土地活用ラボ for Biz

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コラム No.27-6

サプライチェーン

秋葉淳一の「物流は経営だ」 「国際物流総合展2016」講演レポート
「次世代ロジスティクスプラットフォームはこれだ!」

公開日:2016/09/30

POINT!

  • ・イノベーションの一つのアプローチとして「オープン化」がある
  • ・さまざまな企業、団体と協調し、共有する領域を作りプラットフォームを構築することが重要
  • ・さまざまなものをつなげるコネクテッドロジスティクスを推進

※この内容は「国際物流総合展2016」での講演をもとに書き起こしたものです。

オープンデータコンテスト

最初に、「オープンデータコンテスト」※1について紹介します。物流展でなぜ「オープンデータコンテスト」の話なのかとお思いになるかもしれませんが、我々は4月から7月にかけて、物流に関わるデータをオープンにして、それに関するアイデアを募集してきました。

※1(株)フレームワークスが提供する物流、倉庫、エリアなどのデータを活用した作品(アプリケーション、Webサービス、ガジェットなど)を募集したコンテスト。「ビジネス部門」「研究部門」「一般・教育・ゲーム部門」がある。

先日、そのアイデアに対する表彰を行いました。ここでポイントとなるのは、「オープンデータ」ということです。
次の世代を考えるうえで、オープンデータというものが一つのキーワードになります。オープンイノベーションという言葉もありますが、何か新しいことを実現していこう、実行していこうというとき、一つの方法として、「オープン」であることが挙げられます。
オープンとは、自社の中だけというクローズドの反対であり、いろいろな人や企業の協力を得ながらやっていくという発想に基づいて、その最初の取り組みとして、オープンデータコンテストというものを実施しました。
他の業界では、いろいろなところでオープンデータコンテストをやっています。交通関係の会社やIT機器メーカーが実施していますが、物流のデータをオープンにするということは、おそらく世界で初めてだと思います。
データをオープンにするという意味がどこにあるのかというと、クローズドだと思っているデータは本当にクローズドにしなければいけないデータなのかということを改めて考えることだと我々は思っています。
もう一つは、今までの延長線上で物事を考えていてはだめだということです。皆分かっているのですが、実際に考えなければいけないことはたくさんあります。イノベーションは1,000に3つ、1,000回チャレンジして3つくらいしか成功しないといわれています。短い時間の中でそれをやろうと思ったら、自社の中だけのクローズした世界では非常に難しい。そういう意味で、今回、物流に関するオープンデータコンテストというチャレンジの場を提供させていただきました。 最優秀賞に選ばれた内容を紹介しましょう。
配送の途中で休憩場所を共有するというシステムです。たったそれだけのことです。これまでは、最適ルートを示す、軒先条件を知らせる、勤務に対して無理がないように休憩時間を知らせるというところまではやっていました。しかし、ドライバーの目線に立ったときに、休憩場所としてどういうものが必要かということが、実は抜けていたんです。「人手不足です」「ドライバー不足です」と言われているのに、ドライバー視点になかなか立てなかったことに気づかされました。
優秀賞は、物流管制の仕組みということで積み替えの場所を指定するもの、レイバーマネジメント(労働管理)の仕組みをゲーム感覚でできるもの、運行チャートを3Dで見られるものが選ばれました。
3つある部門のうち「研究部門」の優秀賞は、視覚障害者に向けたアイデアです。障害者に向けては、さまざまな方針や制度があるものの、物流施設の中で具体的に、我々が提供するソリューションも含めて、きちんと踏み込んで考えてきたかというと、必ずしもそうではないことに改めて気づかされました。 その他で紹介したいのが、ルクセンブルクの経済産業省から特別賞をもらったことです。ルクセンブルクという国は、国土は小さいのですが、ヨーロッパの中で資源と物流、ITを産業の核にしており、データをオープンにするということに注目しています。そのルクセンブルクの特別賞をウイングアークという企業向け業務用ソフトウェアを提供する会社が受賞しました。11月にルクセンブルクのICTのイベントに参加することになっています。このウイングアークの仕組みは非常に使えるもので、すでに我々と一緒に導入準備を進めています。

オムニチャネル化とプラットフォーム化

ここからは、物流業界の状況を踏まえたうえで、いくつかのキーワードを挙げながら、これからどうするかという話に繋げていきたいと思います。 小売業で関心が高いのは、やはりオムニチャネルです。オムニチャネル自体は、いろいろなチャネルでものを買いましょうということなのですが、消費者目線で見たほうが非常にわかりやすくなります。
スマートフォンやタブレットが簡単に手に入るようになったおかげで、わざわざ何かをするということではなくて、何かをしながらものを買う、ものを探す、あるいはいろいろな情報を手に入れることができるようになりました。そういう生活になると、オムニチャネルということをそもそも意識はしていません。それが当たり前になっているということは、それ以上の便利さを求めているということです。そういった中で、物流というものがどんどん複雑化、あるいは高度化していくのです。
消費者が利便性を求める中で、裏方だと思われている物流に関わる人たちの作業は、非常に効率を求められますし、複雑化しているのが現実です。それだけ複雑化しているのに人が足りない、あるいは働く環境がきちんと整えられてないというのが実態だと思います。

物流における課題

物流事業において、データをリアルタイムで取得する仕組みが十分に導入されているかというと、必ずしもそうではありません。残念なことにコストセンターだといわれ続けてきた業界だからです。
また、人海戦術で、人に頼る業務になっています。我々が提供しているウェアハウスマネジメントシステム(倉庫管理システム)は、かれこれ30年くらい前にアメリカでできたものですが、欧米と日本とでは、ウェアハウスマネジメントシステム自体はまったく違う進化をしてきています。欧米の場合、非常に失礼な言い方になりますが、人間のする仕事を完全には信用していません。たまたま人が仕事をしているという発想に基づいて、ウェアハウスの仕組みが作られてきています。 それに対して日本の場合、非常に優秀な方々が物流現場で仕事をしていますので、人に頼った仕組みとして成長してきました。人に頼った中で、非常に高い生産性を出しているというのが現実です。ここのところを考えないと、これからの時代は非常に難しいと思います。
こういった中で考えるべきポイントは何でしょうか。
私たちがビジネスを行う領域として、私が勝手に呼んでいますが、競争領域、協調・共有領域、インフラ領域と3つの領域があります。インフラ領域というのは国や自治体や業界団体が整備するものです。国、自治体、業界団体が提供してくれるものととらえてもよいでしょう。

考えるべきポイント

今までは、この図の協調・共有領域というものがほとんどなく、会社ごとの競争領域で勝負するというやり方をしてきていたと思います。
これからの時代においては、当然、国や自治体がいろいろなデータをさらにオープンにすることも必要ですし、そのための基盤を整備してもらうことも必要なのですが、我々企業がやらなければいけないことは、本当の競争領域は何かということを見極めたうえで、いろいろな会社、団体との間で協調する、あるいは共有する領域を作っていくことです。シェアする、あるいはプラットフォームを構築して、そのうえで本来の競争領域で勝負するということをしていかなければなりません。

IoTは何をもたらすか

この数年の間にIoTという言葉が非常に使われるようになりました。IoTがもたらす世界とは、クラウドという環境があって、IoTのデバイスからデータを集めてきます。集まってきたデータをクラウド上にためて、人工知能だとかいろいろな形でデータ分析していきます。それを物理的な世界、我々が生きている世界にフィードバックしていきます。この繰り返しです。いろいろなものがインターネットに繋がる、インターネットを経由して自由に繋がるという世界です。
では、自由に繋がったところで何ができるのでしょうか。現実世界と電脳、コンピュータの世界の一番の違いは、物理的な距離がないということ、過去のデータにさかのぼって一気に解析、シミュレーションすることができるということです。デバイスもインターネット環境もクラウド環境も安価で簡単に使えるようになりました。この世界をどうやって活用するかということが、物流業界における課題の解決として非常に大きな話です。
当たり前のことですが、集められたデータをどうやって生かすかがポイントです。人工知能を使って最適解を出すにしても何にしても、データをいかに集めるかということと、集まってきたデータをどう使うかということなのです。
最初にお話ししたオープンデータコンテストというのは、そのデータの活用の仕方をオープンにしてみんなで考えましょうという機会を提供したものです。

もう一つ、IoTの時代で考えなければいけないのはRFID※2です。十数年前に一度RFIDが注目されたことはあるのですが、全然普及しませんでした。読み取り率が低いなどいろいろな課題はあったのですが、問題の一つは、バーコードの代わりにしようという発想で使用方法を検討したことでした。そのため、単にバーコードとのコスト比較になってしまいました。
もう一つの問題は、誰が提供して誰が利益を得るのかということの整備がされていなかったことです。ある会社がRFIDに投資をするのに、その利益を得る会社が複数になるといったとき、誰もお金を出そうとしなかったということです。きちんとした物流のプラットフォーム、あるいはインターネットがこれだけ普及してIoT環境が整った現在、RFIDをどれだけ活用するかということは、十数年前とはまったく違う視点で考えないといけません。

※2 RFIDとは、電波を用いてRFタグのデータを非接触で読み書きするシステム。

デジタルデータ化が進む

オムニチャネルについて話をしましたが、EC化率という言葉があります。インターネットによるショッピングで、どれくらいの比率でものが買われているかということですが、年々、増加しています。その中で、アパレル・雑貨はすでに全体の中で大きい数字になっています。市場規模でいうと、2020年には20兆円くらいになるといわれています。この中で、大手のEC事業者がその半分の10兆円、残りの10兆円は中小含めていろんな人たちが売り上げていく数字になります。ということは、今後きめ細かな対応が求められることになり、物流においても、緻密なデータを収集しながら細かく分析していく必要性が出てくることが、この数字からもわかります。

BtoC-ECの市場規模およびEC化率の経年推移

物販系分野内での各カテゴリーの構成比率(単位:億円)(%は構成比率)

出典:経済産業省「平成27年度 電子商取引に関する市場調査」

次に、これはちょっと残念なデータですが、物流業界、あるいは物流に関わるところでのデータ活用率、それと活用したときの効果の数字が出ています(図4)。
見ていただくとわかるように、物流在庫管理の棒グラフが低くなっています。その一方で、データを活用したときの効果という意味では一番高い数字が出ています。
ということは、いかに人海戦術というか属人的な世界で仕事をしているかということがここにも表れています。逆に言うと、データをいかに活用するか。データを集められる環境を構築すれば、一気にその効果を上げる可能性があるということです。

データ活用の効果達成率

出典:総務省「ビッグデータの流通量の推計及びビッグデータの活用実態に関する調査研究」(平成27年)

オープン化とシェアリングがイノベーションを呼ぶ

今までの延長線上でこれからの時代は乗り切れないという前提に立ったとき、どうやってイノベーションを起こすのかということを紹介させていただきました。
イノベーションを起こすためには、データをオープンにするというのも一つの方法ですし、そのためにはデータをいかに活用していくかということが重要です。
また、人間に依存しない。たまたま人間に仕事をしてもらっている。あるいは、人間ではなくロボットで仕事をしたほうがいいところ、あるいは人間が考えるより人工知能が考えたほうがいいということについては、そういったものをいかに組み合わせるか。つまりさまざまなものをつなげるというコネクテッドロジスティクスというコンセプトがこれから重要になります。
コネクテッドロジスティクスをやる中で、もう一つのキーワードとしてシェアリングがあります。
たとえば、物流施設の中で、取り扱う商材をカテゴライズできるとすれば、そこで動かすロボット、マテハン機器、システム、あるいはそこでオペレーションする人をシェアリングすることは当然可能です。お客様は荷物だけを持ってくれば、非常に効率的なオペレーションを委託することができるようなセンターが構築できるかもしれません。今までの物流センターとはまったく違うコンセプトのセンターが作れるわけです。
物流センターだけではなく、配送、あるいはお店の中までの情報を一元的に管理することによって、物流センター、あるいは配送でのオペレーション、お店でのオペレーションの次の動きを予測することができます。
我々は、こうした仕組み、システムを自社だけでやるのではなく、オープンデータコンテストと同じように、いくつかの企業様との提携によって、実現していきたいと考えています。

トークセッション ゲスト:株式会社ABEJA 代表取締役社長CEO 岡田陽介

トークセッション ゲスト:株式会社ローランド・ベルガー プリンシパル 小野塚 征志

トークセッション ゲスト:株式会社アッカ・インターナショナル代表取締役社長 加藤 大和

スペシャルトーク ゲスト:株式会社ママスクエア代表取締役 藤代 聡

スペシャルトーク ゲスト:株式会社エアークローゼット代表取締役社長兼CEO 天沼 聰

秋葉淳一のロジスティックコラム

トークセッション:「お客様のビジネスを成功させるロジスティクスプラットフォーム」
ゲスト:株式会社アッカ・インターナショナル代表取締役社長 加藤 大和

トークセッション:「物流イノベーション、今がそのとき」
ゲスト:株式会社Hacobu 代表取締役 佐々木 太郎氏

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

コラム一覧はこちら
http://www.daiwa-logitech.com/column/index.html

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