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土地活用ラボ for Biz

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コラム No.27-70

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第2回 テクノロジーでネットワーク化し、全体最適を図る時代株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 学習院大学 経済学部経営学科教授 河合亜矢子

公開日:2022/02/28

30年前と課題は変わらずとも、解決のための進め方が変わってきた

秋葉:河合先生は物流が今でもお好きだと思いますが、物流業界が持つ課題についてはどのようにお考えですか。

河合:好きですね。トラックも好きだし、フィジカルな物流も好きですが、やはり計画系、仕組みの領域にワクワクします。今ではどこにでもPOSシステムが入り、インターネットショッピングが盛んになりましたが、物流は基本的には変わっていないし、課題も変わっていないような気がします。最近いろいろな会議に呼ばれる機会があるのですが、そこでは、30年以上前から関わっている皆さんが、パレットの標準化、省人化、リベートなど、ずっと同じ課題に取り組み続けていると話していらっしゃいます。課題が変わっていないということは、現実もあまり変わっていないのではないでしょうか。

秋葉:持続的な改善、持続的なイノベーションは起こっています。しかし、それは持続的な話で、仕組みが良くなった、便利になった、楽になったということであって、ビジネスモデル自体が大きく変わるような話は今までなかったと思います。
一番深刻な問題は、労働力不足だと思います。自動化まで振り切るかどうかはともかく、省人化しないとどうしようもありません。そのとき、人工知能なのかロボットなのかということになるのですが、人間は器用なので、それぞれの場面に適応して動くことができます。一方、人工知能はモデリングをしたことに対しては最適解を出しますが、違うことはできません。ロボットはよりその傾向が強く、ビジョン(認識した画像処理によって対象を識別したり、環境を把握したりする技術)でものを選ぶことはできても、動作ができる範囲が決まっています。人間のような応用力がないので、ルール化や標準化をしないと、ロボットや人工知能の活躍の場は広がっていきません。こうした個別課題に対する議論をずっとしてきました。そして、労働力不足の問題はいよいよ差し迫ってきました。何年も変わらない課題を議論してはいますが、スピード感、逼迫度合いが全然違います。今、議論されているのは、来年から実現するための議論です。今は、「標準化を検討しましょう」ではなく、「来年から社会実装するためにどうするか決めてほしい」というスピード感に変わってきているのです。
また、民間と官が一緒になって、同じ場で議論をする機会が増えています。河合先生が活動されている小売業界も含めて、今まではそれぞれの業界団体の中で議論をすることが非常に多かったと思います。業界ごとに団体が作られていて、議論の場を設定しやすかったのでしょう。しかし、物流やサプライチェーン、ロジスティクスは、閉ざされた業界の中では解決しないことが多い。自分たちにとってのベストをそれぞれの業界が言ったところで、全体にとってのベストにはなり得ないからです。今は、いろいろな業界の方たちが集められるようになってきました。ずっと課題は一緒かもしれませんが、進め方が変わってきたというのが私の印象です。

河合:そうですね。私はそうした課題に数十年携わっているわけではないので、これまでの経緯を実際に見聞きしてきたわけではありませんが、今、スピード感はあると思います。皆さん確かな危機意識を持たれている一方で、「何から始めれば良いのかわからない」という方がたくさんいるような気がします。魅力的な行き先を示してあげることが必要です。何かをしないといけないのはわかるのだけど、何からすればいいのかわからないという雰囲気があります。 でも、この数十年間、なぜ変わらなかったのでしょうか。

秋葉:これもよく言われていることですが、日本は内需がそれなりにあるということだと思います。そもそも内需がなければ、海外を意識するというより、海外でしか仕事をすることができません。日本はそれなりに内需があるので、グローバル化は切実な課題ではなかったのでしょう。ところが、気づいたら、グローバルで見ると日本は競争力を失ってしまったということなのだと思います。アメリカでは、トラックドライバーに対して1000万円近い年収を用意する企業もあります。日本のドライバーに対しても、2倍とは言いませんが、収入を1.8倍くらいに上げていかないと、グローバルで見れば稼げる国にならず、そうなると海外からドライバーになろうと日本に来る人は少ないでしょう。逆に言うと、旅行するには良い国です。インバウンド需要が増えたからといって、本当は喜んでいる場合ではないのです。

河合:一昔前に、安いからと、私たちがアジア各国に行っていたのと同じ感覚ですね。このお得な状態が続くと、土地など価値ある資産がいろいろと外資に買われてしまいそうで怖いです。海外に行ったら、給料が高い代わりに物価も高いのだから、日本は給料が安くても物価も安いからいい、ということではないと思います。
労働力不足、人口減少は本当に喫緊の課題だといえますが、こうした問題解決に向けて、現在、どのような取り組みをされているのですか。

秋葉:フィジカルインターネット、見える化、標準化など、さまざまな解決策が検討されていますが、これからは個別最適ではなく全体最適を考える必要があります。フィジカルインターネットの概念もそうですが、皆でいろいろなものをシェアリングして、無駄を省くことが求められているからです。それはSDGsの観点からもいえることです。
東京、名古屋、大阪のようにある程度人口密度が高いところは、おそらく個別最適でもビジネスは成り立つでしょう。しかし地方にいくと、それではビジネスが成り立たないから一緒にやらざるを得ないし、一緒にやっていかないと、そこで生活している方たちが困る事態になってしまいます。こうした課題について、RRI(ロボット革命・産業IoT イニシアティブ評議会)でも、テクニカルコミッティを立ち上げさせてもらっていろいろと活動しています。
大和ハウスグループも、ピアツーピアではなくネットワークとして提供していくべきだと考えています。物流施設の提供においても、1棟1棟の物件を考えるのではなく、「物流ネットワークを構築するので、このインフラ上に乗りませんか」という提供の仕方に変えていきたいと考えています。それをするためには、荷主の協力が必要です。長期的な計画なしに、「この辺のエリアに何千坪の床はありませんか」というような物流戦略は、お互いにやめたほうがいいと思っています。
さまざまな建物を建てている大和ハウス工業が持っているノウハウがあります。これからはさらにデータが重要です。データが蓄積できれば、どこから入ってきてどこに出しているかのつなぎ合わせが面になり、ネットワークになっていきます。今後、エネルギー消費量やCO2排出量など、お客様もデータを取らなければならなくなるでしょう。そういったサービスを全部入れることで、お客様にもメリットがあり、大和ハウス工業もデータの蓄積ができる。そのような仕組みを作りたいと思っています。

河合:ますます大きなビジネスになりますね。

課題の解決にはデジタルを活用した見える化が必須

秋葉:CIO研究会(日本小売業協会内の研究会)で、先生が提言を出されたときは格好良かったです。

河合:ありがとうございます。小売業の市場規模を考えると、日本経済における立場は非常に重要で、ここで生産性を上げないと日本が沈没してしまいます。小売業界は、すべてのサプライチェーンの出口を担っているという、社会的な責任を意識するべきです。いろいろな課題がありますが、皆がバラバラに行うのではなく、横串を刺し、社会にとって好ましいことが決まったらそれを後押しするような組織が必要ですし、人材育成も必要です。
システム開発ベンダーも、顧客の望むままにスクラッチ開発を続けてきた数十年でした。それではだめなのです。売るプロと作るプロが一緒に高め合えるような、そして機構そのものを世界に輸出できるような、サプライチェーンの価値を創造する仕組みを作らなければなりません。提言にはそのようなことを書きました。

秋葉:危機意識が高まっているのかもしれませんね。反響はありましたか。

河合:小売業だけでなく、卸売業の方からも反響があります。今まではメーカーの物流部門の方が困っていることが多かったのですが、サプライチェーンの川下側からの関心が高まっていることを肌で感じるようになりました。最も川下側である小売企業からも、情報がつながらず可視化されていないことに困っていて、どうすればいいか一緒に考えたいと直接連絡をいただくこともあります。
全員が興味を持ってくれなくてもいいので、やろうという方だけでまずはやってみて、「ほら、いいでしょ?」と示すことができれば、皆がついてきてくれるのではないかと思っています。
具体的な数字やシミュレーションデータが見えないことには何も対策は打てませんし、見えない敵とは戦えませんから、「見える化」が第一歩目です。見える化するためにはデジタルの力が絶対に必要です。見えて、シミュレーションできて、効果がわかれば、皆がそちらにいきたいと思うはずです。今は何も見えていません。見えているのは、店頭価格だけで、これはリベートや販促の費用など、見えない要因で割引きされた金額です。今でも、1個売れたらいくらもうかるのかという正味利益は見えないですし、ルートの在庫がどこにどれだけあって、賞味期限がどれだけ残っているのかすら見えていないことも多いです。それでは戦えませんよね。人体と同じで、病気があることがわからないと治せません。そういう意味でデジタルは絶対に必要です。

秋葉:見える化は大事ですね。Hacobuの佐々木社長も、まず見せることが重要だとおっしゃっていました。Hacobuのサービスの一つにバース予約がありますが、その効果は非常に大きなものでした。物流は事実なので、荷主の許可の問題も含めて、事実だからこそデータを見せたくない方たちがいます。バースの予約は、荷物の話ではなく、「車が何時に来て、何時にどこに行く」という話ですから、比較的導入がしやすかった。ピアツーピアではなく「どこから出てどこに行くか」の集合体になるわけです。例えば、「Aさんの家からBさんの家に行っている」「Cさんの家からもBさんの家に行っている」ということがデータ化されることで、「Aさんの家とCさんの家が近ければ、わざわざ別の車で行く必要はない」という至極当たり前のことがパッと見えます。隠す必要がないデータを集めるだけでも、はっきりしたことがたくさんありました。
リベートや販促費についても、昔から物流やサプライチェーンに携わっている方は問題視してきました。本当の原価、コストがわからないからです。それを得るために膨大な在庫を積んだり、積んだ在庫が消化できないケースもあります。そのときの保管料は誰の責任で負担しているのでしょうか。そこをきちんと見ることは、SDGsの課題ともつながります。物流コストだけの話ではないのです。無駄にものを動かせば、それだけエネルギーを消費しCO2を排出します。

河合:学生からしてみたら、なぜそんなことをやっているのだろうと思うでしょうね。きっと大人の世界でも、無駄なこと、もったいないことは嫌だと思うはずです。見えていないからやらないだけで、見えたら「そんなにもったいないことしているの?」という話になると思います。だから、まずは見せたいですね。

秋葉:本当にそう思います。私たちの仕事は、まだまだ山積しています。

河合:秋葉さんがほかに取り組まれていることはありますか。

秋葉:経済産業省資源エネルギー庁の公募事業ですが、大和ハウス工業が主管として、花王、日立物流、イオングローバルSCM、豊田自動織機の協力のもと、共同実証事業を進めています。これは、令和3年度「AI・IoT等を活用した更なる輸送効率化推進事業」において採択されたもので、荷役効率化・物流効率化・省エネ化を目指して、取り組んでいます。 「■物流施設におけるトラックの積卸し自動化と待機時間削減へ
AIを搭載した自動運転フォークリフトを活用し、トラック運行と連携させる共同実証事業を開始 」

あとは、『ミライへつなぐロジスティクス~ミナミと学ぶ持続可能な世界』(みらいパブリッシング)という本を出しました。

河合:それは楽しみです。私は3年前にハンバーガーチェーン店のビデオを作りました。シャキシャキレタスや美味しいタマネギのみじん切りはどこから来るのかを学生に取材させて、サプライチェーンを遡りながら旅をする、30分くらいの動画です。私の授業をとっている学生に見せるために作ったのですが、意外にも協力してくださった企業さんがとても喜んでくださって、自社の新人研修にも使ってくださっているそうです。

秋葉:会社の中でも知らないことがあったのでしょうね。本にも少し書きましたが、そもそも私たちの仕事を家族に説明しづらいですから、ビジネス書のようなものではなく、違うテイストを試みました。主人公は女子大生で、その父親が元運送会社のドライバーで、2020年新型コロナウイルス感染症の影響でトイレットペーパーが買えなかったところからスタートします。

河合:問題は次々現場で起きますので、シリーズ化したら面白いですね。

秋葉:2021年7月には、大和ハウス工業の建築事業本部の中に、物流DX推進室という組織を立ち上げました。物流DX推進室は、企画部隊です。実行部隊にはフレームワークスのようなグループ会社があります。メンバーには様々な人がいて、活躍してもらっています。外部の方々とのいろいろな会議に出るのですが、「遠慮なくしゃべっていい。誰もだめとは言わないし、それで議論ができたら楽しいのだから言いたいことを言っていい」と伝えています。

河合:それは素晴らしいことですね。物流DX推進室はどのような役割を担っているのですか。

秋葉:デジタルに関するプロジェクトをマネジメントしていくのも、物流DX推進室の役割です。例えば、大和ハウスプロパティマネジメントという物流施設の管理会社があります。物流施設の管理会社としてどのようなサービスを荷主に提供することができたら価値なのかを考え、それをするためにはこのような予算を取ってこうしましょう、といった企画もします。
DXというとシステムを作ったり、ロボットやセンサーを活用したりするような話にとられがちですが、もう少し幅を広げて人材育成や産学連携等を含めてやっていきたいと思っています。
また、物流の外側にあるような技術を持ったベンチャーに投資をするなど、いろいろなことに取り組みたいと思っています。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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