土地活用ラボ for Biz

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コラム No.27-28

サプライチェーン

秋葉淳一のスペシャルトーク 第3回 シェアリング物流のコアで、かつ本質的なところは、進化することフレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 株式会社エアークローゼット代表取締役社長兼CEO 天沼 聰

公開日:2018/08/30

経験値をシェアできるのが一番大事なこと

天沼:これは、私がシェアリングエコノミーの概念の好きな部分でもあるのですが、シェアリング物流のコアで、かつ本質的なところは、いわゆる“進化”だと思います。経験値がこれまでとは圧倒的に違ってきます。既存の物流での経験値は、1社が業務でやる経験値なので、縦の深さは深まるかもしれませんが、横の経験値の広がりはどうしても限られてしまいます。返品機能ひとつとってもそうです。シェアリングの機能の中に、返品の機能を付ける場合、1社の返品業務だけではなく、この先多くの返品業務を経験することができるという概念は、私は一番大事だと思っています。それは、みんなの経験をシェアしているのと同じことです。みんなの経験をシェアして成長させることで、みんなハッピーになることができます。
1社の経験だけで成長できることは限られています。もちろんそこも必要で、お互いが切磋琢磨していき、成長すなわち進化スピードが早いほうが勝っていくという考え方もあるとは思います。

しかし、これまではどうしても限られた成長でした。シェアリングエコノミーで大事なのは、経験すらもシェアすることです。
もっと広い視点からいえば、今後の全世界的な動きでいうと、我々が持っているあらゆるデータや経験値を本来は人類で共有して進化したほうが、いわゆる消費者という捉え方よりも、発展という意味では当然スピードは増しますし、成長も大きくなります。
国レベルにおいても、データのシェアも含めて、今後取り組みがされていくと思いますが、そのデータのシェアと同じくらい大切な物理的な経験のシェアを、今回秋葉さんを中心にチャレンジされるというのが、私が捉えている一番大事なところです。今後物流を進化、成長させていくために、それが一番大切なのではないかと捉えています。

秋葉:経験値のシェアというところはすごく大きなポイントです。前回でお話しした、シェアの捉え方が十分ではないということと同じなのですが、個別にやるか標準通りにやるかということです。これまでは、ほとんどの会社の物流プロセスが標準には乗れないので、どうしても個別の仕組みになってしまっていました。
しかし、すべてはシェアできないけれども、シェアできる範囲を広げていきましょうという発想になれば、物流のベーシックなファンデーションのところはすべてに共通にできるかもしれませんし、荷扱いによっていくつかにカテゴライズすると、その中での経験値のシェアはものすごくしやすくなります。
こまかくカテゴライズ(細分化)されたうえでシェアができれば、まったく新しい人、初めてやる人がポンと入ってきたとしても、ほぼ最適解でそれを利用できます。利用する側もそうだし、オペレーションする側の会社も、経験値としてサービス化されたものを使えば、同じレベル感でどんどん仕事ができるようになってくると思います。

天沼:我々は今クリーニングに関して、おそらくクリーニング業界がこれまで持ってきた縦の経験値ではなく、クリーニングという機能を使った横の経験値を広く持っています。実は、今もクリーニング会社とお話しをさせていただいていますが、「これまでこんな洗い方の概念はなかった」とか「今までこんな課題はクリーニング業界ではなかった」というものも、我々はすでにたくさん見つけています。それが経験値であり、成長だと思います。
それをただ1社で、我々のこの洗い方が独自ですと抱える方法も、もちろんビジネス上はありかもしれません。ただ、それを共有し使うことで、もしかしたらお客様がよりハッピーになれるかもしれない。それを使っていただくことで、もっとほかのサービスが提供されるのであれば、我々ももちろんハッピーですし、それがさらに進化するのであれば、自分たちの事業としてもハッピーになると思っています。そういった経験のシェアを通しての成長に、私はすごく注目しています。

資産活用としてのビジネスの展開もある

秋葉:今までは物流というのは、なかなか共有が進んできませんでした。しかし、ある会社のためにいくら経験したからといって、別の会社にいったらまたゼロから勉強するということが起こっていたはずです。そこのリソースや時間の無駄も、実はものすごくあったと思います。 逆にいうと、私はこういう企業の経験をしたとか、こういう会社の仕事もしたという属人性が価値になっていたのですが、そこも壊していかないといけません。私がそういう発言をすると、その部分だけを切り取られて敵のように言われたりすることも事実ですが(笑)、シェアリングの話をしているときには、敵などというものはそもそもありません。
みんなでシェアしていくのですが、「一緒にできないこともある」という話だと思います。その辺はやはり見てもらって、実際に使ってもらうことが理解していただく、一番早い方法だと思います。
ここまでシェアリングでサービスが整うと、今後、大手企業にしろ、ベンチャー企業にしろ、新規参入や新規事業の立ち上げが非常に簡単になるでしょう。ロジスティクスという本当に一番厄介なところが、そうしたシェアリングモデルがあっていつでも参加できる、裸で行って参加できるようになるわけです。

天沼:経産省が謳っているデータの共有も同じ考え方です。イノベーションを生むためにデータのプールがあって、そこから使えるデータや機能を使って、新しいイノベーションが生まれていく。これから大事なことだと思います。

秋葉:今まで資産を持っていろいろなサービスを提供されていた方からしてみたら、どうすればいいのだろうというところがあると思いますが、実は、資産はどこかで誰かが持っているわけです。たまたまそれを持っている人なだけで、だからといってそれを自分たちだけで使うのかどうかという話だと、私は思います。直接的に契約することで、そこのコントロールや品質レベルのアグリーメントなどいろいろな難しさがあるのであれば、たとえば私たちを間に入れていただくことによって、結果としてその資産をシェアリングサービスで提供することができると思うんです。そういうビジネスの展開もあると思っています。
たとえば、DPL市川はリース会社の所有部分もあれば、大和ハウス工業が所有している部分もあります。マテハン機器やロボットに関しても、様々な資産の保有形態があります。ということは、所有者は別にいるけれども、どうやってシェアリングさせるかというやり方の話だと思います。所有しているからできませんということではありません。
まさに、これは現在の多くの企業が抱える資産活用という問題の大きな答えのひとつになるのではないかとも思っています。
実際に、今、シェアリング物流への興味、関心はすごく高いと思います。私自身が記者会見にご一緒させていただいて、それを見た経営仲間からの問い合わせも2桁に登っています。実際に見に行きたいという声もあります。

これからはスピード感が重要

天沼:ここからですね。ここから急激に波及すると思います。経産省の「Connected Industries」に近い概念で、そこに賛同して動き始めて外周がまた増える、ということの繰り返しで年輪ができていくのだと思います。そうすると、その都度広さというものは増していきます。最初は少ないかもしれないですけど、圧倒的に増えていくと思います。

秋葉:これからが重要です。現在、市川にR&Dも兼ねている物流センターがあって、その中からDPL流山に展開できるものができ、さらにDPL阿見でも展開され、ほかの物流センターでも実現する。このスピード感をどれだけ上げられるかがポイントになると私は思っています。1箇所を見てもらっただけで理解していただけることもあるし、理解できる人もいるでしょう。しかし、それが複数の箇所で行われているところまでいけば、すごく多くの方々に利用していただけるチャンスもあるし、理解していただける可能性も広がると思っています。ですから、このスピード感が本当に大切です。
我々大和ハウスグループは、比較的早い段階でロボティクスの話やシェアリングの話をさせてもらったり、見ていただいたりしてきました。市川をつくったことで、私たちが思った以上のスピード感で周りが動き出しました。不動産デベロッパーの人たちもそうだし、物流会社の人たちもそうだし、ロボットを扱う会社もそうだし、本当に動き出しています。
物流業界、ロジスティクスに関わる人たちも含めた範囲の中でいくと、それはすごく良いことだと思います。少し距離を置いてみていた人たちも、「これは変わるに違いない」になり、やがて「変わる波に乗るのか乗らないのか」となるでしょう。それは、ここ1年くらいの中で判断を求められるくらいのスピード感になっていると思います。シェアリングという大きな波にどうやって乗るのかという選別が、この2年くらいの間にされていくのではないでしょうか。

計画精度を上げることが何よりも重要

秋葉:今後シェアリングに本格的に取り組もうとしたときに、何が大事になるかというと、計画精度をどうやって上げるかということです。車をシェアリングする場合、何時から何時まで使うということだけで十分です。しかし、物流の世界では、自分たちがどれくらいの荷物をどのように動かすのかという計画精度が、実はすごく大事になります。
たとえば、A社とB社が非常に高い計画精度でものを動かし、売っているなかで、C社だけがまったく精度の低い計画値で行うと、C社のせいで、A社もB社も大きな影響を受けます。そうなると、C社に対しては、「申し訳ないけどこのシェアリングの枠から出ていってくれないか」ということが起きます。
最初はそんなことをしないので、そこはペナルティにしましょうとなるかもしれません。しかし、ペナルティを払えばいいと割り切ってしまうと、本来、シェアリングを活用することでどういう高みを望んでいきますかというところから外れてしまうはずです。
ですから、C社の計画値を上げるために、さっきいったような経験値をみんながシェアできるのだから、それをきちんと使って計画精度を上げていきましょう。その結果、みんなのコストも下がるし、無駄なリソースを使うこともありません。おそらくそういう世界になると思います。物流センターを用意しました、マテハンを用意しました、ロボットを用意しました、ソフトウェア的にもシェアリングできる仕組みを用意しました。それでシェアリングができるかというと、そうではありません。

もう一つ、天沼さんがいったように、どんどんいろんな人に参加していただくことによって、シェアリングというものの精度、経験値も溜まっていきます。一方で、シェアリングなので、相対で料金を決めてはいけません。A社用の料金、C社用の料金を変えてしまうようなことをやってはいけません。同じ食事をしたら、同じ料金に決めなくてはいけません。実はそこが非常に難しいところです。なぜ難しいかというと、既存のやり方をしている人たちも存在しているからです。相対で料金を決めているわけです。

このシェアリングサービスによる事業というのは、ある意味、リスクをいったん私たちが背負い、資産の流動化といったマネジメントなども行いながらやっていくというビジネスの料金体系です。これまでの物流ビジネスのように、荷主さんにほとんどリスクを持ってもらって、オペレーションだけ受けているときの料金とは、実はまったく違うものになります。ただし、そこの判断をできる人たちが必ずしもすぐ立ち上がってくるかというと、そこもまたそうではないだろうと思います。そこが難しいところです。
関連することですが、ある荷主候補の方に鋭い質問をされたことがあります。それは「秋葉さんたち潰れませんよね」でした。僕はハッとさせられました。面白いサービスだから乗ったけれども、そのサービスが事業として成り立たないとなると、結局サービスに乗った人たちにも迷惑をかけてしまいます。当たり前のことですが、「きちんと事業として成り立つメニュー表がつくれますか」という質問だったんです。やはりそこに気づく人は気づくし、すごく重要なポイントだと思っています。

市川の経験によって、具体化しつつある

秋葉:市川を経験させていただいたおかげで、ビジネスメニューもかなり固まってきました。まだ十分ではない気がしていますが、逆に、そこをすごく細かいメニュー表にしたとたん、けっきょくシェアリングモデルのためのメニュー表にはそぐわない話になってきます。
そこのさじ加減も含めてすごく難しさがあるし、この辺の概念をご理解いただく必要があります。たとえば、ある会社の荷物は市川に置いてあり、ある会社は流山をメインに置いてあり、ある会社は阿見に置いてあり、ある会社はその3箇所に配分されているようなケースが起こったとき、「場所が違うのに、料金が同じなのはおかしい」などといった声が出てきてしまうと、「そこをお約束しているわけではなく、機能やサービスレベルでお約束する」というシェアリングの意味そのものが崩れてしまいます。
今後短期間のなかでいろいろなことが整理されてくる一方で、まだまだ理解していただくまでの時間もかかるかもしれないというところは感じています。

天沼:経験値によって変化していることを強く実感しています。私自身も実際に倉庫の現場を見たときに、得た経験値が機能の改善に繋がっていくというスピード感をすごく感じています。今後もそのスピード感を落とさずにご一緒させていただくことが、これからの課題かと思います。
変わらなかった部分は、本気度です。実際に見せていただいたとき、施されているデザインは、当初見せていただいたものとほぼ同じでしたし、これまでの倉庫の常識だったような、いわゆる「THE倉庫」のデザイン的なイメージではなく、ショールーミングの機能も重要視されています。そういったショールーミング機能も含めて、本気でつくられているということを肌感覚で感じています。これから大きく動いていくと思いますし、我々も貢献できる幅はぜったいに広いと思っていますので、このプロジェクトにできる限り貢献したいと思っています。

秋葉:DPL流山が8月から一部稼働を始めて、これからマテハンやロボットも含めた設備導入をしていくのですが、エアークローゼットさんにも一緒に行ってもらい、返品機能のシェアリングをやっていこうと思っています。その中でwajaさんにも一緒に行ってもらいます。個別でモデルさんを使って「ささげ業務」をやっていく一方で、色展開なども含めて半自動化できるものは半自動化し、画像を使って採寸するという仕組みを、市川で実験して導入していこうかと思っています。それはささげのための採寸もあるのですが、梱包するための、畳んだ状態の採寸も画像で全部行おうと思っています。そうするとどういう商品の組み合わせだとどういう箱サイズが最適かということが、その時点でわかります。段ボールをつくる機能も自動でできないかと考えています。

天沼:それはいいですね。これまでほかのEコマースでは、倉庫現場に行くと、一人のお客様が、複数のいろんな形状のものを買われた場合、何をやっているかというと、現場の方が目で見て属人的な経験値で、この箱とこの箱とこの箱だろうって詰め合わせをしていますから。

秋葉:今回、アパレル、ファッション系の会社はたくさん見に来ていただいているのですが、私のいっているシェアリングのカテゴリーマルチという概念からすると、荷扱いが似たものは同じセンターの中に入れて、お互いの繁忙期と閑散期の波動を吸収し合うようなことをしたいと思っています。ですから、日用雑貨やドラッグストア関連の会社などのお客様にはぜひ入っていただきたいと思います。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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