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コラム No.27-66

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第1回 100個の水たまりをつくる株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × セイノーホールディングス株式会社 執行役員 河合秀治

公開日:2021/10/29

ドローンを活用した配送サービス実証実験を開始

秋葉:セイノーホールディングス(以下、セイノーHD)さんは、山梨県小菅村でドローンを活用した配送サービスの実証実験をスタートされました。今日は小菅村の施設にお招きいただきありがとうございました。先ほどは実際にドローンのフライトの様子を見せていただきました。最初に、このドローンを使った取り組みのご紹介をお願いできますか。

河合:こちらこそ、ご足労いただきありがとうございます。セイノーHDは、産業用ドローンのスタートアップ企業であるエアロネクスト社と業務提携し、2021年4月末から、既存物流とドローン物流を融合させた新しい物流システムの共同開発と運用テストを「ドローンデポ」と名付けたこの拠点で行っています。山梨県小菅村でスタートし、実績を重ねた後は、全国で816市町村(小菅村を除く)あるとされる過疎地域に、このサービスを横展開していく計画です。
今回のサービス開始にあたり、エアロネクスト社と、物流サプライチェーン「SkyHub」を共同開発しました。これは、通常のトラック輸送のラストワンマイルにドローン配送を組み込んだものです。従来の配送では、配送センターから物流事業者がトラックで自宅に荷物を届けていました。ドローン配送では、配送センターで荷物を仕分けてドローンデポへ移し、ドローンデポからドローンを使って自宅の近くにあるドローンスタンドに荷物を置き配し、利用者がドローンスタンドまで荷物を取りに行くという仕組みになっています。荷物は注文から配達完了まで「SkyHub ID」で管理され、セイノーHD以外の物流事業者の配送システムとも連携することができます。ドローンデポには、自律飛行するドローンを監視する担当者が常駐し、エアロネクスト社の子会社「NEXT DELIVERY」が入庫した荷物のドローンへの積み込みなどの配送を担当します。
人口約700人の小菅村は物流事業者にとって配達限界エリアの一つで、配達頻度に課題を抱えていました。ドローン配送は、利用者にとってはドローンスタンドまで荷物を取りに行く手間が増えますが、従来よりも短時間で荷物を受け取れる点が大きなメリットになります。ただし、ドローンが配送できる重量には限りがあります。機体の制約上、今回は最大5キロとなり、5キロを超えるものについてはこれまで通りトラック輸送を利用します。今日小菅村までお越しいただいたのは、実際のフィールドに来ていただき、見ていただいて、好きになっていただきたいと考えたからです。

秋葉:実際にここまで足を運ぶと、こうした先進的な取り組みの中に、自分も参加したいという気持ちになります。

河合:完成形ではなく、あえて完成形までのプロセス上の途中段階を皆さんに見ていただくことが重要だと思っています。村や町が徐々に良くなっていく過程を見ること、継続的にコミットすることが大事だと考えているからです。今日見ていただいたものも完成形ではありません。しかし、大和ハウスさんが「もしかしたら自分たちもドローンスタンドをやれるのではないか」と思っていただけたら最高です。

秋葉:非常に面白い試みだと思いました。さらに2021年10月には、御社とエアロネクスト社、電通さん、北海道の上士幌町が提携して、実証実験を始められるとお聞きしました。

河合:政府は2022年度をめどにドローンの規制緩和を目指し、環境整備を進めています。そのため、市街地などの人がいる地域でも、操縦者らの目が届く範囲を超えて飛ばす「目視外飛行」ができるようになる見込みから、物流への活用が期待されているのです。こうした背景から、規制緩和後すぐに実用化できるよう、4者で提携して実証実験を行うことになりました。

100個の水たまりをつくる

秋葉:なぜこのような新しいことを次々と始められているのですか。河合さんのお仕事のご紹介とともに、そのあたりをお話しいただけたらと思います。

河合:新しいことを始めた理由は明快です。セイノーHDは創業から物流業者として始まり、今もBtoBの物流が主軸となっています。物流事業というのは、年率で130%、150%、ましてやスタートアップ企業のように300%、500%と伸ばしていくのはとても難しい業態です。しかし、既存事業で300%上げるのは難しい現状の中でも、事業計画として長期ビジョンを描くとなると、「300%を目指す」こともあるわけです。そこで、新しいポートフォリオをどうつくるかが重要になります。当然、路線・混載事業を主軸に置きながら、新規事業戦略として既存事業と同等の軸もつくっていかなければなりません。
その中で、私は今ラストワンマイルというところで取り組んでいます。ラストワンマイル事業の中の一部分が今回のドローン物流だったり、コンビニ配送のサービスだったりするわけです。他にもネットスーパーの配送など仕込んでいるものがいくつかあって、今はその領域で必要になるものを固めているところです。

秋葉:100個の水たまりをつくれば、もしかしたらその一つが池になるかもしれないし、湖になるかもしれないというお話があったそうですね。

河合:もともとセイノーHDが新規事業を始めたのが14~15年くらい前で、そのときに言われたのが「水たまり100個」という話でした。当時は私も比較的若造だったので、「水たまり100個!オー!」という感じでしたが、今言われると重たいですね(笑)1個1個が意外と深いというか、沼にはまるケースが多いので。でも、今も楽しくやっているのは、水たまりをいくつかつくっているからだと思います。小さく産んで大きく育てるためには仲間が必要で、皆がやりたいと思うものをつくらなければなりません。水たまりを簡単につくることができるし、大きくすることもできるし、そもそも水たまりでチャプチャプやるのもけっこう楽しいよね、と思ってもらいたいわけです。そうすると自分で100個つくらなくても、チームのメンバーが3個、5個つくってくれるようになるでしょう。でも、恥ずかしながらまだまだですね。

秋葉:メディアで取り上げられることも増えていますよね。

河合:小菅村の件もそうですが、テレビや雑誌、イベントなど、あえて全部お受けしているのは、そういうやり方もあるということをわかってもらうためです。社内の人間は、意外とメディアのほうを見ているようです。

秋葉:同感です。

河合:例えば、イベントでドローン物流の話をすると、フライヤーに載ったり、Web広告に出たり、会社名が出たりします。チームには今20人くらいいるのですが、そのメンバーが露出すると、その人に関係しているご家族や親御さんに、「こういうところで働いているんだ」ということが見えてきます。そこから「この間、あなたのところの上司が出ていたじゃない」といったことが循環して、「楽しそうにやっているじゃない」「新しいことって意外と面白いよね」といった会話が生まれるといいなと思っています。
今の若手は良い意味で鈍感なので、100個の水たまりでも何とも思っていません。もしかすると、彼らの鈍感力で物流業界を良い方向に進めることができるかもしれません。役職や年齢など考えずに、ポジションもフラットです。ドローンオペレーションについても私よりずっと詳しいので、彼らに教えてもらわなければならないくらいです。実際、彼らはこの現場に住み込みながらやっているほどで、「こういうプロジェクトをやるときは住んでなんぼだ」と言ったら、翌日には荷物を持ってやってきました。スピード感が違います。

秋葉:若い人たちとおじさんでは、「仲間」という言葉の感覚も少し違いますよね。昔の仕事の仕方は、基本的には垂直統合、あるいは大企業を中心にしたピラミッド構造の中で完結させようという感覚がありました。しかし、今そんなやり方をしていたらスピードにもついていけないですし、新しいことを取り入れることもできません。ですから、100個の水たまりの話を聞いてすごいと思いました。100個つくろうと思ったら、そもそも垂直の枠の中ではできません。若い世代や他の会社の人たちも含めて、どんどん巻き込んでいかなければいけない。そういう意味でこの動きはすごいと思っています。

やってみて初めてわかる

河合:2016年にオープンイノベーション推進室を発足し、私はその室長に就きました。それまではベンチャー業界や若い方々と話す機会もなかったので、物流業界を目指す若者、スタートアップ企業はそんなに多くないと思っていました。しかし、いろいろな人とお話しするに従い、こちら側もだんだんと気持ちが変わってきたのです。大きかったのは、岐阜県大垣市から東京に出島をつくったことです。私たちにとっては画期的でした。大垣市の本社には100人くらい座れる食堂があります。どこに座ってもいいので何気なく着席すると、たまたま隣に役員がいることもあります。そこで、「おまえ、このあいだのあれな……」なんて言われてしまうと、萎縮してしまって、その時点で1個の水たまりが干上がってしまいます。その水たまりをどうしようかと言っているうちに1年間が経ってしまうような状況でした。
今東京では、私の判断でどんどん進めています。今回の小菅村の話も、本社では誰も知りませんでした。2021年1月22日にエアロネクスト社と業務提携をする1週間前になって、実は小菅村でプロジェクトを検討していて、来週業務提携するということを初めて報告しました。地中から出る手前で潰されることなく、出た後から見るので、皆も「いいんじゃない?」と言ってくれます。メディアで取り上げていただき前面に出てきたときには、「それも一つかな」という感じです。今までのやり方だったら大変でした。
このプロジェクトでは、2020年8月頃からエアロネクスト社との業務提携を検討し始めて、11月に小菅村と協定を結び、翌1月には業務提携をして、4月から運用テストを開始し、今に至っています。この1年間で常時運航できるような状態まできました。
今日見ていただいた機体は専用機なのですが、その物理的な設計もほぼ終わりました。飛行テストが済めば量産に入ることができるので、そうなれば100機の機体ができてきます。どんどん飛んで、戻ってきて、バッテリーを替えてまた飛ぶ、という状態をつくることができます。
重量5キロまで、80センチサイズまでしか運べないなど、言い出したらいろいろあります。しかし、そこを経て技術革新をしていかないと、何も進みません。今やっておかなければならないわけです。そこがすごく面白いです。

秋葉:できないことを並べるか、できることから考えるかで、まったく違う進み方になりますね。新規事業なのですから、やってみないとわからないことばかりですからね。

河合:小菅村と上士幌町で学んだのは、「やってみて初めてわかることのほうが多い」ということです。最初は、ドローンを飛ばせる村でドローンを使って荷物を運ぶという単純なプロジェクトでした。ところが、村に来て、住民の方々からお話を聞くと、一番の悩みは買い物であり、病院がなくて薬が手に入らないことであり、地域交通に予算が必要なことでした。オンデマンドバスは必要だけど、それほど利用されていない。病院に行くときは、社会福祉協議会の方が自家用車に高齢者を乗せて、有償で連れて行く。そんなふうに人の流れと物の流れが見えてきて、そこに課題があることがわかってきたのです。
今、小菅村は「村ごと倉庫」になっています。在庫をどこに置いて、どこでロケーション管理をするのか。物を動かすのか、あるいは人がロケーションまで動くのか。私たちはこれを「村ごと倉庫化」と言っています。村で動いている自動運転のAGV(無人搬送車)があり、ドローンが飛んでいて、人がリアルで歩いていて、場合によっては一緒に荷物を持ってくることもある。物流側でも人側でもそれを整えていく。人を動かすのか、物を動かすのか。そのときの動かし方がバスなのか、タクシーなのか、徒歩なのか、トラックなのか、ドローンなのか、その組み合わせを考える。今、フィジカルインターネットやスマートシティといった話もありますが、今のところ、私にとってはそこが本質です。物が近づいていくのが便利なときもあれば、人が動くほうが便利なときもあります。スマートに動ける状態にするには、物流がどのような役割を果たすべきなのかが重要だと感じています。

秋葉:お店でも同じですよね。店舗に商品を届けるのか、個人の家に届けるのかといった議論をしがちですが、お店を地域デポと捉えると、買い物に来てくれるのか、そのエリアに届けるのかという話になります。最近、イオンさんが「まいばすけっと」のような小型店舗の数を増やしているようです。大きなモールだけではなく、面を網羅するという動きを始めているのだと思います。小売業は消費者に近い位置にいるので、敏感に嗅ぎ取ってそのような動きになるのでしょう。結局、物流もそれを追いかけていくことになりますから、それをわかったうえで行動しなければなりません。そう考えると、河合さんがやられているドローンデポの話もそうですし、コンビニ配送の話もそうです。河合さんのお仕事は、まさに本質的なことですね。

河合:おっしゃるように、「在庫をどう見るか」という話なのだと思います。コンビニもそうですし、コンビニ型スーパーもしくはスーパー型コンビニもそうです。年齢や家族構成、ロケーション、タイミングにもよりますが、コンビニで受け取りたいときもあれば、家に来てほしいときもあります。今はUber Eatsのようなフードデリバリーもあります。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、お金を払ってでも、つまり時間を買って届けてほしいというニーズがさらに増加していると思います。今までは、届けてもらうのが申し訳ないから取りに行くという感じでした。ピザはデリバリーが当たり前でしたが、他はそうではなかったですよね。それが、コロナ禍では「時間で届けてもらうのであれば、きちんと対価を払わなければいけない」と考える人が増えてきました。自分が外に出たくない。自分が買い回る時間やリスクを考えたら、誰かにやってほしい。それに対して一定の対価を払わなければいけない、ということをわかり始めています。2018年頃は5年後、10年後の話だと思っていましたが、新型コロナウイルス感染拡大によって、物流にとっては大きく良い方向に変わったと思っています。

秋葉:私もそう思います。徐々にではなく一気に変わったので、余計はっきりしました。

河合:コロナ禍になって驚いたことがもう一つあります。今ではあちこちでUber Eatsを見かけますが、届けるという仕事にこれほど若者が集まると思っていませんでした。

秋葉:Uber Eatsのような働き手はもともとギグワーカーと言われていて、私たちはタイムシェアリングの一つのかたちとして考えていました。しかし、実際は違いますよね。本業のようになっています。

河合:本当に驚きました。人不足、ドライバー候補がいない、若手が入らない、トラックはカッコ悪い、免許が取りづらい、オートマの免許では仕事できないなど、物流業界にはネガティブな情報が多かった中、物を届ける仕事をしようと思う人があれほど大勢いたことに勇気が出ました。

秋葉:イメージが先行しています。そのイメージが間違っているわけではないのですが、今、業界が大きく変わろうとしていることもまた事実です。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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