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コラム No.27-116

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 第3回 人とテクノロジーで描くロボティクスの未来株式会社パル 取締役 専務執行役員 堀田 覚 × 株式会社フレームワークス 会長 秋葉淳一

公開日:2025/12/16

モチベーションを力に変えるマネジメント

秋葉:ブランド立ち上げの話にもありましたが、企画した人が一生懸命考えて「こうやりたい」と言うのであれば、やってもらったほうがいいですよね。

堀田:そう思います。ただしリスクは排除してあげないといけません。本人が無駄にダメージを負わないようにするのがわれわれの仕事です。プランを変えたり、周りの理解を促したりすることも大事になります。基本的には、好きな仕事、得意な仕事をやってもらいたい。なぜなら、やはり本人のモチベーションが能力を引っ張ると思うからです。そうではないことをやらせても、良い結果にはつながりません。

秋葉:それは皆が経験していると思います。人に言われて勉強しても全然面白くないですよね。

堀田:社会人なのだから、自分で課題感を持って自ら学ぶ。結局はそういうことなのだと思います。人をマネジメントするときのポイントは、能力を上げるかモチベーションを上げるかのどちらかしかなくて、その掛け算がパフォーマンスです。能力を上げることも大事ですが、前提にあるのはモチベーションだと思います。これが枯れていたら何にもならないし、どれほど良い能力があっても悪用する人もいます。だから、モチベーションのコントロールができない会社は厳しい。自分の会社、組織がそうならないように、極力目を配っておかないといけません。

秋葉:モチベーションを上げる要素としては、例えばお店を任されている店長であれば、売り上げという数字があるので分かりやすいですよね。マーケティングの人たちも投資効果を測る手段を用意しています。物流の場合、何をモチベーションにできると思いますか。

堀田:物流だと、直に売り上げにヒットするのは難しいところがあります。むしろ「安定して回さなければいけない」という要素が強いので、数値だけでは測れません。ただ、新しいことへのチャレンジはすごく面白いと思いますね。新しいことにチャレンジして、それが事業の成果を下支えしているという感覚が一番大事なのではないでしょうか。もちろん評価されて報酬が上がることもセットで考えなければいけませんが、日々の業務の中でモチベーションになるのはそこだと思います。物流でも何においても、自分の成長実感が大切です。ルーティーンだけで仕事をしていると成長実感やチャレンジという感覚を持ちづらくなってしまうので、改善意欲や成長意欲を持てる状態にあるかどうかが非常に重要だと思います。

秋葉:とても良い話です。現場で日々作業する人たち、そしてそこでマネジメントをする人たちが大勢いて、つねに何かにチャレンジし、新しいことに接していることが大切ですね。

堀田:物流に限らず、彼らを見ている上位者の創意工夫が必要です。どうしたらこの人は火がつくのだろうか。それは一人ひとり違うし、業務によっても違うので一概には言えませんが、そこの仕掛けや仕組みをうまくつくっていくことが大事です。

秋葉:これはシステム屋にも共通する話ですね。システムはまともに動いて当たり前で、トラブったら大騒ぎされます。物流も同じです。そういった中でどうやってモチベーションを維持するか。新しい事へのチャレンジもありますが、さまざまな個性の人がいるので、新しいことを楽しいと思う人もいれば、一方でそれがストレスになる人もいます。

堀田:そうですね。ただやりたいという人もいて、その特性も大事です。皆が一斉に攻めたら守りが薄くなってしまう。そこはバランスの最適化だと思います。多様性という言葉がありますが、人は一様ではありません。そこはやはり意識しています。私は攻めるタイプですが、私みたいな人だけでもおかしくなってしまう。だから、見てくれたりする人や、私に「違う」と言ったり、表現してくれたりする人がいて全然構わないし、むしろ健全だと思っています。

パルの新センター「PAL CLOSET Robotics Solution Center」

秋葉:新センターへのExotec 社のSkypod(自律走行型のロボットピッキングシステム)導入はどのように決めたのですか。

堀田:2024年に厚木の旧センターからPAL CLOSET Robotics Solution Centerに移転したのですが、それまで売上拡大に合わせて拡張を騙し騙しやってきました。何が最適かを含め見えていないことが多かったので、「分からないことをいち早くやるより、とりあえずまだ人で回していくのがいいのではないか」という前提がありました。

ところがコロナ禍中に事業が一気に伸び、このままでは来年、再来年には確実に厳しくなるという待ったなしの状況に陥りました。それで、根本的にやり方を変えないといけなくなったのです。最初はSkypodいう結論には結びついてはいなかったのですが、ロボットというソリューションは考えていました。2024年問題も控えていたので、人手不足を解消するためにはロボットの導入、機械化を進めないとまずいというタイミングでもありました。そこから選定したのがSkypodであり、「Skypodを入れたい」が先ではなかったですね。

秋葉:選定の際にはアッカ・インターナショナルさんから複数の提案があったと思いますが、パフォーマンス、床効率、費用を考えたうえでのSkypodだったわけですね。

堀田:アッカさんとは2014年から一緒にビジネスをしてきて、当社の物流課題をよく理解していただいていました。そのうえで最適解として提案してもらったのがSkypodです。それまでは私が物流を見ているような状況だったのですが、前年に当社に1人適切な人材が入り、うまく主導してもらえたことで導入することができました。

秋葉:パルさんから入ってもらって、だいぶ動かしていただいたようですね。本来であればアッカ側がもう少しマネジメント比率を上げても良かったと思いますが、そこが「ちょうどいい」バランスだったのかもしれませんね。

堀田:「ちょうどいい」という感覚は会社のDNAとしてあるのかもしれませんね。

秋葉:導入にあたり、アッカさんにはどのようなオーダーをされたのですか。

堀田:Skypod導入のときは、すでに課題が明確になっていました。人が足りず、ピーク時に詰まってしまって出荷できないことも頻発していました。作業効率の悪さを改善しないと立ち行かない、さらに無駄なコストがかかってしまうことが見えていました。

秋葉:ワンフロアになったのも大きかったようですね。

堀田:大きいですね。以前は多層階で3フロアに分かれていて、かなり効率が悪くなっていました。ただ、もともとは3フロアも使っておらず、1フロアでやれていたのです。10億円規模だったのが、変えるタイミングがないまま200億円になり、いろいろな機能不全が起きてきました。2022~2023年のコロナ禍明け頃から急成長し、さらに別棟にも拡張して、「これはまずいぞ」と。それで一回立ち止まって、時期を決め打ちして、やると決断しました。

秋葉:「やれるときに」と言っていたら、結局いつやれるのか分かりません。

堀田:アッカさんには場所の提案もしていただいて、新センターは旧倉庫から1キロほどしか離れていません。これが人の雇用という点でもちょうどよかったです。折角の人材もいらっしゃいましたし、同じレベルの人を一から採用するのはとても大変ですから。

秋葉:設備や建物の構造も、ロボティクス導入には大きかったと思います。

堀田:ロボットを入れるためには高さが必要ですが、今までは低層で重量のあるロボが入れられませんでした。DPL平塚は高さがあるのでロボットを入れられますし、充填率も上がりました。

秋葉:ロボティクスの導入によって、数値として可視化できたことも良かったことでしょうか。

堀田:相当良かったですね。導入していなければ危なかったと思います。結果に満足していますし、第2弾として拡張も検討しています。今はよりロボティクス化したいというフェーズですが、ハードルも多いので、これから乗り越えたいですね。ロボットのほうが、圧倒的に生産性が上がることは明らかです。一方で、ロボットでは対応できないややこしいこともあります。ロボで最適化させることが、必ずしも最適化にならないようなこともあります。

協働で広げるロボティクスの可能性

秋葉:アッカさんではDPL平塚を、アパレル雑貨を扱う物流センターのモデルのひとつとして位置づけているようです。堀田さんがおっしゃるように、ロボティクス化できずに人がやらざるを得ない仕事はたくさんあります。

明日できる、1カ月後できるという技術だけを取り入れていては、5年経っても自動化できないプロセスがどうしても残ってしまいます。アンテナを張って、入ってきた情報に対して、「これってこういう活用方法があり得るよね」と考えて議論することがすごく大事ですね。

堀田:そうですね。私もテクノロジー関係でスタートアップの会社とたくさんの仕事をしてきました。大企業は、安心じゃない、実績がないとあまり一緒にやりません。だけどスタートアップだからこそ小回りがきいて、アジャイルに物事を考えて、柔軟に状況に合わせていくことができます。もちろん会社の力量を見極める必要はありますが、能力と技術があって、あとは経験とやっていくフィールドが足りないだけなら、面白いことができると実感しています。そこでできたソフトウェアがその後いわゆるSaaS的に幅広く他社に導入されたこともありました。そのプロダクトは汎用的であっても、私たちの現場を見てつくっているので、自分たちが一番使いやすい。そこでの成功体験は開発側も繋いでいきたいので、汎用的なシステムでありながら、われわれの要望を優先的に組み入れてくれる。そうやってお互いWin-Winの関係が築けます。

秋葉:新しいこと、今までやれていないことに関わる人をつくっていくことが、私らの仕事だと思っています。

堀田:SkypodをつくっているExotecはフランスの会社ですが、日本はこの分野で勝てると思いますか。

秋葉:勝ちたいですね。だからこそそこにお金を使っているのです。ロボットの制御は難しいですが、人工知能は驚異的なスピードで賢くなっています。それをどう繋ぐか。そのためにはデータをどう取り込むかが大きなカギになってきています。

過去のトークセッション

土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス会長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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