土地活用ラボ for Biz

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コラム No.27-57

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第1回 データが物流DXを促進し、イノベーションを起こす株式会社フレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 株式会社Hacobu 代表取締役CEO 佐々木太郎

公開日:2021/01/29

会社を変える物流DXの真価

秋葉:佐々木社長とは2017年にも対談させていただき、あれから3年が経ちました。時間が経っているようで経っていないような気もしますが、この間、大きな変化がありましたね。

佐々木:2017年当時はアメリカから帰ってきたばかりで、荷主と配送のマッチングが、物流事業のIT化、デジタル化の本質ではないということに気づいた頃だったと思います。アメリカでも、けっきょくは人がやっているということがわかりましたし、ウーバー・フォー・トラックという言葉もありましたが、あれは幻想だったわけです。ここで進む道がはっきりと変わりました。ダイワロジテックと業務提携を結んだのもその頃です。Hacobuの仕組みは、使われているお客様とそれによって関わる方々が多いので、仕組みとしては導入いただくことはできますが、全体の業務としては単体では成立しません。ダイワロジテックをはじめ、いろいろな企業と連携することで、ようやく全体として価値が生み出せるようになってきたのだと思います。

秋葉:単体では成立しなくとも、Hacobuの仕組みを入れることで、デジタル化が進み、事業のプロセスを変える、会社を変える、といったきっかけになったところは多いのではないですか。

佐々木:最近はDXのきっかけにもしていただいています。物流業界でも「物流DX」と言われ始めていますが、基幹システムやWMS(Warehouse Management System)が古い場合、そこに手を入れるのは非常に大変な作業になります。Hacobuの入荷予約やバース予約の仕組みを導入いただくことで、デジタルデータが蓄積され、かつ、そこから得られるデータを使ってイノベーションにつなげることも可能です。そういったところから、良いDXの入口として捉えていただけているようです。

秋葉:WMSにしても、WCS(Warehouse Control System)にしても、要件を整理することから始めなければなりません。一方、バースの話は非常にわかりやすく、なおかつ、Hacobuが提供している仕組みを入れたらすぐにできますし、導入した後の効果もすぐに出ます。きっかけを作るという意味ですごく良いのでしょうね。

佐々木:それに加えて、「ホワイト物流」という国の政策も大きなインパクトがありました。国の政策はインパクトがないとネガティブなことを言う人もいますが、私は、国が動くと大きな方向性が作られると考えています。Hacobuは「ホワイト物流」推進運動に賛同して、持続可能な物流の実現に向けて、2019年7月に「自主行動宣言」を提出しました。「ホワイト物流宣言」は賛同する会社が申請するだけで、申請しないからといって罰則があるわけではありません。しかし、出していないとまずいという空気感が作られたのも事実でしょう。それに、国土交通省からあれだけアナウンスしていただいたことで、今のままではいけないという雰囲気が生まれたのだと思います。そういう意味で国の政策には意味がありますし、Hacobuの仕組みが評価を得たのも、そうした国の動きに後押しされたようなところがあります。

秋葉:実際にバースの仕組みを導入した会社で、お客様の変化を感じることはありますか。

佐々木:まず、勘と経験で行われていた業務のデータが見られるようになるわけです。倉庫の作業には、入荷・保管・出荷と、大きく分けて三つがあります。Hacobuは入荷するところのツールですが、そこがデータとして見えるようになるだけでもさまざまな発見があります。それがDXのインパクトなのだと思います。お客様からも「やっぱりデータが見えると違うね」というお声をいただいています。
例えば、大手流通様の事例ですが、導入している全拠点のデータを分析してお見せしたところ大変驚いていらっしゃいました。これは自分たちの倉庫内オペレーションの生産性という課題にとどまりません。どのようにものが入ってくるのかを見ることで、自分たちのサプライチェーンのネットワークがどうなっているのか、初めてデータとして見えてくるのです。データというファクトを見ることで、そこからさまざまな発見があり、本当の議論が始まります。これまでは、「あそこは積載が満載で来ることが多いですよね」というような、どちらかというと定性的な話が多かったのですが、実際にデータを見てみると、「ビールメーカーは満載なのに、それ以外の飲料メーカーは積載率50%~60%で来ていますね」といったことが、具体的な事実を元に話せるようになります。そこからようやく建設的な議論ができるのです。これがまさにDXのポイントです。

秋葉:事実からスタートするということですね。データは事実なので、主観も入りませんし、人の意見の否定でも何でもありません。これまで、そういうデータを見たことがない人にとっては衝撃的なことですね。

佐々木:定性の議論だけだと主義やイデオロギーの戦いになってしまいます。ところがファクトデータがあると、そこには主観や主義の余地がありません。まずは議論の土台ができるという点で、データは非常にパワフルです。さらに、それを蓄積することができるデジタルツールは大きなインパクトがあります。これまではツールを導入するだけのケースが多かったのですが、ようやくこの1年で実際のデータを分析して紹介するところまできました。そこまでいくと、目から鱗が落ちるようにDXの価値を感じていただけると思います。

コネクテッド・トラックがIoTデバイスとなる時代

佐々木:別のアプローチとして、日野自動車さんとの取り組みがあります。これは、2019年9月4日にリリースを出させていただいたのですが、「ドライバー不足等の社会要因によって、このままでは重要な社会インフラである物流が立ち行かなくなるのではないか」という危機意識と、「重要な社会課題である物流危機の解決を目指して、オープンな物流情報プラットフォームの展開とソリューションの具体化を推進したい」という志が一致し、日野自動車さんとの資本業務提携契約の締結に至りました。この連携によって、Hacobuは、コネクテッド・トラックというIoT活用による「Sharing Logistics Platform」の実現加速を目指しています。「Sharing Logistics Platform」とは、IoTとクラウドを統合したオープンな物流情報プラットフォームであり、会社・業種の枠を超えてビッグデータが蓄積・利活用されることで、社会最適を実現することを目指すというコンセプトです。
Hacobuの提供するバース予約のシステムは結節点の情報になりますが、運んでくる車の情報について、日野自動車さんとの連携が生まれました。私が昔から思っていたことなのですが、トラックがコネクテッド化されていくと、そこから情報を取ることができるので、GPSデバイスやデジタコといったツールを後から付ける必要がありません。トラックメーカーが出している情報に対してAPIでつなぐことで情報を使えるかたちにすれば、車載コストが一気に下がり、テレマティクス(Telematics:Telecommunication、Informaticsを組み合わせた造語)の普及も進むでしょう。コネクテッド・トラックが進んでいくと、いろいろな情報がトラックから取れるようになります。システムやツールに依存することなく、APIによる処理で自分たちの車両情報を取れる時代がやってくるのです。

秋葉:私の周りでも、中継物流を事業化するために実証実験を進めている企業があります。また、隊列走行の実証実験は豊田通商さんがメイン実施されています。自動車メーカーやトラックメーカー、さらに周りも含めた自動車産業系の人たちが、車をどう作るかだけではなく、「情報をどうやって集めるか」「情報をどうやって使うか」へと、考え方が少しずつ変わりつつあると感じています。

佐々木:ハコブの注力領域はいくつかあるのですが、自動車のサプライチェーンも注力領域の一つとなっています。今、自動車産業の中で、「サプライチェーンの中のロジスティクスをきちんとデジタル化していく」という大きな潮流があるように思います。各社が取り組むのはほとんど調達物流で、そこをどうしていくかですね。

秋葉:製品になるとそれぞれの販路などがありますからね。部品は、ティア1、テイア2とだんだん下がっていくと、実は共用の会社だったりすることがあります。そこのデジタル化には二つの入口があると思います。車をつくる人たちがどうやって情報を取るかという仕組みづくりがある一方で、周辺で車づくりに関わる人たちが、「コネクテッド○○」のようなかたちで最初から用意していくのです。この後者の仕組みが進むと、また一気に加速していくのではないでしょうか。

佐々木:加速するでしょうね。加速の要因として、トラック自体についての問題もあるし、ユーザーの方々の意識の違いもあります。それに、この産業に新しく入ってくるデジタルプレイヤーもだいぶ増えてきています。この5年で少し景色が違ってきました。それぞれ競争関係にはありますが、そのような人たちが入ってくることで、新しい血によって、それまでのものが変わっていく局面を迎えていると感じます。
今日の午前中、ある会社さんでDXの相談をさせていただいたとき、「過去のロジスティクスはいろいろなところに虐げられてきて、悲しみの歴史だった。その歴史がDXによって大きく変わる」というお話を聞きました。過去数十年の悲しみの歴史によって、DXというきっかけをもってしても立ち上がれないほど打ちのめされてしまった人たちと、DXによってもう一回立ち上がろうとしている人たち、この二つに分かれるような気がします。後者の人方々は、われわれのような新参者が「こんなことができるようになりますよ」という話をすると、すごく元気になってくれます。前者の方々は、「とは言ってもね、過去にこういうことがあって…」と、いろいろなトラウマがあるようです。われわれのような新しいプレイヤーが入っていくことによって、元気になり、勇気を持っていただける方々がいらっしゃるということは、業界にとって良いことだと思っています。

秋葉:前回お話しいただいた3年前に比べて、Hacobuはツールに留まらず、物流のITソリューションすべてのコンサルティングをされていて、事業のステージが広がっています。

佐々木:ツールを導入してもらうのはあくまでも手段であって、目的はどうやったら「運ぶを最適化」できるかというところです。ツールを導入してもらうと、個社だけではない、サプライチェーンに関わるステークホルダーのデータが蓄積されます。それを掛け合わせることで、全体の「運ぶを最適化」できるはずだという信念の元にこれまでやってきました。ただ、当初の想像と少し違ったのは、データがあれば皆さん最適化できるわけではなく、データをどうやって使うかが大事だということです。当初はそうした課題が出てくるとは思っていませんでした。
事業を続けてきて、データはたしかに蓄積されてきました。当初は、ユーザーの皆さんがそれをうまく使うと思っていたのですが、そうはなりませんでした。われわれのほうから能動的にデータ分析をする。かつ、会社同士を引き合わせる必要があれば、われわれのほうで動く。そういったことをやらないと、全体の「運ぶを最適化」できないことがわかりました。ですから、そうしたサービスの提供分野でやることは増えたかもしれません。

秋葉:そこは私たち大和ハウスグループも仕事をしなければいけないところでもありますが、「運ぶを最適化」することにおいてはHacobuがやるほうが、効果的でしょうね。お客様にしてみれば、実際にサービスを使ってデータを集めている会社の人たちがそれを説明してくれるわけです。「運ぶを最適」にすることを目指している会社が、いろいろな会社の情報を見た上でやってくれることなので、すごく強いですよね。私たちが「倉庫内の話は私らに任せてくれ」と言っているのと同じ話で、「運ぶ」というところに対しては、Hacobuがやるのがベストなのではないでしょうか。
先ほど佐々木さんが、「これをきっかけにという思いの人たちと、トラウマになってしまって踏み出せない人たちがいる」とおっしゃっていましたが、「このタイミングで」と思っている経営者の方々は非常に熱いですよね。このタイミングを逃してはいけないと思っているので、世の中の時間軸や自分自身のキャリアとしての時間軸も含めて、ものすごく意識されていると感じます。世の中を物流やロジスティクスの目線で見ると、大きなうねりが来ています。
大和ハウスグループとして、そのうねりを機敏にとらえ、業界全体を先導していく必要があります。このタイミングをのがさず、しっかりとグループ内の意識を変えていくことも、私の仕事だと思っています。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス代表取締役社長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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