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コラム No.27-9

サプライチェーン

秋葉淳一の「CREはサプライチェーンだ!」 Vol.2 「グローバルサプライチェーン」で食を支える日本水産

公開日:2016/12/22

日本水産とは

 弊社の重要な顧客の1社である日本水産(ニッスイ)は、1911年に田村汽船漁業部として下関に創業したとされ、既に100年を超える歴史がある。
世の中ではあまり知られていないが、1942年には水産統制令により、冷蔵および販売部門を分離・譲渡して帝国水産統制株式会社(現在の株式会社ニチレイ)が設立されている。言い換えれば、海を日本水産とし、陸をニチレイとしたのである。
売上高は、単体で3,576億円、連結で6,371億円、水産業界においては、マルハニチロに続く第2位であり、事業別にみると水産事業:2,696.6億円、食品事業:3,054.4億円、ファイン事業:256.8億円、物流事業:151.8億円、その他事業:212.2億円となっている。(2016年12月現在)
創業の理念を「水の水道におけるは、水産物の生産配給における理想である。海洋資源は世界到る処でこれを求め、できるだけ新鮮な状態で貯え世界各市場にいわば水道の鉄管を引き、需要に応じて市価の調節を図りつつこれを配給する。水産物も配給上の無駄を排しできるだけ安価に配給を図り、その間一切不当な利益を要求すべきではない。」とし、地球から、海から、おいしさと楽しさ、健康と美をお届けするメーカーを目指している。
(日本水産株式会社ホームページより)
この創業理念に則り、我々消費者のもとに価値のある水産物を届ける為の企業戦略とそれを支えるサプライチェーン戦略について紹介する。

ある打合せでのでき事

「秋葉さん、世界で食される魚の約7割は養殖なんだよ」とCFOとCIOである専務から伺った時の私の表情は、相当に間抜けなものだっただろう。恐らく、社内で見せたことがないくらいに。
経営者としてもコンサルタントとしても数字は常に意識していることなのに、お客様の事業に関る数字に疎かった自分が情けなかった。一方で、一消費者として考えると、「世の中の人は『約7割』という数字を感覚としても知っているのだろうか」などの思いが頭に浮かんだ。
実は、ニッスイが強みを発揮するための活動のヒントがここにある。ニッスイを紹介する上で重要なポイントなので、上記のお話を伺った際の会話の抜粋をまず紹介したい。
この日の打合せは、私が社長を務めさせていただいている2社、フレームワークスと兄弟会社であるモノプラスが、ニッスイの各事業領域に対して、どのような業務機能でお役に立てそうかをディスカッションする場であった。この時点において、フレームワークスは冷蔵倉庫システムの導入と運用、モノプラスは水産事業の営業支援(台帳管理)システムのサービス提供をしており、これらシステムの展開や提供方法のブラッシュアップの意見交換の場であった。
会話は、私がインドネシアのジャカルタへ出張した際に、食あたりになり2週間くらい苦しんだという雑談から始まった。あくまでも私の想像だという前置きの上、ジャカルタ最終日の夜に和食居酒屋で食べたサーモンの刺身が怪しいと思っていると話をしたところ、「サーモンは元々ムシのつきやすい魚であり、養殖だから平気で生食できる。他にも養殖だから安全に生食できている魚はたくさんあるよ」と言われた。続いたのが、前述した「秋葉さん、世界で食される魚の約7割は養殖なんだよ」である。
また、「養殖の事業には更に投資・注力をされるのですか?」という私の質問に対しては、「養殖は事業ではなく、なくてはならないことであり、それなくして他の事業は成り立たない」とも語っていただいた。

水産資源(魚)を消費者に鮮度を保って届けること、原材料(魚)を加工して消費者に届けることがニッスイの事業であれば、サプライチェーンの最上流に位置づけられる魚を捕ることと、魚を養殖することは、全ての事業の始まりであり、ニッスイ事業の源流なのだ。創業理念に書かれていることを100年以上も徹底されているのである。

「グローバルリンクス」と「ローカルリンクス」

ニッスイでは、すでに1970年代から水産資源の確保とそのサプライチェーンの構築に注力し始め、北米からはじまり、中米、オセアニア、ヨーロッパへとその連携を広げていった。これが「グローバルリンクス」の始まりである。その後、それぞれの地域での機能強化を行うことで「ローカルリンクス」が構築されていった。この「グローバルリンクス」と「ローカルリンクス」に支えられて、ニッスイのグルーバルサプライチェーンが成り立っている。

いわゆる工業製品のサプライチェーンと大きく違うのは、“鮮度”を維持する為の機能を常に意識する必要があることだ。温度帯の管理はもちろんのこと、加工の場所やタイミング、衛生面の管理など、単に点と点を結びつけたチェーンでは水産資源のサプライチェーンを構築することはできない。
ニッスイは、これらを解決するために時間をかけながら、グローバルで子会社化や持分法適用会社化などの方法を組合せて、機能の網羅性を担保し、点を線に、線を面にとグローバルサプライチェーンを構築したのである。これが「グローバルリンクス」だ。
そして、グローバルサプライチェーンを更に強化する上で重要なのが、エリア内でのサプライチェーンと機能の強化、つまり「ローカルリンクス」の強化である。
現在「ローカルリンクス」は、日本、北米、南米、アジア&オセアニア、ヨーロッパという単位で構築されており、「日本」というエリアの「ローカルリンクス」のロジスティクス機能は、日水物流の保有する冷蔵倉庫を中心に構築、強化されている。

日本エリアのローカルリンクス「日水物流」

日水物流は、2007年に日本水産の冷蔵倉庫部門と東部冷蔵食品、西部冷蔵食品の2社が統合されてできた会社であり、日本水産(ニッスイ)の100%子会社である。
低温一貫サービスを事業の柱にしており、全国16箇所に冷蔵倉庫を保有している。16カ所目の物流センターは、2016年4月に約70億円を投資し、大阪市此花区で「大阪舞洲(まいしま)物流センター」として稼働させた。延床面積19,130m2、25,400トンの保管能力を持つ近代的な冷蔵倉庫であり、地震対策やフードディフェンス(食品防御)対策も講じられている。

この大阪舞洲物流センターの稼働が、日本エリアの「ローカルリンクス」の再構築の象徴になると思っている。
「魚は日本各地の港から水揚げされてくる」という単純なサプライチェーンではなく、日本の「ローカルリンクス」の中で、養殖、水揚げされるものもあれば、「グローバルリンクス」を通じて、様々な状態で日本の「ローカルリンクス」に運ばれてくる場合もある。また、災害対策やフードディフェンの対策も実施する必要がある。
さらに、日本の多くの冷蔵倉庫は老朽化している。常温倉庫と違い、単純な立て替えではすまないが、この大阪舞洲物流センターのような冷蔵倉庫が今後は建設されるだろう。

「ローカルリンクス」の課題と今後

日水物流をロジスティクスの観点で、取り上げてみたが、「ローカルリンクス」で求められる機能は、ロジスティクスだけではない。養殖や最終商品化への加工機能も整ってはじめて「ローカルリンクス」としての機能を発揮する。
これらを整備し、さらに効率を上げる為には、企業単位ではなく、機能単位での整理と投資が必要だろう。水産資源の確保以上に労働人口の確保が難しく、急務である現在においては、最新鋭の設備とIT(人工知能含む)を駆使した、「ローカルリンクス」が必須となる。これらを実現することで、日本発の「ローカルリンクス」が他のエリアにも展開されて「グローバルリンクス」が強化される。
ニッスイの中期経営計画に記載されている水産事業の強化ポイントは、養殖事業の深化、養殖鮭鱒の拡大、短期養殖の事業化の3つである。専務が言われた「世界で食される魚の約7割は養殖」、「養殖は事業ではなく、なくてはならないことであり、それなくして他の事業は成り立たない」に向けた活動が強化ポイントになっているのだ。
グローバルサプライチェーンの強化と水産資源・原材料の確保策強化に向けた活動が、創業の理念「水の水道におけるは、水産物の生産配給における理想である」を追い求めることであり、ニッスイが強みを発揮して、我々消費者にとってなくてはならない企業であり続けると確信する。

トークセッション ゲスト:株式会社ABEJA 代表取締役社長CEO 岡田陽介

トークセッション ゲスト:株式会社ローランド・ベルガー プリンシパル 小野塚 征志

トークセッション ゲスト:株式会社アッカ・インターナショナル代表取締役社長 加藤 大和

スペシャルトーク ゲスト:株式会社ママスクエア代表取締役 藤代 聡

スペシャルトーク ゲスト:株式会社エアークローゼット代表取締役社長兼CEO 天沼 聰

秋葉淳一のロジスティックコラム

トークセッション:「お客様のビジネスを成功させるロジスティクスプラットフォーム」
ゲスト:株式会社アッカ・インターナショナル代表取締役社長 加藤 大和

トークセッション:「物流イノベーション、今がそのとき」
ゲスト:株式会社Hacobu 代表取締役 佐々木 太郎氏

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「物流は経営だ」シリーズ

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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