している人たちにとっても100年に1度のチャンス到来だというのが私の認識です。

秋葉:インダストリー4.0をはじめ、メジャーなナンバーが変わるということは、変革のポイントを示しているというメッセージだと思っています。今回の4.0への進化とは、「属人の世界をベースに考えるのをやめましょう」という発想が、僕の中では一番大きいと感じます。
 『ロジスティクス4.0』を読んでもわかると思いますが、4.0になった瞬間に何が違うかというと、人工知能、ビッグデータ、IoTといったキーワードが出てきます。それらをどう生かすかということが先にあって、その上に、それぞれの会社の特色を出すために属人性があるということです。そういった世界の捉え方をしないと4.0という土俵に乗らないということだと思っています。

今こそ標準化するチャンス

小野塚:ロジスティクス4.0というキーワード自体は、もともとはドイツのインダストリー4.0に因んでいます。2011年から使われ始め、日本ではやり出したのは2014~2015年くらいです。第4の産業革命を起こして、ロボットやバーチャル・リアリティを使い、工場をスマート・ファクトリーにしよう、など、リアルとバーチャルを融合して産業革命を起こそうというものでした。そのとき、工場間を結ぶのは当然ロジスティクス、サプライチェーンなので、それがすごく重要だということで取り上げられ、ロジスティクスにおいてもイノベーションを起こすという議論になりました。

このときこの話題に対して日本の企業で比較的感度が高かったのは、もちろん大和ハウス工業さんもそうですが、エスアイヤー(Sier:システムインテグレーションを行う会社)、エレクトロニクス関係のメーカーなどでした。
2016年、2017年くらいから、いろいろなロボティクスが導入され始めました。2016年の国際物流総合展ではロボットがいくつか展示され、それを見たメーカーが、工場用の機械を物流用に使えるかもしれない、あるいはTMSやWMSのようなもので情報を吸い上げる仕組みができたら大きなビジネスになるのではないかと盛り上がってきました。
2015、2016年くらいまでは、私たちの物流業界の仕事といえばオペレーション改革、M&Aの支援、中期経営計画の作成など、また、特に国内のメーカーでは、拠点の集約、場合によっては物流子会社の売却といった話がほとんどでした。
2016、2017年くらいから、メーカーなどから、ロジスティクス4.0のビジネスにチャレンジしたい、新規事業を一緒に考えてほしいという話が出てきました。しかし、その時点で、そういったテーマでの物流会社からの引き合いはほとんどありませんでした。その後、国のいろいろな取り組みが進んだこともあり、ようやく去年あたりから、投資対効果を考える以前に人がもはや集まらない、これはもうやらなければいけないという考えの会社が何社か出てきました。それが現実的なところです。

秋葉:極端ないい方をすると、リーマンショックのようなショックではありません。クライシスとはいわれているけど、ある日突然目が覚めたらとんでもないことになっているようなショックではないのが非常に微妙なところです。かといって、昔みたいに10年も20年もかけて変わっていく時間軸でもありません。意外とここがポイントではないかと思います。小野塚さんが感度の話をしましたが、感度の良い会社は、どこまでできているかは別にして、実行し始めています。反面、新しいものを入れようとしたとき、「それは実績があるんですか」「どこどこの会社はやったのですか」といったような視点の物流会社もまだ少なくありません。
人手不足の話も、実は世の中でいわれていることとは違う状況が起こっていますので、経営者の人たちはそこまで踏み込んで知ってほしいと思います。例えば、物流センターの現場は、これまではパートさんの比率が圧倒的に高く、人材が足りないところを派遣会社に埋めてもらったり、ピーク時のテンポラリーをお願いするという方法を採っているとこが多数でした。ところが、今新しいセンターを立ち上げると、派遣さんの比率が高いのです。
これは二つの問題に直面することになります。一つは、派遣のほうが、当然コストが高くなります。もう一つは、物流のオペレーションをしている会社からすると直雇用ではなく、派遣会社にお願いして人を出してもらいます。パートさんは基本的に直雇用ですから働く時間、働く曜日が決まっていて、同じ人がきます。そうすると、センターの中のオペレーションの経験値が上がっていきます。ところが、派遣会社から来る人は同じ人ではありませんので、同じ生産性、同じ作業品質レベルが担保できない人の数が圧倒的に多くなります。それなのに時給単価は高い。ですから、単に数だけを見て集まっているからいいというレベルではなく、実はもっと大変なことが起こっています。

小野塚:経営者の方に対しては現実を直視しましょうということだと思いますが、日本でイノベーションを起こすことを考えたとき、これも好機だと思います。なぜなら、オペレーションを徹底化に標準化しない限り、毎日変わる人たちには対応できないからです。今までは「あの人にお願いしておけば何とかしてくれる」という属人的ノウハウに頼っていたわけですが、それが日本の強みであり弱みでした。日本人は対応力で何とかできてしまいます。荷主の会社もそういう会社を好みます。4時といったのに、4時半くらいに持ってきて「すみません、もう1個お願いします」「頑張ります!」。時間外に「今、どうなってるの?」といわれて何とかする。これができるのが日本のいいところでしたが、属人的で標準化されていません。だから日本にロボットが入るのは世界から5年遅れなのです。

秋葉:日本の場合、人がやることで、すごい生産性が実現できていたというのが、大きな原因なのではないかと思います。人がそれだけ優秀なわけです。

小野塚:世界屈指の生産性があって日本は素晴らしい。しかし、素晴らしいが故にそうしたイノベーションから遅れてしまう。最近でいうとキャッシュレスもそうです。日本は現金が素晴らしいからキャッシュレスが進まない。おつりを間違わないし、偽札もない、自販機にも入る。タクシーの品質が高いからウーバーがはやらないのです。物流もまったく同じような状況です。そういう意味でいうと、派遣が増えるということは経営者の方にとっては大変なことですが、潮目が変わるという意味においては、もしかしたら良いきっかけになるのではないかと思います。

秋葉:数だけ見ているとわからないので、そこを見てほしいと思います。実態を見たとき、これは本当に変えなければいけない、人に考えさせてはいけない、ロボティクス化や人工知能に変更できるのであれば変更しようと考えるチャンスなのです。小野塚さんが「標準化」とおっしゃいましたが、私たちはどちらかというと苦手です。欧米ではルールを決めることから入らないと業務がきちんと回らないことが前提です。日本の場合は皆さん優秀で真面目なので、やりながら整理していくというやり方をしているところが大半です。
ですから、標準化するチャンスとしてまず業務を整理するやり方もありますし、ロボットを導入することで標準化することもできます。あるいは人工知能を導入し、どういうデータを入れて、出てきた結果に対してどうするかを考えることも、ルール化のひとつです。標準化といっても、様々な方法がありますから、可能性を考えるべきです。そういう意味においても、頭を切り換えるチャンスだと思います。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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