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コラム No.27-67

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第2回 物流で社会課題を解決する株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × セイノーホールディングス株式会社 執行役員 河合秀治

公開日:2022/01/11

ラストワンマイルの二つの課題:働き手不足と再配達

河合:ラストワンマイルの課題は明確に大きく二つあり、一つが働き手不足です。物の量が急増しているのに届ける人がいない。これが根本的な問題です。国土交通省が8月6日に公表した令和2年度宅配便取扱実績によると、宅配便の取扱個数は前年度比11.9%増の48億3647万個となり、6年連続で過去最多を更新しました。さらに、約48億個ある荷物のうち、ヨドバシカメラさんのように独自配送されているところは取扱個数に入っておらず、アマゾンさんも運送会社の取扱分しか入っていません。大手の運送会社の合計数字ですから、生協さんのようなところも入れるともっと増えると思われます。この取扱個数が80億個になったら、ドライバーは確実に不足するでしょう。
もう一つの問題が不在の再配達です。配達が平均2回とすると、取扱個数が50億個でも実は100億個配達しているのと同じですから、さらにドライバー不足になります。
これをなんとかしようとすると、届けるという機能の分母を増やさなければなりません。その一つがドローンを使った配送です。ドローンは無人で、1人が100機操縦すれば100人分働けて、かつ労務管理の必要がありません。事故リスクも低いドローン配送は一つのポイントです。ただし、ドローン配送がすべてではありません。ギグワーカー(単発で仕事を行う人たち)や女性の活躍についても考えなければなりません。そこで今始めているのが、新聞配達店の方々やポスティングをしている方々を届けるという機能に変えていく試みです。それによって分母が増えます。大手運送会社も、この先劇的にドライバーを増やすことはまず不可能です。たとえ、年率103%、105%とドライバー数を増やしたとしても、間違いなく荷物の物量が増えるほうが早いのです。これをどうするのか。我々1社では対応できないので、業界全体として働き手を増やすことを考えないと、受けきれなくなるのは間違いありません。

秋葉:フィジカルインターネットという言葉がいいかどうかは分かりませんが、あるエリアまでは計画的に物を動かすことができると思っています。例えば、該当エリアの中で、一定の人数が生活していれば、そのエリアの中でどういうものがどれくらい消費されるのか、かなりの精度で分かります。しかし現実は、売る側の理屈で消費物を送り込んでしまっている側面もまだまだ残っています。消費量と送り込まれている物のバランスさえ取れれば、おそらくムダも減るでしょう。
ただし、ラストワンマイルのところでは、届けるのか、受け取りに来てもらうのか、あるいはもう少し小単位である基点に送り込んでそこでばらまいてもらうのか、いくつかの方法を組み合わせて考えなければなりません。今までのような宅配一辺倒の話ではなく、いろいろな方法を、組み合わせ、最適な方法を探っていくという時代になっていく気がします。

河合:山梨県小菅村では、近隣の町から荷物を運び込むのに、今は約40分かけて、それぞれの運送会社がそれぞれのトラックで配送しています。その状況をバスを使って解決しようと考えています。各地の貨客混載を調べてみると、面白いことに運送会社Aと○○バス、運送会社Bと△△鉄道というように、1対1の関係はあるのですが、複数社での混載はあまりありません。運送会社Aが荷物をバスに乗せて、運送会社Bはトラックで運んでいたりしているわけです。このようなムダをやめたいのです。
村民の大切な足であるバスを存続させるためにも、荷物をバスに乗せるのが一番です。後部座席は荷物のスペースにして運び込み、村に入ったら、例えば、月曜はセイノー、火曜は別の運送会社というように、当番制にしても面白いのではないかと話しているところです。
あるいは700人の村であれば、最終的には村の人がお仕事として運んだり、場合によっては郵便局が受け持ってもいいですよね。そこでできる人がやればいい。そうすれば、町から村へ運ぶとき1社に荷物がまとまるわけですから、当然効率が良くなって、トラックの台数は何分の1かに減るでしょう。村に入ってきた後も1台、2台で済みます。環境負荷の面においても、車をEVにするよりよほど効果的です。村の人にとってもありがたい話だと思います。バスは維持されるし、雇用は生まれるし、物は普通に届くわけですから。そうなるといいなと思っています。

秋葉:やり方の話をしているだけで、技術的な進歩を待たなくていいですしね。

河合:ただ、これは都心部の真ん中ではできません。小菅村や北海道上士幌町では皆さん積極的に話をしていただけるし、実現しやすいので、ここからスタートして徐々に広げていきたいと思っています。そのとき、物流業界で協業する際にキャッチボールのネックになっているのは、そもそも皆が投げている玉が違うということです。バトミントンをやっている人、野球をやっている人、サッカーをやっている人がいて、同じ宅配便なのに使っている道具が違うのです。分かっていたことですがこの違いがすごく大きいですね。原票番号が違う、ハードウエアが違う、プリンターが違う。過去に物流業界で統一原票をつくろうとしたことがありましたが、これを統一すること自体が無理だと思います。

秋葉:仮に皆が統一しようと言ったとしても、数年の時間軸では無理ですね。

河合:荷主さんに原票を渡している、原票枠を買ってしまっている、設備投資をしているなど、言い出したら10年以上かかりますね。そこで考え方を大きく変えて、そこの部分は完全にスタートアップの皆さんのお力添えで検討していただいています。例えば、どのEC事業者の原票でも読み込むことができるようなスマホアプリがあれば、配達する人は、原票番号を読み込み、普通に配達して、終わる。極端に言えば、どの運送会社で発送された荷物であっても、原票番号さえついていれば、配達したい人がそのアプリを入れて原票番号を読み込めば終わりです。今までのように、20万円の端末を導入し、これに合うプリンターはこれで、といったことをやらなくていいのです。物流の歴史を見てきた者からすると、こんな未来は想像できません。「運送会社Aの原票は読めないな……、だったら原票を切り替えてもらってうちの荷物にする必要がある」という発想になってしまうのです。
そういったことも、フィールドがあって、実際に物が動いて、受け取る人がいるというところでやってみてから、横展開をします。まさしく水たまりの中でいろいろなことをやって、少しずつ水たまりを広げていくわけです。やればやるほどいろいろ見えてきます。バスの貨客混載の話も、「早く言ってほしかった」といった反応でした。それまで1人か2人しか乗っていないバスの後ろを宅配のトラックがついてきていたのですから。かなり以前から大きな課題だったはずですが、バス会社の立場からするとバスの乗客をどう増やすかということだけを考えていたわけです。

秋葉:自分のフィールドの中で物事を考えてしまう。

河合:ところが、皆の目線が村全体の効率化や環境といった上位概念に上がると、空いているバスに荷物を乗せればいいという発想が生まれます。そういったきっかけがあると動きは非常に速いです。本当にありがたいことですが、それほど課題になっていたのだと思いました。

幹線を生かすラストワンマイル

秋葉:私も河合さんも物流とその周辺のことを24時間考えています。私たちの周りはそういう人が多いので、普通に物流をいかに効率化するかという会話をします。しかし、多くの人にとっては、物流はすでにあるインフラなのだと思います。ですから、全体を考えた上での本質的な効率化ということまではなかなか進まないのでしょう。

河合:セイノーHDも9割はBtoBの物流網のインフラを担っていて、中小事業者のBtoB貨物が圧倒的多数です。私も東大阪ではトラックに乗って荷物を運んでいたのでよく分かりますが、ちゃんと届くことが当たり前なので、100%やって当然で、べつに130%を求められているわけでもありません。誤差なくきちんとやることが重要なのです。これはこれでやらなければいけないことで、社会的な責任もあります。ドローン配送は話題性があるので皆が面白がってくれるのですが、実態としては、これから主軸になるまでまだまだ時間がかかりますから、やはり本業が重要です。本業の人たちからするとおもちゃなわけです。「あいつ、おもちゃで遊んでテレビに出たり、楽しそうだな」と言う人もいます。ですから、彼らがやっている強固な事業体の上に乗っているということを、配慮を持って説明しなければなりません。
私が社内で説明するときには、「幹線を生かしたラストワンマイル」と言っています。例えば、このコロナ禍で自転車がたくさん売れているようですが、自宅まで持ってきてくれる宅配業者はいません。営業所止めになってしまって、受け取る人が取りに行かなければならないのです。しかも、セイノーの営業所は高速道路からは近いけど、家からは遠いことが多い。ただ、何度か利用している人は慣れているので、「セイノーさんの営業所は1回目に行ったときは少し怖かったけど、2回目以降になると、皆さん職人ぽくていいですよね」と言ってくれます。
ですから、その機能をうまく使いながら、ラストワンマイル側は着店から先を切り離して、得意な会社に任せようと思っています。例えば幹線では宅配便を100個まとめて運ぶことで、1個100円で運ぶことができると仮定します。そこから先は得意な会社に任せます。それはもしかしたらピザを運んでいる人かもしれないし、フードデリバリーサービスのようなギグワーカーかもしれないし、新聞配達の方々かもしれません。それをやると幹線が生きます。幹線が100円で、そこから先が200円だとして、少し利益を乗せたとしても、350円で宅配便が運べてしまうわけです。
このように、今は幹線を生かすことにフォーカスしています。長距離、中距離をまとめて持ってきて、バラして、ラストワンマイルはそれぞれの得意分野に任せていく。 今、社長である田口が「オープン・パブリック・プラットフォーム」と言っていますが、それがこのような考え方です。トップが言うとどうしても話が大きくなりすぎてしまいがちなので、一つずつ「こういう考え方でいいのか」とアイデアを出していきます。そうすると、インフラを守っているチームも、幹線が生きているのかが分かります。そのためにもC向けの、直接意見が聞けるルートを幹線と接続しておきたいのです。BtoBでは、見えているものはほとんどセイノーが運んでいるのですが、直接手に渡るときのタイミングにまったくアプローチできていないので、世の中の動きと少し縁遠いところがあります。ここにもう少し近づくべきだという思いがあります。

物流発社会課題の解決へ

秋葉:ンビニ配送も、物流という入口からの社会課題の解決です。河合さんがやっていることの中で、物流発の社会課題解決は他にもありますか。

河合:もともと物流は飛脚で、誰かの代わりに物を運ぶというお手伝いをしてきました。縁の下の力持ち的なところがあって、これが業界全体のDNAである気がします。だから、社会課題解決に資する動きだということが分かると、燃える人が多いです。これは大きいですね。

秋葉:今、SDGsという言葉があって、持続可能社会について学校でも教えられています。学生もその意識が非常に高くて、私が教える学生も、「それに適合する商品を購入したいと思いますか」という質問に対して、70~80%の人が「そう思う」と答えています。さらに、そういう取り組みをしている企業に入りたいという学生も増えてきています。ニーズがあり、そこに関わりたい人たちも増えてきていると思うのです。

河合:2011年に私がココネットを創業したのは、買い物弱者対策に取り組むことが目的の一つでした。自分の経験もあり、おじいちゃんやおばあちゃんの買い物を手伝おうと始めたのですが、やり始めると、障がいがある方々の大変さや、小さなお子さんを抱えている人たちの大変さも見えてきました。しかし、担当してくれているスタッフに「社会課題解決」と言ってしまうと、大上段に構えていると受け取られてしまう恐れがあります。 私が日頃スタッフに言っていることなのですが、大根1本、スーパーから家の冷蔵庫に持ってきてくれるだけでも、社会課題解決を通り越して、その人の課題を見事に解決しているわけです。「今日は大根が食べたいと思っているおじいちゃん、おばあちゃんがいて、だけど買いに行けなくてお腹が空いている。それを持ってきてくれただけで、あなたは十分社会の役に立っているから」と。1つ1つの細かな動きが、十分社会課題の解決になっている。これは物流も一緒です。A地点からB地点に運ぶこと自体すごく重要で、十分社会課題の解決になっています。
それを明確に分かってもらいたくて、買い物弱者対策や過疎地域の流通の解決を考えたり、人口減少をどうするかといったことに取り組んだりしています。日本では一人親家庭の貧困状態がかなり進行してしまっており、そういったご家庭に対してもこども宅食などで食を提供しています。また、全国から寄付物品が届くのですが、これを誰が仕分けて、誰が在庫管理をして、誰が届けるのか、という問題も出てきます。そこに我々の持っているノウハウを生かして、実際に仕分けをして届けるまでの物流設計をしています。
こうした貧困家庭対策や医療従事者向けの食品提供、寄付系の物流などに取り組んできました。NPOや一般社団の方々は熱い想いはあっても、物流のことは分かりません。だから仕分けを1日中やってしまったりしている。でも、当社がローラーコンベアーを持っていけば、1時間で終わります。物流自体が社会課題解決につながる動きができることを実践で見せていく。こういうところに物流が生きているんだよと言わないといけません。縁の下の力持ちの人は静かに耐えていて、縁の上のことはあまり分からないのです。

秋葉:世の中多くの人が、「誰かに頼んだら届けてくれる」という意識をもっていると思います。では、誰かとは誰なのか、その人にどういうことをどう頼めばいいのか、という視点が欠けていると思います。河合さんの活動もそうですし、私ら大和ハウスグループの活動もそうですが、少しずつでもわかってもらいたい。わかってもらった上で、興味を持った学生さんや若い人たちが、直接的か間接的か、また新しい技術を入れたりして、サイクルが回り出したらいいなと思います。

河合:物流業界に20年もいると、当然ながら皆物流のことを知っているだろうと勝手に思ってしまいますが、いくつかの大学で授業をやらせていただく機会があり、学生たちと会話すると、「物流? ラストワンマイル? オープンイノベーション? はたまたセイノー? 何それ?」という感じです(笑)。
私の授業を聞いてラストワンマイルを初めて知った人がいて、その人が去年入社してくれました。これは業界全体でやっていかなければならないことですが、経済活動で物流がどのような役割を担っているか、ただのコストセンターではないということ、社会課題解決につながっているということ、持続可能な社会を目指すために、どのように物流を組み合わせるかを伝えていくことが必要です。これからは当然ながら環境の話も出てきます。物流は排気ガスを出している人たちと捉えられがちですが、いかに皆で共用して環境負荷を下げていくか、サプライチェーン全体から見て、どのように効率化するのかという議論をしていかなければなりません。もちろん物流事業者として効率化を図っていかなければならないのですが、分け隔てなく、サプライチェーン上でどうあるべきかという議論が必要です。
今までは在庫をあちこちに移動してくれるほうが運賃をいただける分、利益は出ましたが、今は「運ばない物流」という考え方が必要だと思います。運んでコストを払うよりも、運ばない物流を実現してくれた人にインセンティブを渡したほうが、よほど効率的で、安くて、環境負荷も低いはずです。それをやることによっていかに効率的に他の収益を得るか、ということだと思います。運ぶことについては、同業他社とオープンに組み合わせていくことが大事だと思います。ラストワンマイルだけではなく、そういう方向感でやりたいですね。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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