土地活用ラボ for Biz

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コラム No.27-65

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第3回 これから物流はどのような価値を創り出していくのか株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × SBロジスティクス株式会社 COO 安高真之

公開日:2021/09/30

目指すのは「人が幸せになる物流」

秋葉:安高さんがSBロジスティクスでこれからどのようなことを目指しており、具体的にどのようなことをしているのか、お聞かせいただけますか。

安高:無数にあるのですが、残念ながら、明確なゴールを描けるほど物流のことを知り尽くしていませんし、今後、知ることがさらに増えていくと思っています。悪い意味でも良い意味でも、ゴールがまだ決まっていないというのが正直なところです。ただ、軸だけはぶらさないでおこうと思っています。変わらない普遍的な軸、その一つが「人が幸せになる物流」です。この「人」にはいろいろな意味を込めています。「お客様は神様です」と言いますが、物流で働いている人もお客様の一人だという観点です。私たち物流に関わっている人間、お客様を含めた「人」という意味で、「人が幸せになる物流」がしたい、というのが変わらない大きなテーマです。もう一つの軸は、なぜ私たちが後発で物流をやり、何を武器にして違いを出すかというと、やはり「自動化」だと思っています。
「人が幸せになる物流」と「自動化」、この二つが変わらない軸としてあります。ただし、全部が全部を自動化するというような、マッドサイエンティストのようなことはやるべきではないと思っています。最初はそれに近い形でやってみました。どこから無理なのかという物差しは必要で、そこは自分でやらないとわからないところがあったからです。ただし軸は技術です。技術が世界を変えます。

秋葉:私もサプライチェーンやロジスティクスに長く関わってきましたが、最近改めて、バリューチェーンとサプライチェーンというものを見ています。お客様や関わる全てのステークホルダーにどう価値を出すか、というのがバリューチェーンです。サプライチェーンはお客様にものを届ける流れですが、そのプロセス一つひとつを見直すだけで、関わる人たちに価値を出せるポイントがたくさんあると思うのです。その実行形の最たるものが物流、ロジスティクスの領域です。ここに一石と言わず、漬物石なのか庭石なのかわかりませんが、安高さんにドカンと大きな石を投じていただきたいですね。

安高:だといいですね。二つの軸についてお話ししましたが、私は前者の「人が幸せになる物流」のほうがはるかに重要だと思っています。アメリカで暮らすと物価が高いと感じます。しかし、所得と物価の比率は日本と大して変わらず、むしろ安いくらいです。これが何を意味するかというと、この10年、20年で日本が相当沈没したということです。購買力もなければ、払う賃金も少ない。人口が減っているというより、貧乏になっていくということがもう始まっているのです。この貧乏のスパイラルを直さないと、倉庫で働く人たちもハッピーになりません。要は、「コストダウンのためにロボット化します」ではないと思っています。

秋葉:「人間一人とロボットでやったとき、どれだけの生産性を上げられるか」という考え方が必要ですよね。

安高:私たちは、ロボットの自動倉庫を立ち上げる前は、全てマニュアルでやっていました。もちろん効率も悪いですし、労働集約型の仕事です。自動化が決まった後、そこで働いているワーカーさんたちに、「今度立ち上がる新しいところは、1階は知っての通りマニュアル、それに対して2階は自動倉庫で全部機械化されています。あなたたちは歩かなくていいです。何ならロボットが横を通っています」という話をしたところ、最初の反応は、「早くそこで働いてみたい」「面白そう」という感じでした。実際に始まればいろいろ意見はあるのですが、「どんな感じか想像がつかないから、早く見たいです」と、皆が楽しみにしてくれていたのです。そこで少し救われました。私は、ロボットは人の仕事を奪ってしまうものだと思われるのではないか、と考えていたからです。ワーカーさんの中には「私たちはもう用済みなのですか」と言う人たちが出ると思っていたのですが、逆に皆が目を輝かせて、「楽しみです」と言ってくれました。それで、人間は普遍的にこういった変化が好きなのだと、少し自信がつきました。
機械化、自動化、省人化など、何か変化を加えることに対して、私は性善説を取りたい。人間はそれを楽しみにするものだと思っています。楽しみにしている人がそこに入ると、楽しみからだんだん現実に変わっていって、意見がたくさん出て、次のシーズになります。このサイクルは美しいと思っています。「実業」と「開発」と「改善」を回していくことが最大のメリットです。ただし、今の段階では自社でやっているだけなので、このロボットによる自動化を他社に展開するのはよりハードルが上がります。フレームワークスさんはもともとそれをされている人たちなので、尊敬しかありません。自社の中でもこんなに大変なのに、他社でやるなんて一体どうなってしまうのだろうかと思います。ただ、私たちにはソフトバンクグループというベースがあるので、このフィールドは大きいですね。

秋葉:ロボットによる自動化をどうやって活用するのかもありますし、その活用の仕方で、世の中に対するインパクト、訴求も大きく変わると思います。

安高:孫社長という希代のビジネスマンがいますから、良くも悪くも注目される局面があります。お金の話だけではなく、決断力を持っている方です。私たちのロボット事業や物流事業も、孫社長が決断しなければ生まれていませんでした。そういう人とビジネスをやれているのは非常に大きいと思います。彼に正しく理解してもらい、彼がより良い絵を描くことができると、このグループでやる意味は大きいと思います。
短期的には、実は、もともと計画していたものがまだ終わっていません。新型コロナウイルス感染症の影響でロボットエンジニアがアメリカから日本に入ってこられず、スケジュールが後ろ倒しになっています。今年中に、2年前に構想したものをいったん完成させることに注力したいと考えています。また、次の話では、2号拠点を考え始めています。今までやってきたことを全部盛り込んだ、採算的にも魅力的な倉庫をつくれると考えています。ただ、倉庫にはもののサイズに依存したロジスティクスというものがあります。「このものに関してはここでできる」というだけで、例えば、冷蔵庫を他の小さな商品と同じ価格でやるのは当然無理だという話になります。そういうことがデータとして見える化できている、ということもあります。
中期的には、いろいろな機会をいただいているので、それらを活用して、拠点を拡大したり、やっているサービスの質を上げていったり、または新しいロボット、新しい自動化設備を追究したいと思っています。

今、物流施設に求められていること

秋葉:自動化の話も、ある制約の中であれば当然全自動もできるのですが。

安高:実際にやってみてわかってきたのが、倉庫の拠点エコノミクスはビジネスに支配されるということです。シェアリングの話で言うと、われわれも3PLとして拠点を複数荷主様にシェアしていますから、今は60社くらいの荷が常に入っていて、それがアトランダムに出ていきます。量も頻度もそれぞれ違うのですが、結局は保管だと思っています。在庫をどれだけ効率よく持つか。持てる在庫の量が決まれば、あとは商品の回転数に合わせて出ていくだけです。正直、どこの会社でも回転数が決まっていれば変わりません。同じ床面積をより効率化できるもの、そういったソリューションがあれば床面積あたりの売り上げを高め、投資回収が早くなります。
国には、床面積あたりの在庫効率を上げている機械設備に対して、半分程度投資金額を補助いただけないかと思っています。逆に、ロボットアームはその対象にしなくていいと思っています。なぜなら、ロボットアームのピッキングロボットは、明確に人との代替を行うだけであり、投資対効果は人との比較になるだけだからです。床面積あたりの効率を上げる話は、効率を上げるために床面積を複数社でシェアする発想につながります。補助をしていただく対象は、人との入れ替えドライバーそのものではなく、同一床面積あたりの売上増または複数による床面積シェアであるべきと思いますが、それはビジネスドライバーなので利が生まれます。その利に対して飛びつく人が増えるので、そこのボタンを押してあげると、結果的に倉庫の効率が上がり、倉庫の効率が上がれば自動化が進みます。これは政府の方々にぜひお伝えしたいですね。

秋葉:私は、棚卸し資産を計算上の情報で問題ないと言ってもらうのが一番大きいと思います。一つの引き出しの中に私の名義と安高さんの名義が一緒に入っていたとしても、数えなくていいようにしてほしいですね。

安高:そこがシェアリングをやっていてきついところです。監査基準の棚卸しは統一してほしいですね。「ここは標準化できるでしょ」と思います。

秋葉:今回、安高さんにいろいろとお話ししていただきましたが、先頭を走りつつ、実商売をしつつ、それをインテグレーターとして展開していくという、いくつかの顔、役割を担ってやっていっていただかなければなりません。ソフトバンクグループという土俵だけではなし得ないこともたくさんあると思うので、われわれ大和ハウスグループを含め、周りを巻き込みながらやっていっていただけたらと思います。

安高:最近増えてきている話で、もちろん秋葉さんもご存知だと思いますが、倉庫というのはやはりハブなのです。結節点としてそこにいろいろなものがつながっていきます。大和ハウスグループさんは当然そこを意識して倉庫をつくっていかれるでしょう。例えば、GLP ALFALINK 相模原は佐川急便と西濃運輸が同居していますし、大和ハウスさんが手掛けられた大阪茨木の関西ゲートウェイには、ヤマト運輸とAmazonが同居しているのもそうですよね。そういうことをどんどんやってほしいと思っています。そこには、先ほどからテーマになっている、ストーリーがつながっています。
最近、ロボットのレンタルもよくあります。使えるのであればどんどんやったほうがいいですし、シェアリングもどんどん進めてほしいと思います。その次は何だろうと考えると、例えば、サーバールームが必ずあるとか、倉庫で坪貸ししているエリアの外に会議室があるといいですね。先ほどのアジャイルの話と似ていて、「つくったら終わり」ではなく、「つくりながら良くしていこう」というのがトレンドなのだと思います。そのはしりとして、人材派遣会社が入っていたり、コンビニが入っていたり、託児所が入っていたりするわけです。それを延長させていくとどんどんコアな仕事に近づいていきます。例えば、大きな拠点の倉庫の中にシェアオフィスをつくってもいいじゃないですか。そこに入ってくる業者が常駐することも簡単になるし、わざわざ新しくオフィスをつくる必要もなくなります。倉庫会社としては、過去10年、相当力を注がないと人が集まらないというニーズがあるから前述のようなことをやったのだと思います。そこに入っている物流業者、システム業者など、さまざまな業種の人たちがいるので、コミュニケーションを取る場を物流施設側が共有で用意するなど、やり方はいろいろあると思うのです。そこのハブになるのがおそらく拠点です。大規模拠点であればあるほど、そういった機能を開発していただきたいですね。

秋葉:物流センターという発想から建物を考えるか、オフィスという発想から建物を考えるかでも、まったく違います。大和ハウスグループが手掛けた代表的な例でいうと、ユニクロは明確にオフィスとして有明本部を使っています。そのような例もある中、もう一度物流センターの建物自体のあり方を考える良い機会だと思います。

安高:ここ10年くらいの物流倉庫に対する私の最大の不満が、サーバールームやハブボックスがなぜもともとついていないのかということです。倉庫の中は必ずIT化されていくので、そういうものがはじめからあるべきです。何ならサーバーを貸してもいいと思っています。例えば、「大和クラウド」のようなものを用意していただいて、倉庫の中でオンプレ(オンプレミス:情報システムを使用者が管理している施設内に設置し運用すること)、クラウド型だけどオンプレだと速度が速いので、非常に使い勝手が良くなります。

秋葉:そうなれば、わざわざマテハンロボットのためにサーバーをどうするかといった話もなくなります。

安高:そういう設備があれば、本当に違いが明確な、坪貸しだけではない世界になります。「サーバールーム完備で光ファイバーを通す管も最初から設備としてあり、セキュリティーもバッチリだから選びました」という話もありうると思います。私たちはシステムの人間なので、そういうことはよく知っていますよね。システムだけでもそうですし、おそらく他にも無数のそういった「こと」、先ほど「もの」ではなく「こと」だという話をしましたが、「こと」の場としての物流設備に期待しています。 このコロナ禍で、今、私たちの本社にはほとんど人がいません。営業系、システム開発系は基本的にリモートワークで、会社に出社していなくて、集まるとしたら倉庫です。結果的に、倉庫のミーティングルームが足りなくなっています。仕方がないので出先の人間はシェアオフィスを使ったりしていますが、それこそ無駄な話です。倉庫にミーティングルームがあって、業者と話す場所があって、ないしはそこで展示もできたり、いろいろなことがそこに集められるような、オフィスと倉庫が融合したようなコンセプトがあるととても良いと思います。

秋葉:オフィスだと思ったらべつに不思議ではない設備もあると思います。

安高:新しくパーテーションを仕切って、消防署に行って、建築を確認してというのは面倒なので、はじめからつくってあって、クラウド型でサービスしたり、時間貸しでサービスしてくれれば、それで採算がとれると思っています。

秋葉:その考え方は大規模なセンターだけではありません。イメージされるようないわゆる物流センターではなく、複合的な物流施設、デポのようなものも必要になります。単なる物流施設ではなく、「オフィスに物流機能も付いている」くらいのイメージのほうが私の中では近いですね。

安高:先ほど秋葉さんに先頭を走っていると言っていただきましたが、一番の先駆者は秋葉さんです。先駆者としての難しさと恐ろしさをぜひ学びたいと思っています。そんなに簡単なことではないということが、やってみてわかりました。

秋葉:私がDXやシェアリングを言い始めてから5年ほど経ちますが、この期間は非常に大きな変化が起こった期間だと思っています。世の中の、特に物流に関わる人たちの意識も、考え方も、少しずつ変わってきています。そういう意味では、私が言い始めた、やり始めたときよりも環境が整っている気がします。

安高:条件はどんどん良くなってきています。ただ、何回かめげそうになったこともありました。もともと1年くらいで終わるはずのことが、すでに2年半目に突入しています。会社組織ですから、当然、どうなっているんだ、なぜ遅れているんだ、お金はどれくらい必要なのか、赤字なのか、といった話になるわけです。世の常なので仕方ありませんが、めげそうになりました。これは本当にいけるのかと迷ったときもありました。そんなとき秋葉さんに、「安高さん、とにかくやり切ってくれ。やり切ることが大事だ。倒れるなら前を向いて倒れろ」と、励ましの言葉をいただきました。これには救われました。それがすごく大事だと思っています。私もうまくできるかどうかはわからないですが、少なくとも私のチャレンジの難しさを理解してくれる先輩がいて、陰ながらアドバイスをいただいたり、支えてくれることがとてもありがたかったです。大きな支えになりました。ようやく4月にロボットが動いて、秋葉さんに見に来ていただいて、「とんでもないものをつくったね」と言っていただきました(笑)

秋葉:楽しいですよね。私たちはああいうものを見るとドキドキ、ワクワクします。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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